言霊の幸わう国

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空室あります

 一句。

 失恋の痛みも 日薬 3ケ月


 ということで、当初予想したとおり、失恋の痛手から立ち直るには2ヶ月では少し足りず、やはり完治までは3ヶ月だなというのが、今回のせめてもの学習の成果だ。

 わたしはこれまで失恋するたびに、傷口の癒し方をいろいろと試行錯誤してきた。
 泣き喚いたり、友との連絡を一切絶ちひとりでこもったり、ブログに書いてみたり、強がってみたり。
 こんなことは上手にできるようになっても自慢できるものではないけれど、同じところでもう2度と躓きたくはないなと思いながら、いつも挫けては立ち上がってきた。

 失恋したあと、こういうことを書こうとずっと思っていた。
 こういうことをいつか書けると信じて疑わなかった。
 いつものように能天気に別れた直後にはさすがに思えなかったけれど、心のどこかにそういう空気はあったので、自分は大丈夫だろうなと。

 おかしなもので、甘いものは別腹、みたいに、誰かのことを愛しいと思うスペースは、失恋しても心の中でゼロになることはない。
 多少狭くなったりしても、伸縮自在で形状記憶のように必ずまた元に戻る。

 空きスペースは早めに埋めないと、メンテナンスが大変なのだ。
 これもいくつもの別れのあとの教訓。
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by fastfoward.koga | 2008-01-31 21:32 | 一日一言

雨女がゆく ~出雲大社Ⅱ

 夕飯を食べ、翌朝の朝食用のパンを駅前で買ってホテルへ帰った。
 夜行バスでよく眠れなかったので、昼間からすでに早めに寝ようと決めていた。
 ホテルに戻ってからはそのとおりに行動し、22時には読んでいた本を閉じ、灯りを消した。
 眠る前にセットした携帯のアラームは、6時。セットしておきながらも、起きる自信は半々だった。

 低い枕で、部屋の乾燥も気にならず、ぐっすり眠れた。
 くるりの「Jubilee」で起こされると、目はぱっちり開いた。
 よし、と気合を入れ、テキパキと支度をし7時にはホテルを出た。
 向かった先は、出雲大社だ。

 ホテルに着いてから、ガイドブックをめくっていると、どうしてももう1度行きたくなった。
 澄んだ空気の中、静々と歩きたくて仕方なかった。
 このまま出雲を離れたら、後悔するような気がしたのだ。

 8時前の出雲大社は人の姿はぽつりぽつりと目につくのに、音が全部消えたかのように静かだった。
 天気予報とは打って変わって空には青さがあり、何度も空を見上げた。
 昨日と同じようにお参りをし、本殿の周囲をゆっくり歩いた。
 あちこちが昨日の雨でまだしっとりと濡れており、深呼吸しなくても深呼吸をしているような、そんな感じがした。

 すーっと沁み込むものを確かに感じ、鳥居をくぐり抜けるときには満足感があった。
 背中を押されるというのは、こういうことを言うのだ。
 神とは、なんとすごいものなのか。
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※写真は本殿裏にある彰古館です。
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by fastfoward.koga | 2008-01-29 23:00 | 旅行けば

ゆらゆら

 じーっと目線で追う人がいる。
 気になるのだ。

 でも目がよく合うような気がして、見すぎていると気がついた。
 そうなるとフラットな状態に自分を戻すことは難しく、見ないように見ないように、でも見たい見たいと、毎日おかしなことになっている。

 すごく簡単なことを忘れてしまった、今日この頃。
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by fastfoward.koga | 2008-01-28 22:08 | 一日一言

ひっかき傷

 昨日髪を切りに行き、店長とほんとうの自分とは、とふたりで頭を悩ませた。
 先日、会社の飲み会で昨年夏の鉄子話をしたら、イメージが違う、ショックーと言われた。
 リュックを背負うだけでも、ショックらしい。

 自分は自分だけが作るものではない。
 でも、人が見る自分が自分であるとは限らない。

 いちいちそのギャップを埋めようとは思わないけれど、ちょっとひっかかる。
 いや、すごくひっかかる。

 ほんとうの自分ってなによ。
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by fastfoward.koga | 2008-01-26 22:37 | 一日一言

黄色いお月様

 どん、という音とともに、目の前に月見うどんが置かれた。
 どんぶり鉢の真ん中に、ちょい半熟の玉子が浮いている。小夜子は、まるでお月様みたいだと思った。
 テーブルの隅に置かれた七味唐辛子に手を伸ばし、ラベルの「原了郭」という文字を見て、わたしは七味屋本舗のほうがすきやねんとつぶやき、七味を元の位置に戻した。そして、七味は原了郭の黒七味だろうとムキになって言う旦那、いやもう少しすると元旦那になる男のことを思い出していた。
 割り箸を持ち、いただきますと手を合わせ、やわらかい麺をすすった。寒空をマンションから駅まで数十分、大きなスーツケースを押しながら歩いてきたからほんとうは暑いぐらいだったけれど、どんぶり鉢を手にし、おつゆを喉へ流し込むと、手と唇がどれくらい冷えていたかがものさしで測ったようにわかった。
 小夜子はありがたい、と思いながら、どんどん麺をお腹の中へ納めていった。途中、半熟の玉子を割ろうかどうしようか迷い、えいやっと玉子の真ん中に箸を突っ込んだ。透明のだしに黄色いどろっとした液体が流れ出し、その色を見て、ダイニングテーブルの上に置いてきた黄色い封筒みたいやわ、と思った。
 封筒が他になかったわけではない。でも、茶封筒と鮮やかなグリーンと白い封筒と黄色のが抽斗の中にあるのを見たとき、小夜子は迷わず黄色い封筒を手に取った。仕事から帰宅し、この封筒を手に取り中身を確認したあと、またかと苦々しい顔をする旦那の顔が目に浮かぶようだった。
 ダイニングテーブルの上で、昨日区役所でもらってきた離婚届に間違いのないよう丁寧に記入していき、最後に判を押した。片側の欄はまだ空白で、その白さを目に焼きつけ、折り目に従って畳み、封筒へ入れ封を折り返した。その一連の作業を、三度目ながらも小夜子は儀式を執り行うかのように慎重に行った。
 そのあとひとつひとつの部屋(そう多いわけではない)を回り、お風呂とトイレ、そして最後にシンクをチェックして、スーツケースを玄関へ運び出して扉の鍵を閉めた。鍵は一瞬迷ったけれど、儀式、儀式、と言い聞かせ、鍵つきの郵便ポストへ落とした。
 マンションから駅までは下りの坂道なので、小夜子は大きなスーツケースを持って歩くのに苦労し、駅前のうどん屋へ入るころには全身にだるさを感じるくらいだった。店内は、夕飯時と言えば夕飯時のこの時間、サラリーマンがひとりいるだけで、外の賑わいに反し静かなものだった。けれど夕刻のニュースが天井近くの棚に置かれたテレビから流れ、静かすぎるわけではないなと少し安心した。大きなスーツケースが邪魔にならないよう、入口から遠い角のテーブルに腰を落ち着け、小夜子は開いたメニューから肉うどんと迷って月見うどんを選んだ。
 箸でつぶした玉子は、あっという間にだしを濁らせてしまった。あぁぁと思わず声を洩らし、でもつぶす以外に選択肢はあったのか、などと馬鹿馬鹿しい自問自答をしながら、麺を一本も残すことなく月見うどんを平らげた。
 この店に辿り着くまでは、空腹は人を狂わせるわ、と小夜子は思っていた。
 駅へ向かう間は、スーツケースの取っ手を握りしめながら、この先のことを、先と言っても駅に辿り着いてからのことを考え不安になっていた。いや、不安と言うよりは途方に暮れていたと言うべきか。離婚届を区役所に取りに行き、署名捺印をするまでは覚悟を決めた上でのことだったから淡々としていたのに、それを黄色い封筒に入れた途端に、急に現実が自分の元へ大波となって押し寄せてきたような気がしていた。それもこれも、前回、前々回と変わらない。おかしなことに、それを小夜子は理不尽なことのように感じていた。
 スーツケースのガラガラという音は、じっと聴いているととてつもなく怖いものが近づいてくる足音のように聴こえた。これではいけないと、明るくなる歌を歌おうとするのだけれど、こういうときに限って思い浮かぶのは寂しいメロディの曲ばかりで、ぐるぐると頭を巡らせた挙句思いつかず、結局「夜空ノムコウ」を口ずさんだ。初めはきもちが少し下がり、どうしたものかと思ったけれど、サビまで辿り着くとこれもまたいいかもと思えるようになった。ちょうど歌詞がわからなくなったあたりでうどん屋の看板が目に入り、このまま歩いてもまた不安になるし、歌詞を誤魔化すにはちょうどいいと暖簾をくぐった。
 麺を食べ切り、少しおつゆの残ったどんぶり鉢を見つめていると、お下げしますと店員が近づいてきた。早く出ろと言われているのかと少しビクッとしたが、そのすぐあとに湯飲みにお茶を注ぎながら、ごゆっくりと言葉をかけられたので、小夜子はなんとなく安心して湯飲みに手を添えた。
 湯飲みの中のお茶に映る白熱灯の灯りをじっと見つめながら、このあと、この店を出たらどうすればいいのかを考えていた。でも考えても考えてもすべきことが見つからないので、発想の転換だと頭を切り替え、自分ができることを順番に挙げてみることにした。
 わたしは、車の運転はできるし、結婚前は毎日満員電車に乗って人並みのお給料をもらっていたし、上司のセクハラもそれとなくかわしてきたし、生命保険は入ってないけど傷害保険は入っているし、ひとり暮らしをしたこともあるし、アンケートに答えるだけでいいと連れ込まれた部屋からなにも取られずに逃げることもできたし、骨折をして数ヶ月入院したこともあるし、痴漢を警察に突き出したこともある。
 あれもこれも、なんとかやってきたじゃない。いくつもの出来事を振り返り、小夜子はそう自分に言い聞かせていた。お茶を一口飲み、よし大丈夫、と思ったところで、でももしかしたら今まで考えたこともない嫌な目に合うかもしれないという別の思いが頭を過ぎり、浮かせかけた腰をまた元の場所へと戻してしまった。
 旦那と暮らした数年で、わたしはそんなに旦那を頼り、甘えていたのだろうか。確かに結婚して会社は辞めたけれど、短時間のバイトはしていたし、うちの中のことも手を抜かずにやってきた。のほほんと暮らしていたわけではないと思っていたけれど、実はそうではないのだろうか。
 考えても考えても出るのはため息ばかりで、視線まで下がったところで、大きなスーツケースが目に入った。じっと見ているとスーツケースに、マンションを出てここまで歩いてきたしんどさはなんだったのだと言われているような気がして、えいっとイスから立ち上がった。
 六百円を払い、外に出ると、吐き出した息は白く白く伸び消えていった。駅へと続く商店街の通りは家路へ急ぐ人で混み合い、そこをこの大きな荷物を持って逆送するのかと思うと気が重くなった。
 救いを求めるように、小夜子はさっきの玉子のような月を探した。今ここで月が見えたらこの先わたしは大丈夫、と願を懸けたのだ。けれどそんなに都合よく月は見えず、現実はこんなものなのよね、でもさっき思いつけなかった嫌な目がこのくらいなら大丈夫かもと小夜子は思うことにし、とりあえず縁がありそうだと駅前の黄色い看板のビジネスホテルへと歩いて行った。



 ◆お題     「黄色い封筒」 「お月様」 「唐辛子」
 ◆出題者   「書をつま弾く、そして歌う。」 calligraphy_m サマ
 ◆calligraphy_mサマへ
 悩みました。今までで1番長い間、考えました(笑)。
 まだまだわたしの言葉の世界は狭いわーと嘆きつつ、書いてみたので、たぶん数週間後に読み返すと苦笑いするかもしれません。
 が、そこはやはりチャレンジです(笑)。次の1歩のために書きました。これがステップアップのきっかけになるといいなと思っています。

 2度目のご参加、ありがとうございました!
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by fastfoward.koga | 2008-01-26 00:13 | さんご

雨女がゆく ~出雲市 「とんき」

 出雲大社のお参りのあと、少し遅めの昼食をすませると、わたしはすでにその日の目的をすべて終えてしまった。
 どうしようかと思いつつ、足は帰り道へと歩を進めていた。
 せめて最後の楽しみに、行きはバスだったので帰りは電車にしようと思い、一畑電鉄の出雲大社前駅へと向かった。
 小雨の中歩き辿り着いた駅舎は、上部にステンドグラスを施しており、真ん中には大きなストーブが焚かれていた。
 電車が出るまではまだ40分ほどあり、暖をとりながらいつものようにハガキを書いて駅舎の入口にあったポストに投函した。
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 今回は珍しく悪状況が重なり、夜行バスではよく眠れなかった。
 仁万から出雲へ戻る電車でほんのわずかだったけれどコテンと眠り、眠気はさほど感じていなかったけれど、一畑電車で出雲市駅へ戻り、駅前の温泉でひと風呂浴びたら、そのままホテルで眠りたくなってしまった。
 結局欲望に従い、いつもの旅よりもずっと早くチェックインをすませ、2時間ほどホテルでゴロゴロと過ごした。

 18時を過ぎ、夕飯をどうしようかとホテルの周辺をぐるりと回り、1番初めにピンときたとんかつ屋さんのとんきに入った。
 お店の中は落ち着いた店構えに反して心地よい活気があり、大勢いる店員さんが皆てきぱきと動く様は見ていてきもちがよかった。
 まず生ビールを注文し、つきだしで飲んでいると、店員さんが次々と話しかけてくれた。
 旅行ですか? どちらから来られたんですか? とカウンターの向こうの厨房でくるくると回るように動きながら、忙しいのにみんな笑顔を見せてくれた。
 ヒレカツ定食が運ばれ、まずはこれからとヒレカツを一口齧ると、さくっとしていてとてもおいしかった。
 お肉は前歯で簡単に噛み切れるほどやわらかく、添えられてきた付けダレがまたほどよい酸味と甘さで、おいしいおいしいと小さくつぶやいて食べたほどだ。

 ヒレカツをもったいぶりながら食べていると、お店のご主人がサービスですと小鉢に入ったしじみを炊いたものを出してくれた。
 ご主人にもさっきと同じような質問をされ、答えたあと、今日はどこへ行ったのかと尋ねられた。
 出雲大社へお参りに行ってきたと言うと、そのとなりにある歴史博物館へは? と聞かれた。
 そういえばとバスの中から見た建物を思い出し、行ってないんですと言うとご主人はあそこもいいですよと教えてくれた。
 明日は松江へ向かうと話していたわたしに、ご主人は少し残念そうな表情を見せた。
 だからというわけではなかったけれど、わたしはこう返事をした。
「また次の楽しみにとっておきます。」
 その言葉に、ご主人はとてもうれしそうに笑ってくれ、自分の言った言葉ながら、そうこれが旅の醍醐味なのだと思った。

 旅の楽しみは、旅先に少し心残りを置いてゆくこと。
 また今度、と思える旅ほどいいものはない。
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by fastfoward.koga | 2008-01-24 23:20 | 旅行けば

ロングスリーパー

 年明けから、どうも眠くて眠くて仕方ない。
 寝ても寝ても寝ても、満足できないと体の中から声が聴こえる。

 通信教育も、習い事も、「さんご」も、旅の話も、次の旅の準備も、飲み会も、次の恋も、読書も、仕事も。
 みんなみんなやりたいこと、やらなくてはいけないこと、よくよくわかっているのに、睡魔に引き寄せられる。

 眠った分だけ24時間が短く感じる。
 やっぱり損をしているのだろうか。

 でもたとえそうだとしても、この眠気には勝てない。
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by fastfoward.koga | 2008-01-22 22:22 | 一日一言

雨女がゆく ~出雲大社Ⅰ

 昼前に、仁万から出雲へ戻ってきた。
 仁万ではそれほど感じなかったのに、出雲市駅では北風の存在感が圧倒的だった。
 吹きすさぶ風の中、出雲大社行きのバスを待った。

 島根行きを決めたのは、1週間ほど前だった。
 計画していた18きっぷの旅が仕事の段取りがつきそうになく、日程的に短縮せざるを得なくなり、それならと別の行き先をイチから考え直した。
 数日間考えに考え、どうもしっくりくる旅先がないなと思いつつも、最後の望みをかけて本屋の旅本の前に向かった。
 視線で背表紙をなぞり、目に止まったのが出雲・松江の文字だった。

 出雲大社は雨でも参拝客は多く、自分とまわりの人が砂利の上に落とす足音にじっと耳を澄ましていた。
 なにか似た感覚が体の中に湧き上がり、そうだ伊勢神宮にお参りしたときもこんなふうに雨が降っていたとそのときのことを思い出していた。

 長い長い松並木の参道を歩き、冷たい水で手を清めた。
 そこからまたほんの少し進み、拝殿で1度目のお参り。
 そのあとおみくじをひいて、八足門で2度目のお参り。
 2度とも、心静かに手を合わせた。

 そのあと神楽殿に向かう人の流れに着いて行きそうになり、ふと我に返るように本殿の周囲を回っていないなと時計回りに歩き始めた。
 立て札の文字を読み、人と人との間を間合いを取るように歩くスピードを調節をしいていた。
 8割がた回ったところで、雨に濡れないように気をつけながらカバンの中からガイドブックを取り出した。
 本を見ると、書かれていたのは反時計回りだった。
 心の中で失礼いたしました、やり直しやり直しと神さまに謝りながら、もう1度ひとつひとつの社に手を合わせた。
 最後に神楽殿でお参りをし、日本最大と言われる注連縄に願いをこめて10円硬貨を投げ上げた。

 出雲大社のおみくじには、大吉や吉や凶の文字は書かれていない。
 わたしがひいたおみくじに書かれていた訓は、「信仰は祈り深める者のために路を開き、祈りの暮らしなき無信仰はこれを閉ず。」だった。
 この言葉を煮て焼いて、どう噛みしめるか。
 真価が問われているのは、そこなのだなと思った。
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by fastfoward.koga | 2008-01-21 21:48 | 旅行けば

雨女がゆく ~仁万

 早朝、バスは出雲市駅へ到着した。
 外はしっかりと雨が降っていた。けれど、想像していたよりは暖かかった。

 8時前の電車まで、顔を洗ったり、朝食を食べたりしながら時間を過ごし、まずは仁万駅へ向かった。
 目的は、仁摩サンド・ミュージアム砂暦という巨大な砂時計だ。

 開館間もない美術館は静かで、砂の落ちる音がさらさらと聴こえるようだった。
 何度も何度も頭上にある砂暦を見上げ、無心になった。

 砂はなんとすごいのか。
 塊だと大きくのしかかり人を潰してしまうこともできる怖さを持っているくせに、ひと粒ひと粒は小さくそれだけでは存在すらも掴めない。
 どっしりと腰を落ち着けているようで、位置を少し斜めにされれば、逆らうことなくすすすと静かに落ちてゆく。
 強固なのか、儚いのか。強情なのか、従順なのか。

 でもその姿が、しなやかに見えた。
 なれないことは承知で、あんなふうに、と願った。
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by fastfoward.koga | 2008-01-20 13:12 | 旅行けば

生きる

 5時46分、今年も黙祷を捧げ、仕事へ向かった。
 今年1番の寒さ。
 外はまだ真っ暗で、妙にずしんと重さを感じた。
 
 寒さと対峙するように口を一文字に結び、空の色を気にしながらベスパを走らせた。
 数10分走る間に、空はわずかに固さを緩めた。
 山の上の向こうにのしかかる雲の形が少し見えたのだ。

 駅に着き、ホームから東の空を眺める。
 陽の光が、山と雲の隙間から差し始めた。

 なにがあっても。
 生きていかねばと思った。
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by fastfoward.koga | 2008-01-17 21:31 | 一日一言