言霊の幸わう国

帰るところ

 6時半に起きて、8時過ぎにはもう京都駅にいた。
 新幹線は西へ。
 向かう先は、尾道。

 睡眠不足で、新神戸を過ぎたあたりから眠気が襲ってきた。
 でも検札に来た車掌さんに起こされたら、目がぱっちり開いてしまった。
 そこから、流れる景色と持っていった小説に視線をせわしなく動かした。
 山の緑の多い、いつもと違う景色。
 違っていて当たり前なのだけれど、ただ単純に違うということにわくわくした。

 そう、わたしはわくわくしたのだ。
 でも、それを空いた新幹線で、ひとりで感じるべきではなかったと後悔した。

 尾道には、予定よりもかなり早く到着した。
 まずは地図を広げずに、ずんずん海沿いを歩いた。
 陽射しが強く、サングラスを忘れたこと、厚着で来たことを後悔した。

 いつものように坂と階段も何度も何度も上ったり、降りたりした。
 ひとりだったから早歩きになってしまい、昼過ぎには立ち止まると膝が笑った。
 お昼もこもんのワッフルも、ひとりで食べた。
 さみしくはなかったけれど、間違ったことをしているなと後悔した。

 千光寺でいつもひく七福神みくじは、福禄寿だった。
 毘沙門天がふたつ、大黒天がひとつ。
 おみくじに入っている、金色の小さい七福神のおまもりはこれで3つ揃った。
 少なくとも、七福神が揃うまではここに来なくてはとまた固く誓った。
 でも、次はひとりでは来ない。

 海はどこまでも静かで、空はどこまでも青くて、ときどき電車が通り過ぎる音と船の汽笛が聞こえた。
 いろんなことを考えながら歩いていたけれど、途中から暑さと足のだるさと喉の渇きしかわからなくなった。
 今、思う。わたしはそういうことをするために行ったのだなと。

 尾道は、やさしくて楽しい。
 わたしにはそこにあるものひとつひとつに意味があるから、見るものや感じるものにほどよい重みを感じる。
 尾道の見なれた町並みが電車から見えたとき、心の中で思わず「帰って・・・」と言葉が浮かんだ。
 その言葉に、少し笑えた。
 わたしは「帰ってきた」と言おうとしたのだ。
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 そういうところにはひとりで行ってはいけない。
 小さな後悔を積み重ねて、最後にそう思った。
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by fastfoward.koga | 2006-05-01 20:51 | 一日一言 | Comments(4)
Commented by mackworld at 2006-05-01 23:26
■時の流れと、自然の流れに身をまかせて、漂っておいで。
今は、それだけで いいではないか。  ね。
Commented by rabbitK at 2006-05-02 08:41
うん、そういうところには、
ちゃんと後から「あの時は・・・」って話せる人と行くべき。
全面賛成です。
行ってみたいなぁ、ここ。・・・いいなぁ。
Commented by fastfoward.koga at 2006-05-02 21:22
mackさんへ
まだ体にどこか力が入っているので、漂うには難しそうです。
でも、脱力するのもいいですね。
したいなぁ。脱力。
Commented by fastfoward.koga at 2006-05-02 21:24
rabbitkさん、こんばんは。
ほんと、すきな場所だからこそひとりで行くのはもったいないなと思いました。
いいところですよ、尾道。
行くときはお声かけてくださいね。
ガイドブックとは違う、お薦めをこっそりお教えしますから。