言霊の幸わう国

トンネルを抜けて次の扉へ

 まだ澄んだ空気の早朝7時前。
 駅のホームで、読みかけの文庫本を開いた。
 電車が来るまでの数分間さえも、待ちきれなかった。

 続きと結末が気になりつつ、読み急いで1行飛ばしてしまいそうになる自分を宥めた。
 いつもならひと駅停車したあとは睡眠時間に当てるのだけれど、今日はそれもせず読んだ。
 うまい具合に本編とふたつのあとがきを読み終えたところで、降りるべき駅に到着した。

 本を閉じ、カバンにしまう。
 席を立ち、電車を降りて、大勢の人とともに列をなして階段を昇った。
 改札を抜け、地上に出る。
 数段の階段を上がり、外の景色が見えたところで、わずかに頭がくらっとした。

 トンネルを抜けたときのように、まだ白々しさの残る明るさが目に焼きついた。
 そこで、物語の世界から現実に戻らねばならないことに気づいた。
 けれど頭はそう簡単には切り替わらず、信号を渡るまでの間は特にぼんやりしていた。

 帰りの電車に乗るまでに、次の本を調達しておかなくては、と思った。
 駅に併設されているビルに入っている、茶色い木目の大きな本棚のたくさんある本屋のことを考えたら、胸が高鳴った。

 いつでも、新しい世界は扉を開いて待っている。
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by fastfoward.koga | 2008-04-30 20:22 | 一日一言 | Comments(0)