言霊の幸わう国

旅跡  Ⅳ 絶望しない世界

 何日も何日も電車に乗り、その中で本を読み、合間にどっぷり眠り。
 そんな生活が、そう思うことすら忘れるくらい底抜けに楽しかった。
 充実。
 そう、充実していたのだ。

 時には、退屈することもあった。
 景色が代わり映えしなくて、本ももう読み終えそうで、眠いのに車内の冷房が効きすぎて眠ることもできなかったとき。
 それでも、また電車に乗るのか、と思ったことはなかった。

 本を読むには、電車が1番集中できるし、落ち着ける。
 眠る前も読書は大切な時間だけれど、基本的にあまり長く読まないのでやっぱり電車がいい。
 動く図書館、と言ったところだろうか。

 あまりに本の中の世界にのめり込むと、読み終えるまで目的地に着かなければいいのにと日常思うことがある。
 読み終えた余韻に少し浸ったあと、すーっと電車がホームに滑り込む。
 そんなタイミングが、理想的。
 なので、3時間近く同じシートに座っていられる旅や出張がすきだ。

 今回の旅で仲よくなった友は、持っていった「クライマーズ・ハイ」を含め7冊。
 これもご縁だろうと、ずっと横山秀夫の文庫本をくり返し旅先の本屋で買い求めた。
 同じ人の手で書かれた作品を読んでいたせいか、旅のリズムやテンポが整っていたように思う。
 旅と本には、そんな相乗効果もある。

 電車に揺られ、言葉に揺さぶられ。
 揺れが2倍になったり、帳消しになったり。
 そんなふうに、どんぶらこどんぶらこと旅は続いてゆく。

 本と電車がこの世から消えたら、絶対絶望する。
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by fastfoward.koga | 2008-08-09 20:16 | 一日一言