言霊の幸わう国

一生忘れない

 ぐいぐい引っぱられるように、次々と言葉を頭の中に入れたいった。
 広げた本の中に、確かにひとつ世界があった。
 今日のできごとだ。

 先日、伊豆へ旅したときに東海道線の真鶴という駅を通った。
 ぼんやりと窓の外を見ていて、駅名は目に入っていたけれどそのときは気づいていなかった。
 真鶴を過ぎてからしばらくして、川上弘美の「真鶴」の話になった。
 真鶴は東京から2時間ほどのところにあるらしいよ、と言われ、さっき目に映っていた駅名を思い出した。
 ちょうど持っていた日経新聞の書評欄に「真鶴」が取り上げられていて、その記事を読んでいたのにどうして気づかなかったのか、我ながら不思議だった。

 しばらく、真鶴の話をしていた。
 読みたいなと思っていたのだ、とわたしは言った。

 本屋で見かけたときから、装丁が印象的だった。
 大きく縦に「真鶴」とだけ書かれた箱。
 初めは箱に入っていると知らず、買ってから気がついた。
 すぐに読もうかどうか少し迷っていたけれど、今朝風邪で病院に行った時待合室で読み始めた。

 混みあった小さな待合室で、ぐんぐん読み進めた。
 ふと読んだページを見ると、6分の1くらい読んでいた。
 久しぶりに、本の中の世界に浸っていた。

 本から顔を上げたとき、おもしろいと思った。
 世界に浸った自分も、その本や読むタイミングを選択した自分も、そこに辿りついた自分も、みんなみんなおもしろいと思った。

 歳を重ねて楽しいのは、そういうとき。
 世界がつながっていると実感できることは、大人になってからのほうが断然多い。
 わたしはそういうことが、おもしろいといつも思う。

 きっと、「真鶴」という言葉をキーワードにしてつながったことは忘れないだろう。
 別になんてことない本で、場所なのに、もう一生消えなくなった。
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by fastfoward.koga | 2006-12-09 21:31 | 一日一言 | Comments(2)
Commented by BoneWhite at 2006-12-10 16:54
旅でつながるなんていいですね。
文章と場所がつながると一生忘れませんね。
思い出す時もいい感じなんだろうな、先々が愉しみですね。
一度、旅先で読書などしてみたいです。
しゃべりっぱなしがメインの旅ばかりで経験ないのです。まずは一人旅です。

お次は香港ですか!フットワークに感心ですよ。いってらっしゃいませ♪
Commented by fastfoward.koga at 2006-12-14 19:01
Boneさん、こんばんは。
お返事が遅くなってすみません。昨日、香港から帰りました。

結局、読み始めた「真鶴」が気になって香港まで持って行きました。
こんなに似合わないところはないなと思いつつ、でもホテルでともだちをほったらかして読み終えました。
本もわたしを旅に連れて行ってくれる大事なアイテムです。