言霊の幸わう国

走る月 愛でる月

 帰りの電車。
 ふたり並びのシートの間へと足を向けながら、右か左か一瞬思案した。

 すぐに頭を過ぎったのは、左側。
 左側に座るとニコリとすることが多い、という単なる験担ぎ。
 でも今日は、そこをあえて、と右側のシートへ腰を下ろした。

 3つ駅を過ぎると、電車は地下から地上へ顔を出す。
 するとビルとビルの隙間から、白く丸い月がひょっこり顔を出した。

 あとは月とデッドヒート。
 先を行ったり、後になったり、時には肩を並べて歩くように月と帰宅した。

 今はずいぶんと空高く上がった月も、追いかけっこの最中はうさぎの姿がはっきり見えていた。
 なんとなく口角が上がる眺め。
 ふふふと、思わず心の中で笑みを洩らした。

 こんな綺麗な中秋の名月を見ずに眠るとは。
 不届き者めが。
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by fastfoward.koga | 2007-09-25 23:23 | 一日一言