言霊の幸わう国

旅跡  Ⅶ キープ

 今回の旅では、1通もハガキを書かなかった。
 メールも届いたものに返信しただけで、こちらから旅の様子を知らせることもしなかった。

 伝えたいことがなかったわけじゃない。
 ただ、書こうとするきもちと場所、タイミングが合わなかったのだ。

 置いてけぼり。
 書こうとすると、書こうとした言葉はホームを通過した電車のように、風を起こして遠くへ去っていったあとだった。

 それでも、持ち歩いていたメモには、その夜まで胸の中に残った言葉を記していた。
 旅の最中はもちろんいろんな感情が湧き、それを言葉に変換し、頭の中をいくつも飛び交っていたけれど、そのどれもが夜までもたなければそんなものはいらないと思っていた。

 そのメモは、まだ手元にある。
 でもこうして帰ってきてからも、ほとんど開いていない。
 書き記したことを無駄だとは思っていないけれど、今すぐそのときの感情を掘り起こして文章にはできそうにない。

 旅から帰ったらもっと思うように言葉が出るようになるんじゃないか、とうっすら思っていた。
 あくまでも希望的観測。
 その希望は結局希望のままで、いまひとつ背中を押すものがない。
 体の中にある澱を、ろ過し切らないと、きっと言葉が自然と湧き上がるあの状態にはならないだろう。

 今書いているこの言葉だって、どこか上滑りしている。
 でも、書く。
 書かないと、始まらん。
[PR]
by fastfoward.koga | 2008-08-13 21:13 | 一日一言 | Comments(2)
Commented at 2008-08-15 21:53
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by fastfoward.koga at 2008-08-16 20:30
鍵コメさん、再びこんばんは。
確かに、馴染んできました。
旅が体に。しっくりと。こっくりと。
で、旅が旅というイベントごとにならず、どこまでも永遠に旅が続くような気がしてきます。