言霊の幸わう国

和ぐ箱

 仕事でちょっと嫌なことがあって、もやっとしたまま電車に乗った。

 いつものように本を広げ、あと数10ページの物語を読みきった。
 エピローグには主人公がもらった手紙について書かれている場面があって、そこを読み過ぎたあと、手紙が書きたいなと思った。

 電車に乗るまでは少し歩いたせいか、ほんの少し汗ばんだ感じがあったのに、乗り継ぎのときにホームに立っていると風がすーすーと洋服の中を通り抜けた。

 次の電車では、つり革を片手に持ち、もう片方の手で携帯のメモリーに順番にわかる人の誕生日を登録していた。
 ひとりひとりの顔を思い出しながら、もうおめでとうと言うこともない人の分まで、馬鹿正直に入れた。

 家路へと急ぐ間に、電車に乗ることがあることをありがたいなと思う。
 あの箱に揺られていると、日ごとに多少の差はあれ、きもちが和いでくる。
 それは、ぎゅーっと一方に押し付けられた砂を右へ左へと傾けて、ざざ、ざざっと均してゆく。
 揺られれば揺られるほど、砂はさらさらと流れ、動き始める。
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by fastfoward.koga | 2008-05-12 23:08 | 一日一言 | Comments(0)