言霊の幸わう国

あっち側とこっち側

 この休みは久しぶりの逢瀬にうつつを抜かした。

 特別でもなんでもない場所が、となりにいる人が違うだけで、そこにあるものすべてが純度を高める。
 空気は澄み、色は鮮やかに、耳は研ぎ澄まされ、手を伸ばし触れる指先の感覚の深さに、静かなうれしさがこみ上げる。
 いつも自分がいる側がこっち側の世界だとしたら、あの日わたしが足を踏み込んだのはいつもと違うあっち側の世界。
 そんな感じ。

 でも、またねと手を振ったあと、すぐにいつものこっち側に戻れるかというとそうではない。
 ふらふらとした足つきで用事をすませ、仕事に向かう間、あまり感じのよくない浮遊感を感じていた。
 ちょうど境界線を歩いていたのかもしれない。

 いつもよりゆっくり仕事を始める支度をして、時計を何度も見てもたもたする自分に、やっぱりエンジンは早々すぐにはかからないよなとひとりごちた。
 それでも職場の自分のデスクに座っていると、さっきまでの逢瀬がするすると消えてなくなるような怖さも心の中に見え隠れした。

 そうこうしているうちに気づいたら、こっち側に戻っていた。
 休み時間に外に出て見上げたビルの隙間の青空は、特別なものはなにもなかった。
 さみしかったけれど、これもいつものことだと割り切って仕事に戻った。

 でも、とふと考える。
 あぁ、今わたしはあっち側にいるなと思ったすきな人と歩いたあの橋を、今度ひとりで渡ったら。
 どんなことを思うのだろう。 

 あっち側とこっち側。
 自分はどっちにいると感じるのか。
 それとも、また別の3つ目の世界を見ることができるのか。
 やってみようと思う。
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by fastfoward.koga | 2007-02-06 22:48 | 一日一言 | Comments(4)
Commented by itr-y at 2007-02-06 22:58
遅ればせながら二周年おめでとうございます。

kogaさんの書く日常は読んでて少しどぎまぎしますね。
「こんなこと読んじゃっていいのかな」なんて(笑)

これからもkogaさんのいろんな視点を見せて下さい。
今後ともひとつよろしく...。
Commented by fastfoward.koga at 2007-02-06 23:02
itr-yさん、こんばんは。
どうもありがとうございます。
今年もぼちぼちやってまいりますので、また読んでやってください。

と、ちょっと自分で恥ずかしくなりました。
が、ここをためらってはなにも書けないのです(笑)。ハイ。
Commented by mamepanapollo at 2007-02-07 08:31
なんだか映画を見ているようようやなぁ・・・
映像が目の前に出てきて、まるでコガさんになったみたいな気分になってる自分がいる
Commented by fastfoward.koga at 2007-02-07 20:28
mamepanaplloさん、こんばんは。
・・・やっぱり恥ずかしい、そんな気がしてきました。あー。
あー!