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4月の巻

16 宮本輝    朝の歓び・講談社文庫(下) ※

17 宮本輝    朝の歓び・講談社文庫(上) ※

18 宮本輝    焚火の終わり(上)・文春文庫
19 宮本輝    焚火の終わり(下)・文春文庫

20 吉田篤弘   針が飛ぶ・新潮社 ※
21 三浦しをん  君はポラリス・新潮文庫 ※

※印は、読み返した本です。

相変わらず、宮本輝を貪るように読んでいます。
一昨日は友人と飲んだあと、そういえば宮本輝作品を読み終ってたなと次の宮本輝作品を探しに行きましたが、大きな書店にも関わらず品揃えが少なく、心の中で小さく舌打ち。
映像化されてる本ばっかり売ってんじゃねーよ、がんばれよ本屋! と毒づきながらも、渋谷のブックファーストが閉店してしまう時代です。22時まで開いているだけでもありがたいねえと、1時間ほど書店をうろうろしてなんとか1冊文庫本を手にして帰りました。

閑話休題。

その宮本輝熱をクールダウンすべく、吉田篤弘の『針がとぶ』を読みました。
この作品は連作短編ですが、定期的に読み返しているにも関わらずそのことを忘れて、いつもトップバッターのタイトル作品を楽しみに表紙を開きます。

この作品は、なぜか波長が合うと感じていた叔母を亡くした若き女性が主人公です。
わたしはこれを読み返す度に、伯母になりたかったなあと思います。
小説の世界では、両親という直系家族よりも曽祖父や叔父や叔父や叔母が、そのほどよい距離感のほうが表現しやすいのか、よく登場します。
この作品に登場する伯母は、生きている時間の中に独自のこだわりを散らばらせ生涯を終えるのですが、なぜでしょう小説に登場する伯母という人はたいてい独り者なのです。
そんな伯母像についつい自分を重ね合わせてしまうのか、あぁわたしも伯母になりたかったと思うのです(私の場合は、なりえても叔母ですが)。

子育てというものを知らぬわたしは、世界のいろんなものを吸収するこどもを、時に驚異に感じます。
自分はたいした人間でもないのに、その子になにかしらの影響を及ぼしてしまうことを(正確には、及ぼしてしまうこと、かもしれません)、驚異に感じるのです。
子を育てる覚悟などありません。でも、その子が自分の動きや言葉を真似したり、会話が成立することが、わたしのなにかが届いているのだと思うと小さな感動が胸に生まれます。
ましてや、親でもないのに友人の子が、自分が誕生日にあげた本を楽しそうに読んでくれることや、わたしのために誕生日プレゼントを選んでくれるなんてことがあれば、それはもう大げさですが己の存在価値を見出すこともできます。
わたしにとって、伯母という存在はそれに近いのかもしれません。

そして、『針が飛ぶ』は、そんなわたしの伯母像への憧れを満たしてくれる一方で、どこか自分をもてあました主人公にも自分を投影しているような気がします。
おそらく、この作品はこの先も、ところどころを忘れながら何度も読み返してゆくのでしょう。
あの作品の世界は、いつでもわたしに安息の場所を提供してくれます。


by fastfoward.koga | 2017-05-05 22:32 | 本の虫 | Comments(0)

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