言霊の幸わう国

師の教え

 先日、卒業した大学から封書が届いた。
 お世話になったゼミの教授が退任されることになったというお知らせだった。

 記念講演会や謝恩送別会には残念ながら出席できないため、欠席で返事をした。
 会いたいような会うのにためらいがあるような。
 ちょっと複雑なきもちになった。

 わたしたち学生はその教授のことを「先生」といつも呼んでいたのだけれど、先生の部屋に入るのはとても勇気がいるくらい、怖い存在だった。

 ゼミのときは席はくじ引きで決め、本を読んだり書き物をしている先生にはいつも目配せし合いながら声をかけた。
 超氷河期と呼ばれる中、就職活動をしているときに同じゼミの子は、圧迫面接よりも先生の方が怖いと言ったくらいだった。

 そんなふうにいろんなことを思い出している中で、先生の口癖がふと頭に浮かんだ。
 先生はわたしたちが実験の結果をまとめたり、本の要約をして発表したあとなどによくこう言った。
「なんでや。なんでそうなったんや。」

 思い込みや、固定概念で結果を求め、考察しようとするわたしたちにどこからその結果が出て、なぜそうなったのかを明確に示せ。
 そうくり返して、先生はその言葉をわたしたちに投げかけてきた。

 浅はかなわたしたちはそんな先生に堂々と答える言葉も持っておらず、よくコテンパにやられていた。
 でも気づくと先生にお世話になった2年間で、おもしろいくらいみんながその口癖を自然に口にするようになっていた。

 今でも、わたしは会社で下の子たちに言っている。
「なんでそう思ったん? なんでそうなると思う?」と。
 これを何度か言うと、また~と嫌がられるのだけれど、だんだんそれを考える大切さは伝わっているはず。
 決してよい生徒ではなかったけれど、そこだけはこれからも先生の意志を引き継いでいこうと思う。

 みなさんの恩師は、どんな人です? 
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by fastfoward.koga | 2006-02-25 00:06 | 往復書簡