言霊の幸わう国

毎夜の逢瀬

 書くときに気をつけていることが、いくつかある。
 その中で1番気を使っているのは、リズムだ。
 書くリズム。読むリズム。
 言葉の使い方や、文章の〆方、そして改行。
 そういうもので、自分もそして読む側の人たちも、読むことに厭きないようにといつも考えて書いている。

 おそらく今の半分の量も本を読んでいないころ、この作家とはリズムが合わないなと感じることが何度もあった。
 話の筋云々ではなく、言葉と言葉、文章と文章の間に感じるぎここちなさ。読むことが息苦しいとさえ思った。
 1度そう感じると、その作家の本は読み返さなかったし、2度と新しい作品に手を出したりしなかった。

 それが最近、5、6年という時間が経つと、意外におもしろいと思えるようになった。
 いい加減なもので最初に抱いた苦手意識すら忘れ、なんとなく手に取って読み返すと、うまく波長が合ったりするのだ。
 大人っておもしろい、積み重ねはやっぱり大切なのだな、と思うのはこういうときだ。

 先月買った1冊の本は、久しぶりにリズムが合わないと感じた。
 もう長いことそういう本を手に取ることはなかったのに、わたしの勘も鈍ったものだと思いながらそれでも読み続けた。
 良薬は口に苦しで、もう少し我慢したらなにか得るものがあるんじゃないかと、好奇心がそうさせたのだ。

 期待なんてしていなかった。
 読み終えることができれば、それでよかった。
 でも読み進めるうちに、「さんご」のきっかけを掴み、なんという文体なのかとすすすっときもちが惹かれていった。

 自分が書かない文章。
 それも、決して。
 でもリズムが合った。
 あぁ、やっと巡り会ったというきもちになった。

 堀江敏幸、その人が書く文体を擬人化したなら、きっとわたしのすきな男性のタイプになるだろう。
 インテリで、物腰やわらかく、ときどき難解ででもユーモアが見え隠れして、感傷的な面もある。
 登場人物に実際にこんな人がいたらなと好意を寄せることはあっても、文体そのものにそんな感情を抱くとは我ながら驚きだった。

 わたしはすきなものにはせっかちにがっつくタイプだけれど、その本はひと月近く枕元に置いて少しずつ少しずつ読んだ。
 まるで、毎夜逢瀬を楽しむかのように。

 もったいぶるって楽しい。
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by fastfoward.koga | 2007-12-18 21:52 | 一日一言 | Comments(4)
Commented by tabikiti at 2007-12-19 07:47
寝かす間
待つ間
色んなことに相通じますね。
Commented by fastfoward.koga at 2007-12-21 00:09
太美吉さん、こんばんは。
間を楽しめるっていいなと思います。
どうもせっかちなので、いろんなことが気になって落ち着かないんですよねー。
損な性分です。
Commented by tabikiti at 2007-12-21 15:23
私も短気のせっかち、おせっかいの早とちり
確か干支が同じだったような、かんけーねーかな。
0型な丑
Commented by fastfoward.koga at 2007-12-21 22:31
太美吉さん、ふたたびこんばんは。
そうそう、わたしも丑です。
短気ではないと思いますが、おせっかいの早とちりは同じです(笑)。
ちなみにわたしは、A型です。