言霊の幸わう国

嵐の夜

 気づいたら、雨が降り始めていた。

 ぼつ、ぼつ、という音がベランダの屋根を鳴らした。
 でも、あまり気にせずにテレビを見ていた。
 番組が終わり、お風呂に入った。

 風呂場の窓を閉めようとしたら、雷が激しく鳴り、雨の勢いもさっきよりも増していた。
 浴槽の淵に頭を引っかけて、目を閉じて嵐の音を聴いていた。
 このままだったらずぶぬれになったも関係ないな、なんてつまらないことを考えていた。

 天井に向けた顔に、大粒の雨が降り落ちるところを想像してみる。
 きっと、目を閉じていても稲光の明るさがわかるだろう。
 雨粒が頬や目元の皮膚の薄いところに当たったときの痛さが、記憶の底から思い出された。

 確か10代のころ、同じように夜稲光とともに激しい雨が降ったことがあった。
 たぶん夏休みだった。
 夜更かしして、テレビを見ていた。
 あまりの雷雨の音の大きさに我慢できなくなって、こっそり部屋を抜け出して外に出た。

 どしゃ降りの雨に降られたら、どんな気分になるのか。
 たぶんそれが知りたかったのだと思う。
 大きな水がめをひっくり返したような雨に、数分ほど降られてみた。
 雷と雨の打ちつける音は、テンションが上がってすごいとつぶやく自分の声をあっという間に掻き消した。
 どれくらいの声なら負けないかと、少しずつ声を大きくしてみた。
 さすがにお腹の底からの大声は出せなかったけれど、妙に満足したのを覚えている。

 今は、雨は少し小降りになったようだ。
 遠くに雷の音が聴こえている。

 また機会があったら、濡れてみよう。

 みなさんには、嵐の夜の記憶はあります? 
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by fastfoward.koga | 2007-06-08 22:40 | 往復書簡 | Comments(4)
Commented by cool-october2007 at 2007-06-10 21:42
子供のころ、嵐の晩はドキドキ、ワクワクしていましたね。
ガキはそういうの大好きですから。
嵐の夜ではないんですが、台風が行き去る光景が好きです。空に1本線を引くように雲が切れて、その向こうに広がる青い空がひどく印象的でした。
Commented by fastfoward.koga at 2007-06-11 22:23
coolさん、こんばんは。
わたしも子供のころは台風で雨戸がガタガタいうのが、楽しくて仕方ありませんでした。
なんでしょうね、あのわくわく感。

台風の後姿。そう言えば、わたし見たことないです。
見てみたいなぁ。
Commented by cool-october2007 at 2007-06-12 06:51
台風の後ろ姿か~詩的ないい表現ですね。
なんかちっちゃなしっぽのついたキャラクターをイメージしちゃいました(^^
Commented by fastfoward.koga at 2007-06-12 21:16
coolさん、こんばんは。
そうですね、やっぱりしっぽはありますね(笑)。