言霊の幸わう国

空の色と雲の色と

 ベスパで最後の角を曲がる少し前に、左へすっと視線を上げた。
 薄い紺色の空に、もっと薄い紺色の雲が浮かんでいた。
 なにかとても懐かしい気がした。

 なんでこんなに懐かしいのかと思いながら、エンジンを切った。
 ベスパをガレージに入れてからもう1度空を見上げたけれど、感知式ライトの人工的な灯りが邪魔をして、同じきもちに戻れなかった。
 でも少し灯りから離れて真上を見ると、月が煌々と光を放っていた。

 なんだか騙されたような気がした。
 そんなにうまくいくわけないよな、とわけもわからず思った。

 うちに入ってからも後ろ髪をひかれて、ベランダに出て空を眺めた。
 でも視界が狭すぎてやっぱり求めているものはもう手には入らず、すぐに部屋に戻った。

 薄い紺色の空になにを求めたのか?
 がっかりしたきもちを本能的にごまかそうとしたのか?

 疑問の残る夜だ。
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by fastfoward.koga | 2007-02-28 22:12 | 一日一言