言霊の幸わう国

不屈の精神

 今日仕事中、どうしても頭と感情を合わせることができない出来事があった。
 昨日から引きずっている案件で、上司と話をしてもやらなければいけないことはわかっているのに、どうしても口から言葉が出なかった。
「わかりました」という言葉が、こんなにも言い難く口を重くするなんてと、突きつけられた事実に自分のことながら少し慄いた。
 しばらく無言になったり、うだうだしたことを口にして時間を稼いだ。
 それでも解決の糸口がなかなか見出せず、やっとのことでなんとか「やらんと仕方ないんですよね」と言葉を絞り出した。

 そのあと1時間、ずっとパソコンの画面を睨みながら、自問自答していた。
 
 わたしは話すことがすきだ。
 そして同じように、議論や討論を通して自分の意見を主張し、他人の意見を尊重し、お互いが納得できる答えを導き出す共同作業もすきだ。
 話すことで頭の整理もできるし、思ってもいなかった答えを自分の中に見つけることもできるし、相手の新たな一面を引き出すこともできるこれらの行為を、わたしはいろんな場面で必要視している。

 けれど、ぷつんと糸が切れたように黙りこくることがある。
 自問自答している間は、邪魔されたくないのだ。

 会社を出て、傘をさすのを迷うくらいの雨が降る中、駅へと急いだ。
 履いていたヒールは濡れたアスファルトに靴音を大きく鳴らし、ふと足元に目をやると、照らすオレンジ色の街灯の光の反射にどこか連れて行かれそうだった。
 電車に乗ったあと、考えをまとめるために手帳を開き数行書き留めたけれど、会社から離れるにつれて息が詰まりそうになった。

 雨に強く降られ、うちに辿り着いたあと、夕飯を食べながらNHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」を見ていた。
 今日は映画監督の堤幸彦氏が登場し、冬から春にかけて撮影していた吉永小百合主演の映画の撮影模様を中心に番組は進められていた。

 頭のほうで、堤監督は「悔いを残していないか」と自問自答しながら、大女優と向き合っている姿をカメラの前に晒していた。
 途中司会の茂木さんが、堤監督にこう聞いていた。

「戦うことはすきですか?」

 その質問に、監督は「すきです」と答えていた。
 あっさりというほど軽くはなく、わざとらしい重さもなく、事実は事実以上のものではないというように、直球で答えていた。

 45分間の番組を見ながら、わたしは今の自分に足りないのは信念だと思った。
 感情が理性の邪魔をするとか、プライドを誇示したいとか、相手をねじ伏せたいとかいう思いを手なずけるための小手先だけの行動ではなく、必要なのは1本すっと筋の通った強さなのだと気づかされた。

 わたしも闘いたい。
 外の世界とではなく、内なる大きなものとやり合いたい。

 今立ちはだかっている壁にはどうやったって好意は持てないし、苦手では到底足りないような理解もしたくなくなる相手だけれど、無闇に闘いたいわけはない。
 決して、勝ち負けで終わるものではないのだ。

 ココデクタバルモンカ。
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by fastfoward.koga | 2008-05-13 23:59 | 一日一言