言霊の幸わう国

雨女がゆく 終章

 八重垣神社から再びバスに乗り、JR松江駅へと舞い戻った。
 そして、これで島根でやり残したことはないと後ろ髪をひかれることもなく、わたしはさっさと山陰本線を走る電車に飛び乗った。

 まずは松江を出て米子へ向かい、そこで電車を乗り換えて倉吉へ。そのあともう1度乗り換えて、最後は鳥取駅に。
 どの電車でも進行方向左側の窓際の席を陣取り、流れる景色と途中で買い足した文庫本を旅の友にして、ひとつずつコマを進めるように東へ東へと移動していった。

 荷物を脇に置きながら、小さな駅で乗り降りする学生の姿を見ていると、南九州を旅した記憶が体の奥底から沸きあがってきた。
 やっぱり電車でこうして旅をするのは楽しいと気づいたことにうれしくなる反面、もっと休みがとれていたらなと、複雑な思いが胸の中に広がった。
 そのとき、自分がうちへ帰ろうとしていることや明日からまたいつもの場所で仕事をすることが絵空事のようで、今こうしていることが続くほうがほんとうのような気がした。
 
 松江では晴れていた空も東へ向かうほど曇り出し、冬の日本海らしい色が見え始めた。
 予報どおり、果たして雪は降るのか。
 暖かい車内にいるせいで、わたしは降るなら降れ! と、期待するきもちが大きくなっていた。
 すると、短いトンネルを抜けると、一変して雪景色が現れた。
 呆気にとられて窓の外の雪を見ていると電車はまたトンネルに入り、抜けると今度は雪は跡形もなく、そ知らぬ顔をした素っ気ない景色がそこにはあった。
 それを、山陰本線の車窓は何度かくり返した。
 思わず編集がイマイチなスライドみたいだと毒づきかけたけれど、自分のきもちが見透かされているようで、最後はひとり笑いを噛みしめた。

 11時29分に松江駅を出発し、鳥取駅には15時16分に到着した。
 そのあと簡単に食事をし、16時35分に鳥取を出発する高速バスに乗り換えた。
 静かな車内の中で眠ることもできず、わたしはいつもよりもゆっくりしたペースで文庫本を読み進めた。
 あとはもうバスが京都へ連れて帰ってくれる。
 うれしいような、寂しいような。
 それはいつものことのような、そうでないような。
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 これにて、出雲・松江の旅話、終了。
 相変わらず遅筆ー。
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by fastfoward.koga | 2008-03-06 21:36 | 旅行けば