言霊の幸わう国

カテゴリ:本の虫( 153 )

6月の巻

1 小川洋子   密やかな結晶・講談社文庫  
2 堀江敏幸   燃焼のための習作・講談社    
3 村上春樹   世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド(上)・新潮社文庫 ※ 

 6月は、記憶にまつわる物語ばかり読みました。
 中旬に参加したイベントでも、「記憶に残る旅」について書いたりもしていたので、おそらく無意識に「記憶」をキーワードに暮らしていたのかもしれません。
 
 そう言えば、イベントの中でこんなことを言っていた人がいました。
「わたしにとって『記憶に残る旅』と『心に残る旅』は違っていて・・・」
 そこでその場は、賛同するような空気になりました。
「『記憶に残る旅』は、きっとこっちなんだと思います」
 そう言って、彼女は頭を指さしました。
 
 けれどわたしは、違います。
 わたしにとって「心に残る」は「印象に残る」と同義で、そこに重さはありません。
 けれど「記憶に残る」ものは、そこに自分の感情や感覚が伴っているので、お腹の中にぐんと沈み込むものもあります。  

 人は記憶まみれで生きている。
 というより、人は記憶でできている。

 わたしは、そう思うのです。

 堀江敏幸の『燃焼のための習作』は、わたしがいつも考える思考のスパイラルについて描かれています。
 会話から生み出される、いや開き続ける記憶の抽斗。
 誰かの言葉から思い出しては紡がれる話の数々。
 わたしは数日かけて読みましたが、この作品は一気に読むことをおススメします。
 そうすれば、物語の中で会話に参加しているような気になれるはずです。
 ぜひ、ご一読を。
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by fastfoward.koga | 2012-07-14 22:45 | 本の虫

5月の巻

1 村上春樹   スプートニクの恋人・講談社文庫 ※  
2 有川浩     三匹のおっさん・文春文庫      
3 カミュ・窪田啓作訳
           異邦人・新潮文庫     
4 有川浩     三匹のおっさん ふたたび・文藝春秋  
5 井上雄彦   空白・スイッチ・パブリッシング


 6月も今日で終わり。
 うっかり5月の読書歴を書き漏らすところでした。

 カミュの『異邦人』は、春卒業した大学の読書会のテーマで参加するつもりで読んでいましたが、結局読書会には行かず。
 1度読んだくらいで、この作品について語れるものではありません。
 読み終えることを目的に読み始めてしまった作品なので、数年後くらいに読み返すとまた違ったことを感じるような気がします。

 5月は『スプートニクの恋人』を読み返しましたが、そこから村上作品の読み直しが始まりました。
 ひょんなことから、最近トーキョーに住む見知らぬ女の子と文通を始めたのですが、わたしが村上春樹がすきだと書いたら、彼女は村上作品なら『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』が1番すきだと返事をくれました。
 ちょうどそのとき手にしていたのが、『世界の終わり~』。

 本にまつわる偶然というのは、どんなときも心を躍らせてくれます。
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by fastfoward.koga | 2012-06-30 21:32 | 本の虫

4月の巻

1 伊坂幸太郎  魔王・講談社文庫 ※
2 小川洋子   博士の愛した数式・新潮文庫 ※ 
3 村上春樹   神のこどもたちはみな踊る・新潮文庫 ※  
4 白岩玄     野ブタ。をプロデュース・河出文庫 ※ 
5 酒井順子   女子と鉄道・光文社 ※  
6 朝井リョウ   桐島、部活やめるってよ・集英社文庫
(※印は、読み直した本です)


 大学を卒業したら読書のペースアップを! と思ってましたが、なかなかスピードは上がりません。
 先日大学の友人と話をしていたら、それぞれが読んだ本の話をし始め、帰り道にはテレビを消して本を読もうと心に決めました。はい。
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by fastfoward.koga | 2012-05-27 18:47 | 本の虫

3月の巻

1 それでも三月は、また・講談社
2 内田百閒   第一阿房列車・新潮文庫 ※
3 川上未映子 すべて真夜中の恋人たち・講談社
4 山崎ナオコーラ
           論理と感性は相反しない・講談社文庫
5 山崎ナオコーラ
           男と点と線・新潮社文庫


 旅先でその町の本屋に行くのは、楽しみのひとつです。
 今回の香川への旅では、山崎ナオコーラの『男と点と線』を用意していましたが、渋滞に巻き込まれた高速バスの中で4分の3ほど読んでしまいました。
 そこで高松市内を散策中、ある駅の近くにある本屋に行きました。
 しかしそこは見事なまでに流行りだけを置く書店で、文庫コーナーと文芸書コーナーを3巡ほどしましたが、1冊の本も選べず、あきらめて店を出ました。

 今晩、もしくは明日早くに本を読み終えてしまったら。
 そう思うと、不安になりました。
 他にどこか本屋はないだろうかと、おみやげと夕飯を食べるお店を探しがてら、繁華街へ向かうと、うまい具合に大きな書店が2店舗見つかりました。
 ひとつは、さきほど立ち寄ったのと同じ書店。
 どんなものだろうと巡回を始めると、意外にこちらの店舗はすぐに手に取れる本が見つかりました。
 いくつもの背表紙を見ているうちに、まだ山崎ナオコーラが読みたい気分になっていたので、結局『論理と感性は相反しない』を購入しました。
 1冊の本を手にしただけで、お腹はまだ満たされていないのに、とてもほおっとしました。

 山崎ナオコーラは、卒業研究で小説を書くときに何度も読み返していた作家です。
 入り込んで書いて、ふと我に返ったとき、自分が書こうとしているものがなんだったのかわからなくなることがよくあり、そういうとき、自分の立ち位置をニュートラルに戻すときに読みました。
 小説とは。
 それがなんなのか言葉では説明できませんが、読んでいれば自分の中にその答えが沁み込むような気がしていたのです。
 現に読み返したあとは、スッキリしたきもちで作業に戻れました。

 彼女の書く作品には、ひねったりこねくりまわした表現はありません。
 難しい言葉も使われません。
 平易ではありますが、単なる平易でなく、センスがよいのです。
 それはあちこちで評価されていますが、読んでいると、あぁ、うまいなあと、わたしもよくうなります。
 
 エンターテイメントではない、これこそ小説というおもしろさ。
 それを彼女の作品に感じます。
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by fastfoward.koga | 2012-04-01 20:07 | 本の虫

2月の巻

1 大石英司   ぼくらはみんな、ここにいる・中公文庫 ※ 
2 内田百閒   第二阿房列車・新潮文庫            
3 速水健朗   ラーメンと愛国・講談社現代新書      
4 吉田篤弘   木挽町月光夜咄・筑摩書房          
5 石巻日日新聞編
           石巻日日新聞・東日本大震災後7日間の記録・角川SSC新書    
6 池澤夏樹   春を恨んだりはしない 震災をめぐって考えたこと・中央公論新社


 今日という日が近づくにつれ、テレビなどでも特集が組まれるようになってきましたが、わたし自身3月11日の翌日以降の記憶がなぜかぽっかりと抜けています。
 ひとり暮らしを初めて1週間後の出来事で、震災の影響で仕事も忙しくなり、3月の末にに大事な友人が亡くなったことなどから、毎日をあわただしく過ごしたせいだと思いますが、どこかで記憶を抹消したいと思った自分がいなかったか、そんなことをふと考えました。
 その罪滅ぼしではないのですが、2月後半から、東日本大震災に関する本を手に取るようになりました。

 数日間、ここになにを書こうかと考えていました。
 その時間をできるだけ多く確保しようと、この週末はなにも予定を入れませんでした。
 正直考えすぎて胃が痛くなり、今日という日をひとりで過ごせるのかとも思ったりしました。
 でも今は、1度は読むことを心が拒否した、あの日をテーマにしたアンソロジーをなんとか読み進められるようになりました。
 が、自分が感じ考えたことを、言葉にするほどの余裕はまだ自分にはないようです。
 
 ただひとつわかっているのは、わたしは被災者ではありませんが、日本という国に住む限り、向き合っていかなければならない問題がまだたくさんあるということです。
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by fastfoward.koga | 2012-03-11 10:56 | 本の虫

1月の巻

1 プルースト・高遠弘美訳
   失われた時を求めて 第一篇「スワン家のほうへⅠ」・光文社古典新訳文庫
2 フロベール・山田ジャク訳
           ボヴァリー夫人・河出文庫
3 村上春樹   回転木馬のデッドヒート※・講談社文庫
4 高野和明   6時間後に君は死ぬ・講談社文庫
5 フランツ・カフカ・頭木弘樹編訳
           絶望名人 カフカの人生論・飛鳥新社
6 大石英司   神はサイコロを振らない※・中公文庫


 今年読んだものから、出版社名も記すことにしました。
 理由は、今まで海外の作品はあまり読まなかったので気になりませんでしたが、どこの出版社の誰が訳したものかは結構重要だなと思い直したからです。
 今回読んだプルーストやフロベールなどは、ひとまず買った、というところがあるので、他の訳者のものも読んでみたいものです。
 それは、なかなかチャレンジャーなことなんですが。

 1月は、いろんなことからの開放感で本を読むのものびのび。
 買いためていた本、読み返したくなった本、読みたかった本、少しずつ手に取り読みました。

 久しぶりに村上春樹を読みましたが、やっぱりこの人の書く日本語は読みやすいです。
 引っかかりがないというのでしょうか。
 一語もこぼれ落ちることなく、無心に文章を追いかけられることに幸せを感じます。
 そして読み返したもう1冊、大石英司の『神はサイコロを振らない』は、ルポタージュのように書かれた小説ですが、自分には書けない文章に浸りながら読みました。

 そして2月になった今、旅に出られない鬱憤を晴らそうと読み始めた文庫本。
 うっかり、昨日電車の中に置き忘れてしまいました。
 忘れ物センターに電話をすると、係の人から「どんな本ですか?」という問いが。
「内田百閒の『第二阿房列車』です」

 ・・・・・・。
 ああ、阿房ならぬ阿呆はわたし、わたしですよ。
 早く続きが読みたいです。
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by fastfoward.koga | 2012-02-07 21:30 | 本の虫

12月の巻

1  伊藤たかみ  ミカ! ※ 
2  伊藤たかみ  ミカ×ミカ! ※
3  山川方夫   夏の葬列 ※

 ※は読み返した本です。


 2011年、読んだ本は57冊でした。
 年間100冊を目標にしてきてから、1番少ない冊数となりました。
 大学の課題に気をとられて、というのもひとつの理由ですが、ひとり暮らしを始めたことと春に通勤電車のダイヤ改正で座って帰れなくなったことが大きな要因です。
 読むリズムが狂ったと言えばよいでしょうか。
 今年は、テレビを消して本を開く時間を増やしたいと思います。
 読みたい本は山ほどあるもので。

 2011年最後の月に読んだ本、伊藤たかみの『ミカ!』と『ミカ×ミカ!』は、「子ども」をテーマにした課題を書くために読み返しました。
 課題はスクーリングの事後課題で、提出期限は卒業研究の提出前。
 すでに単位は足りているから出さず終わらそうかとも思いましたが、学友のブログを読み、そこに書かれていた文章に励まされ、ここであきらめちゃあ、いかん、と締め切り前日の15時から書き始めました。
 そして例のごとく、21時ごろに「第四種の速達で」と郵便局に駆け込み郵送したものでした。
 その結果が先日帰ってきましたが、これがまた意外に点数がよく、心中複雑。
 人間、やりきってこその評価だなあと、しみじみ思いました。

 レポートでは、授業を取り上げた谷崎潤一郎の『少年』と比較し、両作品の主人公の少年が世界を広げてゆく点について書きました。
 子どもが主人公だと、つい冒険や成長をテーマにしたものを想像しますが、どちらもそこを大きくクローズアップせず、子どもの視野(世界)が広がってゆく様子を淡々と書いています。
 少年たちは見たことのない世界に触れても、むやみにあわてたりしません。
 暗がりで目が慣れてくるのを待つように、手探りをしながら、世界とはこういうものなのかと徐々に見える世界を静かに受け止めます。
 大人なら目を背けたり、閉じたりしてしまうものも、少年たちは怖くてもその向こうにあるものがまだなにか知らないので、見えたものが一体なんなのか、ただ見極めようとします。
 そのまっすぐな視線を、どう読むのか。
 それが子どもをテーマにして、小説を書く理由だと思います。
 子どもの視野が広がって同時に世界が広がれば、一度に見えるものは限られます。
 ということは、そこには陰ができ、その陰こそが、大人に読ませたい部分なのでしょう。
 陰は、見つかりにくいからこそ陰。
 忘れていたものがそこにあり、その感覚を呼び起こすことで大人の世界はそこからまた広がりを持ち始めます。
 単に子ども時代を振り返るためだけに、小説という世界に子どもが存在しているのではないのです。

 と、いう視点で小説を読んだら、おもしろいですよ。はい。
 
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by fastfoward.koga | 2012-01-03 21:09 | 本の虫

11月の巻

1  絲山秋子   ラジ&ピース
2  シェイクスピア
            ハムレット 
3  池澤夏樹   スティル・ライフ ※


(テキスト)
・シェイクスピア  ロミオとジュリエット


 最近、あまりにも本を読まなさすぎて、本を読む楽しさを忘れてしまいそうです。

 いや、でも今読んでいるプルーストの『失われた時を求めて』は、一生に一度出会うかどうかくらいの小説です。
 わたしが「永遠に世界を離れるときに持っていく八つ」でよく書いていた「永遠につづく小説」「いつまでも終わらない小説」なのかもしれません。
 早くなにもかもから解放されて、読む耽りたいです。


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(島根帰りの特急で)
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by fastfoward.koga | 2011-12-10 22:01 | 本の虫

10月の巻

1  堀江敏幸   めぐらし屋 ※
2  栗田有起   お縫い子テルミー ※
3  北村薫     空飛ぶ馬 ※    

 ※印は、読み返した本です。


 先月は卒業研究の小説書きをしていたので、小説とはなんぞや? と思いながらヒントをくれそうな作品を読み返していました。
 と言っても、答えがそこに書かれているわけでもなく、ただ迷わずに書くことしかないという結論に至るまで。

 のんびりしていられるのも、あと数日。
 そろそろ添削が返ってきます。

 最近のわたしの口癖は、「卒業したら読む」です。
 読みたい本は山ほどあるので、今からリストアップだけはしておこうと思います。
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by fastfoward.koga | 2011-11-06 22:07 | 本の虫

9月の巻

1  堀江敏幸   象が踏んでも 回送電車Ⅳ 
2  幅允孝     幅書店の88冊 あとは血となれ、肉となれ
3  朝吹真理子  きことわ  
4  カズオ・イシグロ
            日の名残り
5  津村記久子  ミュージック・ブレス・ユー!!
6  西加奈子   あおい ※ 
7  島村洋子   シャンプー ※ 
8  堀江敏幸   雪沼とその周辺 ※


(テキトト・参考文献)
・夏目漱石   我輩は猫である
・新潮文庫編  文豪ナビ 太宰治


 卒業研究の小説も佳境に入りました。
 と言っても、佳境なのは時期(締め切り)であって、残念ながら書いている内容ではありません・・・。

 書いていると、悲しくなるくらい自分の文章が嫌になります。
 それでも書かねばならぬのが、今。
 せめて書いた言葉にいちいち落ち込まなくていいように、いい小説を頭に閉じ込めて、その気になって書こうとイメトレしていました。
 いくつかの作家の作品を手に取りましたが、書くことを意識して読むとまた違うものを感じることができました。
 文章が浮き立ってくると言って伝わるでしょうか。
 物語という大きな器の中に収まっている言葉、文章が活き活きとしてくるのです。

 特に堀江さんの文章に、改めて惚れ惚れしました。
 水のように流れる、透明感のある文章。
 大きさも小ささも感じられる水。
 そんな「水」を目指し、3日間、集中して書き上げようと思います。
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by fastfoward.koga | 2011-10-08 00:12 | 本の虫