言霊の幸わう国

未完成の完成

 通信教育のテキスト「決断・実行力強化コース」の3冊目も、そろそろ読み終わりに近づいたころ。
 後悔や未練はスッパリと断ち切れ、とか、修羅場を乗り越えてきた人は強い、とか、肝心なときに逃げるな、といった教えの中から、急にふわっと湧き出した言葉があった。

 未完成の完成。

 噛みしめていると、じわじわっと記憶が抽斗から溢れてきた。

 誰のことを指した言葉なのか、忘れもしない。
 10代の後半から20代半ばまでで、何度も振られたあの人のことだ。

 当時はうじうじしっぱなしだったから、失敗しても挫折しても、これぐらいでくたばるものかと立ち向かってゆくその人に憧れていた。
 嵐の中でも体を前傾にして前に進む、そんな姿が容易に想像できるような、粘りといい意味のずうずうしさを持っている人だった。

 10数年前の記憶をかき混ぜていると、なんだか自分は奢り高ぶった人間になってしまったなと急に思った。
 振り返ると30も過ぎ、すっかり一人前のような顔をして、もうわたしはこれ以上変わることはできないと開き直った態度をとっていた。
 変わりたい思いはあるくせに、この性格は変わらない、このやり方は変えられないと、世界が変わることをどこかで、密かに待ち望んでいた。

 こんなことは、今まで何度も何度も思ってきたことなのに。
 また同じ穴にはまってしまうとは。

 今のままでは、この世に遺せるものなどもちろんない。
 遺したと思っていたのは幻で、たかだか不良品だ。
 その不良品を、わたしは完成品だとどこかで思い込んでいた。

 あのときあの人に感じていた強さを思い出していたら、すーすーする胸の中にぐっと大きな石のような重みを感じた。
 テレパシーで力が送られてくるかのようだ。

 その湧き上がった力で、ちゃちなプライドを磨いて不良品を未完成品にしたい。
 もっともっと尖らせて、闘うなら剣に、疲れたなら杖に、次の足を踏み出すことを諦めてしまわないためにもう1度。
[PR]
by fastfoward.koga | 2008-06-24 23:18 | 一日一言 | Comments(0)