言霊の幸わう国

感覚記憶

  『NO RECORD』
 人間の記憶にはいろんな種類がある。その中のひとつに感覚記憶という、その名のとおり五感の記憶がある。
 この間心理学のテキストを読んでいたら、その感覚記憶の質や鮮明度をみてみようというページがあった。電車の中でひとつずつの項目をぼんやり思い出していゆくと、わたしは視覚よりも聴覚よりも、匂いの記憶が一番鮮明なような気がした。
 石鹸、箪笥、乳児、焼魚、草、タバコ。そこに載っていた匂いは、鼻のずっとずっと奥の方で粒がぱちんと弾けたみたいによみがえらせることができた。
 (中略)
 実際のところ感覚記憶は1秒後でも著しい忘却を伴うものだと言われている。でも、無意識にでも忘れたくないなと思った匂いはちゃんと望んだときに思い出せる。そして思い出すだけでひゅーっとその匂いを感じた瞬間に引き戻したりする。見たり聞いたり、残しておけるものじゃない分、それは本当にせつない。だから、余計に忘れないようにがんばってしまう。


 これは、仕事を始めたころ、書いたものだ。
 少し前に読み返し、恥ずかしながら涙が出そうになった。
 書いたときのことを忘れてたな~という思いと、なんてことを感じていたんだという思いで胸がいっぱいになった。

 最近、シャンプーを変えた。いただきものでもったいないからと、2年くらいずっと使っていたシャンプーから変えたのだけれど、変えて匂いをかぐまで、半分くらい忘れていた。
 それは、思い出の残る匂いだったのだ。
 いつも忘れないようにとそのシャンプーを使って、思い出したくもないと使わなくなって、今はさすがにそのときの生々しい感情に振り回されたりしなくなった。なつかしいと思えるようになった。
 そう、「感覚記憶」というものはこういうものだった!

 人にはいろんな「感覚記憶」がある。嗅覚だけでなく、皮膚感覚や味、聴覚的記憶など。
 五感をフルに活動させて、ぜひ思い出してみてください。
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by fastfoward.koga | 2005-02-13 22:41 | 往復書簡