言霊の幸わう国

はなびら

 桜はひらひらと花びらを落とし、葉桜に変わりつつある。
 会社へと向かう道、この2週間ほどは桜の木のある公園のそばを選んで通った。

 まだ人もまばらな早朝、犬の散歩をする人たちと何度かすれ違いながら、その日も公園沿いの通りを歩いていた。
 公園からほんの少し顔を出した桜の木の枝。
 緩く風が吹くと、花びらがひゅひゅっと斜めに地上へと舞い落ち、すたすたと歩くわたしに向かってきた。
 思わず手を伸ばしたくなるのを我慢していたけれど、とうとうこらえ切れず、公園を通り過ぎるあたりでお腹のあたりに飛んできた1枚をうまく捉えた。

 右手の親指と人差し指で、離さないように摘まんだ。
 少し指を緩めると風に持っていかれそうで、でもあと少し指に力を入れると潰してしまいそうだった。
 けれど、それはあっという間だった。
 花びらを顔に近づけて、ほんのちょっとだけ指をずらすと風はあっさり花びらをさらっていった。

 大事なものの扱い方を、わたしはまだよくわかっていない。
 手にしている大事なものを、強く握ればいいのか、そっと触れていればいいのか、悩んで、それでも失敗して後悔してのくり返しだ。
 それはずっと続いて、なくなることはないだろう。
 でも、トーキョーから帰ってきてから、落ち着いている。

 失くすときは、失くすのだ。
 そして戻ってくるものは、戻ってくる。
 それはもう自分の領域を超えて起こるような気が、今ではしている。
 けれど、だからと言ってなにもしないわけではない。
 今までのように悩んで悩んで失敗して後悔して、それしか方法はないと思うようになった。
 
 叶わないことは、必ずある。
 でも予想しないことも、間違いなくある。
 
 手の中にある大事なものを、今は大事だよと大事だよと撫でている。
 もう少ししたら、それをちゃんと言葉にしたい。
 結果がどうであれ、伝えることが大切なのだ。
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by fastfoward.koga | 2008-04-12 22:07 | 一日一言 | Comments(0)