言霊の幸わう国

鮮やかなモノクロ映像

 昨日は、降ったり止んだりの雷雨。
 チチハハが法事で出かけたので、わたしはひとりお留守番。
 うちにひとりいるという、久しぶりの空気が漂っているなと、こまごました用事を済ませるために階段を上り下りしながら感じていた。

 玄関で靴の整理を始めたころは西向きの玄関は薄暗く、でも窓からの弱い陽射しで困ることはなかった。
 ブーツを箱から出したり、サイズの合わなくなって処分する靴を選別したり。
 すると、ときどき手元がパッと明るくなった。
 来るぞ来るぞと、手の動きはそのままで耳だけ構えていると、ガラガラドッカーンと大きな音が鳴った。
 近所の犬がいっせいに鳴き出す。
 しばらく鳴き声が続き、また静かになると雷は先に光り、そして音をたてる。
 その予定調和的なくり返しが、おもしろかった。
 夏の名残のようだった。

 雷が止むと、雨が窓を打ちつけるように強く降り出した。
 バシバシと自分の存在を誇示するように、雨は降った。
 靴の整理が済み自分の部屋へと戻ったわたしは、その力強さに誘惑され、ロールカーテンを引き上げた。

 出窓に肘をつき、表の通りを見下ろす。
 濃い色に変わったアスファルトの上を、雨粒がいくつもいくつも落ちている。
 雨粒の大きさなのか、落ちる速度なのか、雨が地面を叩きつけている強さが見てわかる。
 跳ねと輪を描き、雨は飽きることがない。
 そのいく度となく見てきたはずの光景を見、わたしは自分が好んでいるものをそこで初めて意識した。

 動く水。

 流れる川。
 跳ねる雨粒。
 蛇口から噴出す水道水。
 湧き出る水。
 落ちる滝。

 同じ水でも、どちらかと言うと静かに水を湛える池や湖よりも、形を変える水に視線が止まる。
 それは、変化しながら不変であり続けるもの。

 こどものころ、蛇口から噴出す水の感触がおもしろく風呂場で遊んでいたら、ハハに怒られたことがある。
 あのなにが楽しかったのか、ハハに怒られることが少なかったせいか、よくそのときのことを思い出し、考えていた。
 きっと、動いて形を変える水が不思議で仕方なかったのだと思う。

 器の中に張ってしまえば、その中に手を入れてもさらさらと掴みどころがない水も、勢いを持たせるとものすごい力を感じさせる。
 プールでも掻いても掻いても自分との間に隙を作らせない水を、掬い上げて眺めたこともある。

 誰もいない薄暗いうちの中と、跳ねる水。
 もうずっと昔に染みついた記憶は、30年近く経っても色なんてないくせに、すっきりと鮮やかに体の中に残されている。 
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by fastfoward.koga | 2008-09-23 00:56 | 一日一言 | Comments(2)
Commented by tabikiti at 2008-09-25 15:35
私も動いている水・人が好きです。
人も水も不思議です。

水で出来ている雲って消す事ができるって知ってました。
初めて消した時、人はすっごいなーって思いました。
Commented by fastfoward.koga at 2008-09-25 22:45
太美吉さん、こんばんは。
そうか、雲は水でできてるんですよね。
確かに、初めて消した人はすごい!