言霊の幸わう国

ともに生きる

 最近、「求めない」(加島祥造著)という本が売れているらしい。
 わたしも先日、新聞広告でこの本の存在を知った。

 その広告には、「求めない すると、本当に必要なものが見えてくる」というコピーが書かれていた。
 失恋したばかりのわたしは、隣にいるチチの存在をいつも以上に意識しながらその言葉を飲み込んだ。
 そうか、求めなければこの寂しさも悲しさもなくなるのか。
 と、求めない世界への扉に手を触れようとした瞬間、違うだろうと即座に手を引っ込めた。

 一昨日、立ち寄った本屋さんでこの本を見つけた。
 小さな白い本を手にとって見た。
 ぱらぱらとめくり、嫌気がさして棚に戻した。

 だから、わたしはこの本を読んではいない。
 でも誤解を生むタイトルであり、コピーだと思う。

 なにも求めなくていいのは、持っている場合のことだ。
 求めなくて、なにがいったい充足するというのか。
 いつまでたっても空っぽは空っぽのままじゃあないか。

 なくして、なくしたものの大切さを知ることも。
 今持っているけれど、もう少しほしいと思うことも。
 やっぱりあっちがいいと思ってしまうことも。
 止められないことは、間違いなくある。

 無になれれば、求めずに生きてゆけたら、邪念を振り払って心安らかに一生を暮らしてゆけるのかもしれない。
 でもわたしは、人との別れに泣いて、失敗に嘆いて、思い通りにならないことに憤りを感じ、いつまでも欲と闘い、そして共存しながら生きてゆく。
 自分の涙もため息も、自分で拭ってやるさ。 
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by fastfoward.koga | 2007-10-23 23:28 | 一日一言