言霊の幸わう国

テーマ曲

 バスに揺られながら、本を広げていた。
 視線を上げたら月と目が合った。
 今日の月は、薄いお皿を奇跡的にまっぷたつにわったような半月だ。

 見上げる月に、厚みはない。
 切れそうなくらい潔い、薄い薄い月。

 たいてい恋が終わると、明確な意思を持たないまま、テーマ曲ができあがる。
 ひとつまえの恋のときはYUKIの「プリズム」だった。
 寂しさをひとりで紛らわせることができるようになってしまった、というのが別れの理由で、それをわかると瞬時に思った自分を痛いと何度も思った。

 そんな思いの中、聴いては止め、止めては聴き、をくり返した。
 だから、その人のことを思い出すとついついその歌を口ずさむ。

  「あなたは今も しかめ面で
  幸せでしょうか
  愛してくれる優しい人
  みつかるといいね」


 会えなくなってから、その人にはこの歌のように愛される人になってほしいなと思った。
 そのもうひとつ前の相手にも、同じことを思った。
 でも今度は、愛する人になってほしいと思っている。
 
 その違いがなんなのか。
 バスに乗っているせいでかくれんぼをしているような月を見ながら、ちょっとだけ考えた。
 でも、しっくりくるものはみつけられなかった。

  「私はこのまま 信じてゆけるわ
  愛の強さゆえ 優しき獣ゆえ
  花咲く丘まで 口笛吹いてこう
  喜びを抱いて
  見果てぬ空の上」


 わたしは自分の愛の強さを信じ、届けよといつまでも投げかける。
 決して、遠投は得意じゃないけれど。
 
 今はまた違う歌を聴いている。
 それがなんて曲なのか。
 さすがに恥ずかしくて、ここには書けない。
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by fastfoward.koga | 2006-09-01 21:06 | 一日一言