言霊の幸わう国

浮上

 ここのところ、毎晩のように夢を見る。
 出だしは昼間見たニュースの映像や気になっていることから始まるのだけれど、途中から話がどんどん展開されてゆく。
 どれもこれもやけに印象に残るから、そのつど夢診断にかけていた。
 先週見た夢も、おとつい見た夢も、結果は「これからいいことがある」のだそうだ。
 どうも腑に落ちない。

 今日は少し遅めの出勤。
 よく眠ったはずなのに、ホームに立ったら眠気が襲ってきた。
 川の水かさが気になって、川をふたつ越えて自分の目でそれを確かめてからうとうとした。
 何度か窓に頭をこつんこつんぶつけながら眠り、そこでもまた夢を見ていた。
 でもそれはもう思い出せない。

 数日間、わたしは溺れていた。
 醜い溺れ方。
 ぼーっとしたり、泣いたり、逃げたり、なにもしようとしていないくせにきもちだけは一人前に忙しかった。

 職場でニュース速報や気象状況などをチェックするためにつけられているテレビの画面をぼんやり見ながら、わたしはわたしでありたいと思った。
 そこで言う「わたし」がどんなわたしなのかは、ずっと考えていても答えは出ていない。
 でも、とにかくわたしでいたいと、久しぶりに誰かにではなく自分になにか強く求めた。

 それまで水の中でぐったりとひたひたになって流されていた枝のきれっぱしが、ざぶんと打ち寄せた波の勢いで垂直に立ち上がって、今はぷかぷか浮いているような感じ。
 夢のお告げのように物事が急転したわけではないので、いつまた次の波で横倒しになるかもわからないけれど、とにかく起き上がることはできた。

 降り続く雨のせいで、今日はバスで駅に向かった。
 暗く寒いバス停で待つのは嫌だったから、昼休みにバスと電車の無駄のない乗り継ぎ時間を調べた。
 どうやってもどこかでロスタイムがでてしまうので、乗り換えの途中、本屋に寄った。

 ここ数日、本を持たずに出かける日が続いていた。
 たんに本を読み終えてしまっていたこと、でもそれに気づく余裕もなかったこと、そして読もうとする意欲がなかったこと、そのみっつが重なった。
 さすがに少しまっすぐ浮くことができたら手持ち無沙汰になって、混雑する本屋の中を行ったり来たりした。
 その途中で思った。
 そう、わたしは本がすきだったのだ、って。

 先日書いた「自分のほしいものがわからない奴は、石になればいい」は、村上龍の『コインロッカー・ベイビーズ』に出てくる「キク」が言うセリフ。
 わたしがあの本の中で1番すきな、セリフ。
 
 明日もまだ雨は続く。
 でも出かけよう。
 せっかくの休みだ。お給料も出たことだし。
 それに。
 もうすぐ終わる梅雨の季節に、もう1回鬼にしっかり捕まえてもらっておこう。
 今わたしを捕まえてくれるのは、雨くらいのもんだ。
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by fastfoward.koga | 2006-07-20 22:59 | 一日一言