言霊の幸わう国

阿吽の呼吸

 今朝は人並みな時間に仕事に出かけた。
 いつもは、うんと朝早くか、昼ごろにしか出勤しないので、自分がとてもまともな人間になったような気がした。
 おかしなことだ。

 電車は、なんとなくいつもと違う空気が漂っているように感じた。
 そのせいか、すぐに本を広げたけれどそわそわした。
 落ち着かず車内をぐるっと見回すと、前に日本人の女性と西洋人の男性と、そのふたりの子どもなのだろう、女の子がすわっていることに気づいた。

 その子は、ぼーっと窓の外を見ていた。
 瞬きもしていないように見えるくらいぱっちりした目で、少しも動かないのでお人形さんのようだった。
 でも、しばらくすると退屈したのか、となりのお父さんにちょっかいを出し始めた。
 そのころにはわたしはすでに本を読み終えてしまっていたので、ちらちらとその様子を見ていた。
 ほほえましいじゃれ方だった。
 いいなぁ、と嫌味のないように見守っていた。

 あと1駅か2駅で終着駅に着くころ、女の子の体が揺れた。
 体がお父さんのほうに傾いたとき、お父さんは右腕を大きく上げた。
 すると、女の子はその腕の中にするっと体を滑り込ませた。
 抱きかかえられるようになった女の子が急に人らしく見えて、そのふたりが醸しだす空気にほんのり暖かくやさしいものを感じた。

 わたしはその無駄のない動きに、目を奪われた。
 ふたりはお互いに声をかけたわけでも、視線を合わせたわけでもなかった。
 それなのに、まるで念入りにリハーサルでもしたかのような、スムーズな動きだった。
 ちょっと感動した。

 誰かと手をつないだり、寄り添ったり、話し始めるタイミング。
 それが合うことは、すごいことなんだなと思った。
 わかっていたようで、わかっていなかった。

 自分ではない、まったく違う別の人といったいなにが一致すれば、それは起こるのか。
 その答えが知りたい。知りたい。知りたい。知りたい。
 そう強く思った。
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by fastfoward.koga | 2006-04-17 23:19 | 一日一言