言霊の幸わう国

雨女がゆく ~宍道湖

 堀川めぐりを終えたあと、冷えた体と空腹をなんとかせねばと京店(キョウミセ)商店街をうろついた。
 適当なお店でお腹を満たし、やっと人心地ついた感じがした。
 でも体力のメモリはあと2くらいか、と、無理はせずホテルへ向かうことにした。

 一旦松江しんじ湖温泉駅へ戻り、コインロッカーから荷物を取り出し、地図を確認した。
 あと2メモリとは言えどもこれくらいならと、JR松江駅のまだ向こうにあるホテルまで歩き出した。

 空からは、雨ともみぞれとも雪とも言いがたいものが落ちていた。
 もともと小雨くらいなら傘はささずにいたいと思っているくらいなので、中途半端な空模様に何度も傘を閉じたり開いたりを、せわしなくくり返した。
 
 あれも堤防と言うのか、防波堤というのか、宍道湖沿いの舗装されていない道を、荷物を肩に掛けえっちらおっちらと歩いた。
 遠くに見える宍道湖大橋を眺め歩いていると、足元でびちゃっという音がした。
 しまったと視線を下げると、泥水にまみれた水たまりに長靴がしっかりとはまっていた。
 でもカーキの長靴ブーツは動じもせぬ様子で、今回の旅ではほんとうに心強い友だった。

 宍道湖大橋は宍道湖が大橋川へ流れ込む袂にあり、まだ新しいようで、歩道も車道もかなり道幅は広くとられていた。
 少し強くなってきた風に傘を持っていかれないように柄をしっかりと握り締め、橋を上るように歩いた。
 途中何度も立ち止まり、見える限りの宍道湖を眺めた。
 晴れていれば、そのあたりからはきれいな夕陽が見えるというのだ。
 
 湖面との境目がわからないくらい曇った空。
 夕陽の光の欠片さえも感じられない。
 じっと見つめるが夕陽が見えるわけもなく、でも見えなくもないような。

 橋を渡り終えるころ、体力のメモリは確実に減っていた。
 でもまだもっと宍道湖を眺めていたいと、心のどこかで思っていた。
 でも荷物と、冷えと、傘の邪魔くささが体を一層重くし、とりあえず荷物は手離したいとやっぱり足はホテルへ向けた。

 ホテルでほんの少し休んだあと、わたしはまた宍道湖へと誘われるように湖畔にある県立美術館へと急いだ。
 夕陽が見えるわけでもないのに、きもちはどこか急いでいた。
 美術館から宍道湖が見え、ほっとひと息つきついた。

 1日かけて、いろんな角度から宍道湖を見た。
 電車、橋、美術館、どこでも、きもちを寄り添うようにしていた。
 わたしはその日で、宍道湖にするすると惹かれてしまったようだった。
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by fastfoward.koga | 2008-02-24 20:50 | 旅行けば