言霊の幸わう国

くるくる回る  旅と旅には関係のない思考の数々

 仕事帰りのイベントがすきだ。
 飲み会、デート、旅、買い物。
 仕事の日がちょっと特別になる感じが、ものすごくいい。
 そう言うと、ハハは首を傾げた。

 そうやって、富山へも午前中だけ仕事をして向かった。
 12時過ぎに会社を出て、地下鉄を乗り継ぎ大阪駅へ。
 ホームに滑り込んできた12時42分発のサンダーバードの窓際に陣取り、汗がひくのを待った。

 サンダーバードは新大阪、京都を順調に通過し、13時をまわったら右手に琵琶湖が見えてきた。
 久しぶりの琵琶湖だ。
 天気が良いので、水の色が青く見え、いつもと変わらず海のようだと思った。
 しばらくはずっと右の目の端にその景色を引っかけるように、捉えていた。
 心地よく電車の揺れに身を任せていると、この景色がずっと続かないことが寂しくなった。
 そのうちトンネルに入り抜け出ると、琵琶湖はよそよそしくなり、そのうちに首を後ろへやらないと見えなくなってしまった。 
 京都府南部に住む人間の琵琶湖へと馳せる思いは、格別。
 でも行き先はここではないよからと、小さく思いを奮い立たせて前を向いた。


 誕生日が近づくと、チチとハハはいつも言う。
 誕生日はなにが欲しいと。
 聞かずに、プレゼントをもらったことはもう何年もない。欲しいものを買ってくれる。
 今年はお言葉に甘えて、チチにはカバンを、ハハにはスニーカーをリクエストするつもりでいる。

 視線を足元にやると、汚れた白のスニーカー。
 クッションが薄いので、長時間歩くと疲れが出る。
 鉄子旅の前には新調したいなと思っている。


 特急に揺られながら、途切れ途切れで眠気がやって来た。
 でも眠い眠いと思いながら、本を読む。
 そろそろ本を閉じようかと思いつつ、眠りについて書かれた小説の世界に引き込まれ閉じることができない。

 窓の外に目線をやると、並行するように道があり、1台の白い車が走り去っていった。
 車に乗っていると、あの電車に乗りたい、あの線路はどこに向かうのかと思い、電車に乗っていると、あの道はどこへ繋がっていて向こう側からはどんなふうに見えるのか、といつも思う。
 道と線路と、その両側からの景色を体の中に入れ込めたとき、カチッと鍵が外れるような気になる。
 それも、たまらなくいい。


 また、視線を伸ばした足先に移した。
 旅先で新しいスニーカーを買うというのはどうだろう。
 欲しいと思うと、いてもたってもいられない。
 新しいスニーカーに足を入れる瞬間を想像する。
 靴擦れは大丈夫だろうかと心配してみるけれど、足元はまだ汚れたスニーカー。

 どうしてだろう。
 洋服を捨てるときにはそれほどでもないのに、履き慣らし、そして履き潰した靴を捨てるとき、自分はなんて冷酷なのかと思ってしまう。


 わたしの場合旅と本はセットなので、旅のお供になる本選びはいつも慎重だ。
 ただ慎重さと比例して選択が正しいかどうか、はまた別物だ。
 それを知っているので、本屋ではできるだけ心穏やかに選ぶようにしている。
 まるで、当たりくじなんて欲しくないとお祭りの出店の前で思っているこどものように。

 今回は栗田有起の「オテル モル」を持ってきた。
 栞の左側をまだ半分残しながらも、正解だったとわかる。


 サンダーバードの車内で、とりあえず頭に浮かんだ思考を形にすべく言葉を綴っている。
 旅の間のひとり言というよりも思考の断片を、記して残す。
 流れる景色の中で切望。
 思考のブラックホールの向こう側が見たい。
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by fastfoward.koga | 2008-07-13 21:40 | 旅行けば