言霊の幸わう国

血を見る

 早朝6時前。
 ふっと左の親指に重みを感じた。
 あー、と思って指を見ると、T字に赤い筋が現れた。
 あれよあれよという間に血が滲み出し、傷を視覚認識したところで感じていた重みが鋭い痛みに変わった。

 傷口の深さを確認したくてじっと見つめていたけれど、血はどんどん吹き出した。
 そのままどのくらい出るものか、と思ったけれど、垂れて汚してしまう前に指を口に含んだ。

 傷口には触れないように、注意深く指をくわえた。
 そのままの格好で、しばらく左手の掌をパレットにして化粧をした。
 10分たっても血は止まる気配を見せなかったので、いつまでもそうしていることもできずにティッシュを傷口に当てて止血した。

 手を心臓より高くし、親指だけピンと立てて残りの支度を整えた。
 運がよかったのか、朝から雨が降っていたのでベスパには乗らず、そのままの姿勢で傘を手にしてバス停へ向かった。

 左手を少しでも下げると、じわっと広がる重みがあった。
 1日手も親指も下げないようにと変な姿勢をしていたので、夕方には左腕の筋が痛くなってしまった。
 今日はそれを理由に、早々と退社した。

 朝、親指を口から出した後、上あごに舌を這わせたら血の味を感じた。
 そうそうこんな味だったと、思い出した。
 しばらくはふとしたときに、傷口がじんじんするだろう。
 でも、今は気が紛れてちょうどいいかもしれない。
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by fastfoward.koga | 2007-02-23 20:36 | 一日一言