言霊の幸わう国

いつもと違う月

 薄曇りを期待していたら、トーキョーの空は驚くほどの青空だった。
 F夫妻のマンションのベランダからは、2日ともきれいに富士山が見えたくらい。
 どんよりした空の下で、少しまったりしたきもちに浸ろうと思っていたので、ちょっと拍子抜けした。

 8日。
 1日半過ごしたF夫妻のうちをあとにして、新宿へ向かった。
 くるりのライブまで数時間。
 ぶらぶらして時間を過ごそうと思っていたけれど、人に疲れて、手近なファーストフードに飛び込んだ。
 空腹を満たして、読みかけの本を開いた。
 雑音が遠くに聞こえるくらい、わたしのまわりだけがシンとしていた。
 自分でもびっくりするくらい、雑踏の中で本にのめり込んだ。
 読み終えたら、妙な達成感があった。

 ちょっとよそゆきの顔をしたくるりのライブを堪能して、また新宿へ向かった。
 新宿から渋谷まで、夜行バスの窓からトーキョーらしい景色を目で追った。
 ふと視線を上げると、背の高いビルとビルの間から白く光った月を見つけた。

 なんとなく。
 おかしいけれど。
 新宿にも月は出るのだなと思った。

 右に左に動き回る月を、なんてことない顔をしながら追い続けた。
 でも渋谷に着いたところで、あきらめてカーテンを閉めた。
 やっと落ち着いてシートに体を沈めたあたりで、きもちが満たされていると感じた。

 1月以上くすぶっていたなにかが、細かい灰になって風に乗って消えていったような感じ。
 わたしに必要だったのは、こういうことだったんだなと思う。
 
 残念だけれど、こういう充足感はここでは得られない。
 なぜかどこかに足を運ばないと、手に入れられないようになっている。
 だから、やっぱり、たまに旅に出なくては。

 今年もいつもと違う場所で、月をたくさん見られればいいなと思う。
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by fastfoward.koga | 2006-01-10 20:24 | 一日一言