言霊の幸わう国

 わたしは、基本的にというか圧倒的に、読む本は買う。
 ともだちに最近なに読んだ? と聞いても、借りることはほとんどない。
 意見を聞いて、本屋に向かうのだ。

 でも今はすきな人から本を借りている。
 初めは3冊借りると話していたのになぜか5冊になり、今4冊目を読んでいる。

 そうやって誰かに本を借りて気づいた。

 いくらすきな人から借りたといっても、本は本。
 わたしは読むことに集中して、借りたものだということを忘れていた。
 ただ一生懸命、いつものように文章を追っていた。

 借りた5冊のうちの2冊は、新潮社文庫の上下巻の小説。
 下巻に辿りついたのはおとついで、眠る前に初めて広げた。
 ほんの少し読んだだけだったけれど、ふとんの中で少しうとうとし始めてわたしは栞を探した。
 本の背にくっついているいつもの茶色いひもを引っぱり上げたとき、急に逃してはいけないと抜いたページに指をはさんだ。

 わたしが栞をはさもうとした、数ページ後ろ。
 340ページほどある本の、数10分の1あたり。
 茶色い栞はそこに挟まれていた。

 栞の後ろには、まだまだ果てしなく続く物語。
 すきな人はそこから一気に読んだんだろうかと、その小説を読み出してその人のことを思い浮かべ、読んでと渡された意味を考えた。

 ただそれだけのことなのに、妙に胸にずしっときた。

 わたしは、紙のしおりを使っているときは読み終えると必ず抜き取って、帯もはずして、本は本だけにしてしまう。
 でもこれからは、栞だけは最後にはさんだ位置にできるだけ残そうと思った。

 栞の後ろに物語があると思うだけで、どうにもならないくらいわくわくする。
 誰かの読んだ本を、自分の読んだ本を、読み返すだけなのに、最後の栞はわたしをまた別のところへ連れていってくれる。
 それって、すごいじゃぁないか!
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by fastfoward.koga | 2007-01-15 20:52 | 一日一言