言霊の幸わう国

飢えと渇き

 梅雨明け前の、7月。
 平日の昼下がりに、ドトールにひとりいた。
 待ち合わせしているわけでもないのに、テーブルの上には携帯電話を置いていた。

 わたしはメールを待っていた。
 午前中に、雨をよけながら出町柳のデルタ地帯で送ったメール。
 連絡をくださいとも、返事待ってますとも、書いたわけではない。
 ただそこに立った心情を、短めに綴っただけ。
 でも、わたしはなにか反応してほしかった。
 そんな希望だけを、メールに山盛り詰め込んで送っていた。

 携帯を手にして、メールサーバーへアクセスした。
 受信メールはゼロ。
 それを確認してから、新規メール画面を呼び出した。

 今、ドトールにいる。
 昨日はヘンな夢を見たからあまりよく眠れなくて、眠くて仕方ない。

 そして。
 なんでもいいから、言葉をちょーだい。

 そう書いた。

 しばらくしたら、返事が届いた。

 自分も今日は朝から眠い。
 夢の話は今度聞かせて。
 今日はこれから接待で、あまり行きたくない。

 そう書かれていた。

 その出来事を、何十回、何百回思い出すたびに思う。
 わたしは、言葉がないと生きてゆけない人間なんだなと。
 しかもやっかいなのは、自分ひとりではその言葉は生み出すことができず、誰かキャッチボールの相手がいるということ。

 今は、言葉に飢えるのが1番怖い。
 そして言葉を生み出すことのできない渇きに、恐れおののいてしまう。
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by fastfoward.koga | 2006-10-15 20:15 | 一日一言