言霊の幸わう国

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空の色と雲の色と

 ベスパで最後の角を曲がる少し前に、左へすっと視線を上げた。
 薄い紺色の空に、もっと薄い紺色の雲が浮かんでいた。
 なにかとても懐かしい気がした。

 なんでこんなに懐かしいのかと思いながら、エンジンを切った。
 ベスパをガレージに入れてからもう1度空を見上げたけれど、感知式ライトの人工的な灯りが邪魔をして、同じきもちに戻れなかった。
 でも少し灯りから離れて真上を見ると、月が煌々と光を放っていた。

 なんだか騙されたような気がした。
 そんなにうまくいくわけないよな、とわけもわからず思った。

 うちに入ってからも後ろ髪をひかれて、ベランダに出て空を眺めた。
 でも視界が狭すぎてやっぱり求めているものはもう手には入らず、すぐに部屋に戻った。

 薄い紺色の空になにを求めたのか?
 がっかりしたきもちを本能的にごまかそうとしたのか?

 疑問の残る夜だ。
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by fastfoward.koga | 2007-02-28 22:12 | 一日一言

クール便

 今日は言葉の新鮮さについて、考えていた。

 誰かにこれを伝えたい、この言葉を伝えたい、と思うとする。
 でも今すぐその誰かには伝えることができない。
 そんなとき、わたしはどれくらいその伝えたいことを、その言葉を、新鮮なまま保存しておけるだろうかと考えたのだ。

 そんなことを人と比べたことがないので正しくはわからないけれど、たぶんわたしの言葉の賞味期限はそう長くはない。
 言葉には瞬間的に放出するものと、熟成させて放出するものがある。
 その言葉がどっちの形で生まれたとしても、わたしの場合新鮮さに自信がなく、あせりがひょこっと現れて、時間の経過の中で言葉をダメにすることが多い気がする。

 新鮮なものは新鮮なままで。
 今までそれを可能にするのは、できるだけ早く届けることだとずっと思っていた。
 でも、それができない場面に何度も出くわして、何度もあーっと叫んだ。
 叫ぶたびに、どうにかしていい方法がないか探していた。

 それが今日ふと、輸送方法に限界があるなら保存方法を変えてみたらどうだろうかと考えた。
 伝えたいその誰かのきもちがこちらへ向いたときに、ピチピチしたままで言葉を即座に届けられたら、と思ったのだ。

 せっかちでいらちなわたしは、それを実現するとしたらかなり精進せねばならない。
 でも時代のニーズにも応えていかなくては。

 ピンチはチャンス。
 今目の前にある波は、うまく越えたいのだ。
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by fastfoward.koga | 2007-02-26 21:04 | 一日一言

山頂への道程

 さっき書き上げたものを、クリックひとつで消してしまった。
 もう同じことを書くエネルギーも情熱も感じないので、違うことを書くことにする。


 わたしは書くときも話すときも、言葉の選び方には注意する。
 それ敬語を正しく使おう、というようなことではなく、今この瞬間にふさわしい言葉はどれだろう考えることだ。
 だから、人から間違っていると指摘されたり、自分で気づいたりすると軽く落ち込むことがある。
 いつだって言葉をうまく操りたいのだ。
 
 本を読んだり、人と話していると、おもしろい言葉の選び方をするなと思う人がいる。
 それは、ある流れの中で、石にでもつまづくように言葉が浮き出すような。
 自分では埋めることのできなかった隙間に、しっくりとなにかが埋まるような。
 そんな感じがする。
 
 今読み終えた藤代冥砂の「クレーターと巨乳」は、途中でいくつもの石につまづき、いくつもの隙間が埋められた。
 言葉なのに、言葉以上のものを持つ言葉。
 そんな感じがした。

 タイトルひとつとってもそうだ。
 表題もそうだし、「君の芸術が終わってしまう前に」や「太陽のバブル」なんかは、タイトルをページの隅に何度も確認しながらどんな物語なのかと考えて読んだ。
 そして読み終えて、もう1度タイトルをじっと見た。
 じわっと広がる言葉のシミ。
 そういうことは、わたしにとってはとても稀なことなのだ。

 写真家だからなのか、文章が映像的だった。
 でも描写がくどいということもなく、ただ淡々と、どこまでも淡々と言葉が綴られていた。
 写す人が書くと、こういう言葉が並ぶのかとじんとした。

 ブログを書き始めて、2年。
 少し言葉慣れしていたところがあったのだけれど、実のところ自分はまだ富士山の麓にいる程度だなと思った。
 まだまだ学ぶべきことはある。
 死ぬまでに頂上へ辿りつけたら、まあいいか。
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by fastfoward.koga | 2007-02-25 20:20 | 一日一言

血を見る

 早朝6時前。
 ふっと左の親指に重みを感じた。
 あー、と思って指を見ると、T字に赤い筋が現れた。
 あれよあれよという間に血が滲み出し、傷を視覚認識したところで感じていた重みが鋭い痛みに変わった。

 傷口の深さを確認したくてじっと見つめていたけれど、血はどんどん吹き出した。
 そのままどのくらい出るものか、と思ったけれど、垂れて汚してしまう前に指を口に含んだ。

 傷口には触れないように、注意深く指をくわえた。
 そのままの格好で、しばらく左手の掌をパレットにして化粧をした。
 10分たっても血は止まる気配を見せなかったので、いつまでもそうしていることもできずにティッシュを傷口に当てて止血した。

 手を心臓より高くし、親指だけピンと立てて残りの支度を整えた。
 運がよかったのか、朝から雨が降っていたのでベスパには乗らず、そのままの姿勢で傘を手にしてバス停へ向かった。

 左手を少しでも下げると、じわっと広がる重みがあった。
 1日手も親指も下げないようにと変な姿勢をしていたので、夕方には左腕の筋が痛くなってしまった。
 今日はそれを理由に、早々と退社した。

 朝、親指を口から出した後、上あごに舌を這わせたら血の味を感じた。
 そうそうこんな味だったと、思い出した。
 しばらくはふとしたときに、傷口がじんじんするだろう。
 でも、今は気が紛れてちょうどいいかもしれない。
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by fastfoward.koga | 2007-02-23 20:36 | 一日一言

慣れと甘え

 慣れるというのは、怖いことだ。
 甘えることも、同じ。

 底なし沼みたいにずぶずぶ音をたてて、自分がはまっているのがわかる。
 ばかみたいだなぁ。

 相変わらず同じところをぐるぐるしている。
 もうそれも終わるのかと思っていたのに、やっぱり同じところに辿りついた。

 そろそろ、やめたい。
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by fastfoward.koga | 2007-02-22 23:30 | 一日一言

振り返り「哲学バトン」

 昨年2月にやった「哲学バトン」
 ふと思い出して、今のわたしがまたやってみたらどうだろうと思ってやってみることにした。


 『 死 』    すぐそこにあるもの    
 『 時間 』    救い
 『 信頼 』    赤い糸
 『 至福 』    眠る
 『 無駄使い 』   自分の安売り   
 『 写真 』   残せるもの
 『 アート 』   手が届かないもの
 『 情熱 』   今ほしいもの    
 『 家族 』   当たり前だけど貴重なもの
 『 好奇心 』   うずうず
 『 癒し 』   うさんくさい
 『 本 』   空気
 『 父 』    似ている人
 『 掃除 』   対話
 『 心 』   形があるようでないもの 
 『 春 』   もう少し先でいい
 『 記憶 』   命綱
 『 不思議 』   すきな感覚 
 『 無駄 』   心の贅肉
 『 友人関係 』   自分を映す鏡
 『 無 』   暗闇
 『 正義 』   美談
 『 青春 』   もう過ぎたもの
 『 対話 』   信頼
 『 平和 』   広島
 『 無限 』   空
 『 桜 』   涙


 イメージの変わらないものもあれば、変わったものもあるはず。
 書き出したからどうってことはないことなのだけれど、こういうことをくり返していると自分の感覚が研ぎ澄まされてくるような気がするので、結構すきなのだ。

 そんなことを考えていたら、眠くなってきた。
 でも今晩は眠りにつくまで、こうしていよう。
 言葉で言葉を追いかけて、言葉では辿りつけないところまで行ってよう。

 たぶん、辿りつく前に眠ってしまって力尽きると思うけれど。
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by fastfoward.koga | 2007-02-20 23:31 | 一日一言

極意

 昨日の夜は、買ってきたばかりの本を読んでいた。
 夕飯を食べて、部屋を整えて、よしとクッションを抱えてベッドの上に乗っかったのが19時24分。
 ぱらぱらとページをめくって文字の大きさとページ数を確認した。
 考えていたのは、何時間で読めるかということ。
 わたしには、その本をどうしてもその日のうちに読み終えたいという思いがあった。

 いつも以上に、表紙も丁寧に開き、文章も丁寧に追った。
 その本を読むきっかけをくれた人に、しっかり応えたいと思っていた。

 土曜日に届いたハガキに、まだ読みかけだけれどその本の主人公にわたしが重なる、と書かれていた。
 その本は、本屋で存在は知っていたけれどどうも手を出せずにいたものだった。
 冷たい雨の降る中、本屋へ走ろうかとも思ったけれどあせるきもちを落ち着かせて読むほうがいいような気がして、1日待ってから手にした。

 3軒目の本屋で見つけたときは、これで今晩は眠れるとなぜか思った。

 主人公が自分に似ているかどうかは、読んでみてもわからなかった。
 でもイメージが重なる、としたためられた言葉の意味はわかるような気がした。

 文字どおり、一気に読んだ。
 最近理由もなくわーんと泣きたいきもちがくすぶっていたので、読みながら何度も何度も泣きたくなった。
 でも、読みきるまでは泣くわけにはいかないと、強情なきもちがむくむく現れた。
 ここで泣いたら、ハガキの主に申し訳ない。
 そんな意味のないこだわりだけが、挫けそうになるきもちを支えていた。

 できる限り、わたしはがんばった。
 がんばったのだけれど、晴れ晴れした気分とはうらはらに、今朝はぼんやりしたまぶたのまま仕事へ向かった。
 最後の2ページで、城は落ちたのだ。
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by fastfoward.koga | 2007-02-19 20:57 | 一日一言

くすぶり

 いろんな場所で、いろんなことに、いろんな人に。
 心を揺さぶられて、今日も1日が終わる。

 1年前とは違う自分。
 6年前とは違う自分。

 今わたしは33歳だけれど、この間から急に35歳という年齢を意識し始めた。
 時間の流れが突然渦を巻いて、目の前に迫ってくる感じがしている。

 なんだかわーんと声を出して、意味もなく泣いてみたいような。
 お腹がよじれるくらい大声で笑ってみたいような。
 次の日後悔するくらい、大酒をくらってみたいような。

 とにかく、なにかがくすぶっている。
 このくすぶり、静かに消すべきか、淡々と大きくするべきか。

 明日目覚めたら、決断をくだそう。
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by fastfoward.koga | 2007-02-17 00:59 | 一日一言

家出娘

 仕事が終わってビルを出る前に、入口近くの鏡の前で歩く自分の姿を確認した。
 少し裾広がりの黒のコートに、カラフルなマフラーをひと巻きして片側にだけに垂らして歩く自分。
 スタスタと、小さく歌を口ずさみながら自動ドアをすり抜けた。

 歌っていたのは、くるりの「家出娘」。

 わたしは、家出したことはない。
 小心だし、いい子だし、そういうことはわたしにはできない。だいたい家出なんて、現実的ではない。
 家出を本気でしようなんて、と思っていた。
 よく考えれば、本気でなければできないことなのだけれど。

 冒険だって、同じだ。
 あれは物語やアニメの中だけの話だと思っていた。

 子供のころは、「トムソーヤの冒険」のトムが嫌いだった。
「赤毛のアン」のアンもそう。
 思ったことを口にして、大人を驚かせるこどもが生理的に許せなかった。
 今となっては、素直に思いを表現できることがただうらやましかっただけだとわかっているけれど、あのころは本当にあんな子が自分の近くにいたら嫌だなと思っていた。

 世間では当然のごとく大人と呼ばれる今となっては、家出する必要なんてもうないのだろうか。
 冒険はいくつになったって、できる。
 でもなぜか急に、家出が魅力的に思えたのだ。

「ララララララ ララララ ラララ ラララ ラララ」と歌い続けたまま、夜道を歩いた。
 空を見上げて、ふとさっき鏡に写った自分はマントを羽織った風の又三郎みたいだと思った。

 家出とは、なにも言わずにうちを出て戻らないことを言うらしい。
 今年は、ひゅっと風に吹かれて家出してみるか。
 だったら今日みたいな風の強い日がいいな。
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by fastfoward.koga | 2007-02-15 23:33 | 一日一言

ヒントマン

 春一番が吹いたあとの、雨上がりの道を歩いた。
 歩きながら、自分の口がとがっているのはわかっていた。
 昔からの、わたしの癖だ。
 むくれたときはいつもそうなる。

 さっさと帰ればいいのかもしれない。
 こうして歩いていると余計にイライラすることに出くわすかもしれない。
 と思いつつ、どんどん歩を進めて、救いを本屋に求めた。

 入ったことのない大きな本屋。
 くさくさしているのでいちいち本の背表紙を見るエネルギーはなかった。
 探していた本と目についた雑誌を2冊手にして、レジへ向かった。

 出口へ向かう途中で、1冊の本を手にしてまた元に戻した。
 店を出て、暗い道から明るい店内を眺めた。
 明るくてまぶしいなと思った。

 とにかく今は、自分のアンテナにいろんなものを引っかけたいと思っている。
 どこに答えがあるかわかならないから、手当たりしだいに手を伸ばすしか方法が今は見つからないのだ。

 初めて入った大きな本屋には、なにかヒントがあるような気がした。
 でも、わたしは足早に店を出た。
 みすみすその機会を逃したなと、ガラス越しに見えた写真集の陳列を見て思った。

 キラキラしたものは、すぐそばにあるのに。
 うまく手にすることができなかった。

 そうやって目の前を通り過ぎていったものが、今までにいったいいくつあったのだろう。
 あー、逃した魚は大きかった。
 ような気がする。
 と、今日はひとりごちてみる。
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by fastfoward.koga | 2007-02-14 21:40 | 一日一言