言霊の幸わう国

泳げる人

 川の水は冷たかった。
 でも鼻下までせまったその水を心地よいと、全身が感じていた。
 肩も、頬も、脚も、指先も。
 どこもかしこも、やさしく包まれた。

 初めて川で泳いだ。
 初めは浮き輪を使って。
 そのあとは我慢できなくなって、浮き輪をはずして川に体を沈めた。

 スーッとひとかきすると、思った以上に体は前に進んだ。
 小さいころスイミングスクールで覚えた平泳ぎの手足の動きは、しっかりと体が覚えていた。
 水をかくたびに、上方に見える景色はずんずん変わった。

 少し登った岩の上にすわるともだちたちを、水の中から見上げた。
 あとで、スイスイ泳いでたな、と言われた。
 そう、わたしはスイスイ泳げる人だったのだ。

 もっと泳ぎたいと思った。
 もっと水の中で水が動く感触を感じていたいと思った。
 水の冷たさも忘れて、ただ黙々と泳いでいたかった。

 流されるのではなく、自分の意思で泳ぐ。
 速さや方向を自分で決めて、泳ぐ。
 わたしにはそれができる。

 こどものころ、スイミングのプールで魚のように泳いでいた自分を思い出した。
 それこそまさに水を滑るように。

 花火大会の日、ともだちK嬢に誕生日プレゼントとカードをもらった。
 楽しみにカードを開くと、そこにはこう書かれていた。

「耐えることと、挑むことは矛盾しない。
耐え、そして挑んでいるんだ。」
 

 彼女のすきな岡本太郎の言葉。
 見たときにわたしのことを思い浮かべたと、お礼のメールをしたらそう教えてくれた。

 今まずは。
 川辺でじっと川の流れを読むよりも。
 水に体を沈めて、泳げなくとも泳がなくとも、そこに体を浮かせてみようと思う。

 いつか今だと思ったとき、そのときを逃さず水をひとかき。
 それさえできれば、わたしは泳いでゆけるのだ。
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by fastfoward.koga | 2006-08-13 20:46 | 一日一言 | Comments(6)
Commented by rabbitK at 2006-08-13 21:10
いやあ、泳ぐkogaさんのイメージ、しかとここまで来ましたよ。
川で泳いだことはないけれど、気持ちよさそうですね。
泳いでみたい。

あ、岡本太郎の本、とても好きなんですよ私も。
Commented by fastfoward.koga at 2006-08-13 21:35
rabbitkさん、こんばんは。
わたしが泳いだのは流れがほとんど感じられない川だったので、きもちよく泳げました。
でも泳ぎながらあちこちの岩に脚をぶつけて、青タンだらけです。

岡本太郎の言葉は読みたいなとは、わたしも思うのです。
が、友人K嬢からもらうのがすきなので、自ら手に取ることはなさそうです。
Commented by mackworld at 2006-08-13 23:19
■清流って冷たくて、それでもってしっかり水の香りがして、海とはまたちがった魅力があるよね。
泳ぐkogaちゃん、見てみたいだすな1回だけ。
Commented by fastfoward.koga at 2006-08-15 06:11
mackさん、おはようございます。
「1回だけ」がポイントですね。
何回も見たくないって(笑)?
Commented by mack at 2006-08-15 07:56 x
■1回だけ。
美しいものは、そう何度も見てはいけないのんだす、一瞬を目に焼き付けることで永遠となるのだすよん。
Commented by fastfoward.koga at 2006-08-16 00:23
mackさん、こんばんは。
美しいかどうかはわからんけど、1度は「永遠」とやらになってみたいね。