言霊の幸わう国

オレンジな秋

 引越しの準備は整った。
 新しいビルに寄ってから、立ちっぱなしで棒のようになった足を引きずって最寄り駅に辿りついた。
 バスが来るまでには、まだ15分以上あった。
 とりあえず、と近くの本屋でしばらく雑誌類を立ち読みし、バス停に戻った。

 本屋とバス停の間には、ミスタードーナツがある。
 そのオレンジの光と空いた店内を見たら、なぜかほっとした。
 1度前を行き過ぎて、腕時計を見て、考え直してミスタードーナツの自動ドアをくぐった。

 いつもより少し時間をかけて3つのドーナツを選ぶ。
 小さな紙袋を手に、再びバスを待った。
 暗いバス停から明るい光を放つミスタードーナツのほうを見た。
 そこで、わたしは自分に、幸せな気分になりたかったからドーナツを買ったんだよと言った。

 バスを降りて、うちへ向かう途中、金木犀の香りを鼻が捉えた。
 ここでもオレンジ色のなにかは、わたしをほんのり幸せな空気で包む。

 なんだかんだ言っても、秋なのだ。
[PR]
by fastfoward.koga | 2007-10-08 22:14 | 一日一言