言霊の幸わう国

手ぶらの旅には背伸びとハナウタ

 目の前にフェンスがあると、人は知らず知らずのうちにそのフェンスをがしっと鷲掴みにしてしまうものではないだろうか。
 見晴らしのいい場所でそう思った。

 背伸びをしたところでたいして見えないものがみえるわけでもない。
 でも、何度も背伸びをした。

 そのわりに持っていったデジカメは、たったの1度もカバンから取り出さなかった。
 
 数センチの伸びでは飽き足らないと思うことが、何度もあった。
 だから、柵を胸のあたりからお腹のあたりに引き下げて前のめりになったり。
 高いところに登ったり、飛び移ったり。
 いつも以上にきもちがうずうずし、体を動かした。

 見えないものを見ようと、気がせった。
 せくくせに、そういうときほどハナウタを歌った。

 わたしの持論は、ハナウタとはご機嫌でなくても歌うものだ、だ。
 遠くに見える水の濃い緑色を見ていたとき、わたしは旅をしながらきもちは別のところへ旅をしていた。
 目の前にあるものが、また別のものを見せてくれる。
 わたしはそこにもまた同じように辿りつきたいと、切望する。
 どこまでいっても、欲ばりなのだ。

 車のフロントガラスから見える景色を見ながら、思っていた。
 世界は繋がった、と。

 旅をして、世界は広がるのではない。
 繋がるのだと、何度も何度も思っていた。
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by fastfoward.koga | 2007-05-21 20:26 | 旅行けば | Comments(0)