言霊の幸わう国

命題

 人との関係において。
 緊迫したり、緊張したりする状況になったとき、この手を離せたらどんなに楽かと思うことがある。
 自分の考えを一方的に述べて相手に答えをゆだねてしまえたら、そう思うのだ。

 いつもいつも、相手と自分の間に見えない糸があって、それを引いたり緩めたりすることをくり返しているような気がする。
 所謂、かけひき、というものなんだろうか。
 自分がしていることは、その言葉のもつ印象ほど計算したものがあるとは思えないけれど、どう動こうかと思案することは多い。

 ギリギリだと感じるゾーンまできたとき、何度も手を離すことを考える。
 正確に言うと、放り投げる、くらいのきもち。
 悩んでいることを、リセットボタンを押してゼロにしてしまおうと思うのだ。

 でも、めったにしない。
 先に手を離したら、きっと後悔するような気がするから。

 相手を傷つけるとか、自分の負けを認めることだから、ということではなく。
 ただ、向き合った相手に対しては誠実でいたい。

 誰かと向き合うことも、その相手との関係に緊張感が漂うことも、そうあることではないと思う。
 だったら、相手に対する感情がプラスであろうと、マイナスであろうと、どちらにしても、お互いが正々堂々と向き合うことは筋をとおすことのような気がするのだ。

 相手の動きを、息をひそめてじっと見て、なにかを先に読み取ったり、感じ取ったりしたとしたら、あとはそれを手にした自分の責任だ。
 手にしたくてそうしたのだから、掴んだものが自分にとってよくないものでも、ケリはつけないといけない。

 ばかみたいな責任感に囚われていると思う人もいるかもしれない。
 でも、わたしは、誰かに同じことを強要したいわけではない。
 これはただ、自分が自分に課した命題なのだ。

 だから、わたしは思っても、手にした糸を先に手離すことができない。
 離した手ではなにも掴めないはずだ、と信じていたりするので。
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by fastfoward.koga | 2006-04-16 22:11 | 一日一言