言霊の幸わう国

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トンネルを抜けて次の扉へ

 まだ澄んだ空気の早朝7時前。
 駅のホームで、読みかけの文庫本を開いた。
 電車が来るまでの数分間さえも、待ちきれなかった。

 続きと結末が気になりつつ、読み急いで1行飛ばしてしまいそうになる自分を宥めた。
 いつもならひと駅停車したあとは睡眠時間に当てるのだけれど、今日はそれもせず読んだ。
 うまい具合に本編とふたつのあとがきを読み終えたところで、降りるべき駅に到着した。

 本を閉じ、カバンにしまう。
 席を立ち、電車を降りて、大勢の人とともに列をなして階段を昇った。
 改札を抜け、地上に出る。
 数段の階段を上がり、外の景色が見えたところで、わずかに頭がくらっとした。

 トンネルを抜けたときのように、まだ白々しさの残る明るさが目に焼きついた。
 そこで、物語の世界から現実に戻らねばならないことに気づいた。
 けれど頭はそう簡単には切り替わらず、信号を渡るまでの間は特にぼんやりしていた。

 帰りの電車に乗るまでに、次の本を調達しておかなくては、と思った。
 駅に併設されているビルに入っている、茶色い木目の大きな本棚のたくさんある本屋のことを考えたら、胸が高鳴った。

 いつでも、新しい世界は扉を開いて待っている。
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by fastfoward.koga | 2008-04-30 20:22 | 一日一言 | Comments(0)

夜風に吹かれて

 ベスパを走らせても、風が心地よい季節になった。
 気づくと手袋もウインドブレーカーもいらなくなり、スウェットの上着でも寒さは感じない。

 まだほんの少し熱の残る体を風に晒しながら、素手でギアチェンジをしていると、熱がすーっと奪われてゆく。
 早起きが続いていて少し眠いけれど、このままずっと走っていたくなった。

 夜風が、心地よい。
 ガソリンも満タンにしたことだし、ひゅんと、このままどこかへ行ってしまいたい。
 もうすっかり、そんなふうに思う季節になったのだ。

 葉桜も気づくとその姿を潜め、その青々しい葉の色には人を圧倒するようながあり、思わず見上げてしまう。
 朝の陽射しも、日に日に強さと眩しさを増してゆく。
 これまた、なんと力強いことか。

 あさってから、カレンダーは新しくなる。
 すきだけど苦手な春は、また今年も4月とともに終わるのだな。
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by fastfoward.koga | 2008-04-29 20:45 | 一日一言 | Comments(0)

ほんとうのわたし

 ときどきこちらへ訪れてくれるkyさんのところで、おもしろいものを教えてもらった。
 有名な「ほぼ日刊イトイ新聞」にある「自分でテソーミ」
 その中の、「ほんとうのわたし編」をやってみると、こんな回答が(↓)。


感受性が鋭く、美しいものやぜいたくを好むあなたは、
人一倍美意識も強く、繊細な気質を持ったロマンチスト。
やや依存心が強く、
不安を感じるとエキセントリックになってしまう性質が
隠れている事もあるので、
他人を疲れさせてしまったり、
だまされてしまわないよう
気をつけましょう。
手や身体を多く使って動く事によって、
より美しく魅力的な人になっていけます。
ものごとの考えかたはバランス感覚に長けた安定派。
まわりの人からの信頼を勝ち得るタイプです。
感情線から判断すると、周囲に対してオープンマインドで、
おっとりと豊かにものごとを受け取る、穏やかな性質。
また、運命線を見てみると、
子どものころから、自分のなかの価値基準や好き嫌いなど
ご自分の個性を、しっかり持っているようですね。
興味のある道をみずから選んできたあなたですから、
自立心が強く、自分の道を自分で切り開いていく
エネルギーに溢れています。
あなた自身の内面については、
自分のなかにある二面性の
バランスがよくとれている人のようです。
裏表のない、正直なタイプ。
いまは、身体も健康で、行動力もみなぎっている状態。
前向きで迷いがないときです。
気になるのは、いろんなことに対して
少しがんばりすぎているのかも。
まわりの人に少し暑苦しい印象をあたえないよう
もう少し気楽にいきましょう。
性格的には、自分というものをしっかり持っていて、
ハキハキとしていて明るく前向き。
もともと生命力に溢れ、まわりに対する影響力も強いので、
スケールの大きな人間性を持っています。
自分自身に対しては、自信をもっているようですから、
責任ある仕事を進めていくことができるでしょう。
リーダーシップを発揮できる人です。
次に、生命線と頭脳線の関係から見ると、
考えて考えて考え抜いてから行動に移す、慎重派。
ミスをすることが少なく、
緻密さ、精密さが求められる仕事に
とても向いている反面、
「優柔不断かも?」という自覚があるのでは?
気をつけたいのは、
こころのなかやあたまのなかが忙しいと、
見えてこないことも、あるということ。
ちょっと深呼吸をしてみることも大事です。
あたまで考えたことや、そのときの感情だけで、
答えを選ばないようにしてみましょう。
いまはまだ、自分らしいところを
自分自身で、認められていない状態なのかもしれませんが、
こころからの幸せやよろこびを感じられるようになったら、
他の人にも、
それを分け与えられるようになってくるでしょう。
最後に、豊かな話術、楽しい雰囲気をもつあなた。
これからも、まわりの人たちを
あたたかく、和ませていくことでしょう!



自分自身としては、この下りに大きく頷きました。
「こころのなかやあたまのなかが忙しいと、
見えてこないことも、あるということ。
ちょっと深呼吸をしてみることも大事です。」

余裕がないときは選択を間違えがちなので、ここ数年、いかにあせらず、せっかちに蓋をして答えを出すかが課題かと・・・。
わたしを知っているそこのあなた!
当たっているかしら?
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by fastfoward.koga | 2008-04-27 21:15 | 一日一言 | Comments(6)

人恋しいなら素直に甘える

 今日は、フロアの電気を全部消して帰って来た。
 
 20時の谷町4丁目。
 時間も位置もビミョーで飲みにも行けず、ぽっかり空いた胸の空白を抱えたまま、いつもの道を帰るしか術はなかった。

 同僚とひとつめの信号で別れ、カツカツと靴音を鳴らしながら、次の信号までに携帯を取り出していた。
 昨日の夜見た占いには、25日の欄にこう書かれていた。

「人恋しいなら素直に甘える」

 昨日は、「ならね、なら」と部屋でひとり声に出して言っていた。
 今日、人恋しくなるとは。
 予想だにせず。
 でも、迷わず電話をした。
 が、繋がったのは留守電。
 これは予想通り。
 やっぱりな、とまた靴音を鳴らして駅へ向かった。

 占いは信じていない、と言ったことがある。
 が、しかし。
 あとで散々おみくじの内容を気にしていることをブログに書いておいて、それはないよなと思った。
 なーって。
 と、そんな話をしたかっただけなのだけれど。

 電車に乗ってからも、しばらくは迷っていた。
 どこか行くところはないかと、考えあぐねていた。
 が、シートに落ち着いたら、これでいいかと思った。

 手には出勤前に立ち寄った本屋で購入した、堀江敏幸の「めぐらし屋」。
 最初の1ページから確かな感触を感じながら、どんどん読み進めていった。
 気づくときもちはすっかり穏やかになり、それはまるで自分が犬になって飼い主に優しく優しく撫でられているようだと思った。
 雑種だけれど、お前は毛並みがいいなあ、とかなんとか言われながら、大きな手で何度も撫でてもらっているような、そんな感じ。
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by fastfoward.koga | 2008-04-25 23:46 | 一日一言 | Comments(0)

一筆書き

 昨日仕事で電話をしたら、相手先の男の子が風邪をひいていた。
 彼はいつもハキハキとしていて、特段なんでもない会話でもこちらを笑顔にしてくれる。
 その子が、鼻声で電話口に出て、時折鼻をずずずと啜りながら応対してくれた。
 話しながら、最後にそのことに触れようと思っていた。
 用件がすんで電話を切ろうとする直前に、思っていた通りにわたしは彼に声をかけた。

「風邪ですか?」
「あ、わかりました?」
「お大事にね。」

 と、電話を切った。
 あれだけ鼻を啜っていたら、誰でも気づくよと彼の言葉に小さく笑った。

 20時で仕事を終えフロアを出るとき、隣の事業部の人にも声をかけた。
「お先に失礼します。」

 ノー残業デーで早々と退社する人が多い中、ひとりだけその人は残業していた。
 少なくとも、あと30分は仕事をするのだろう。
 部分的に電気の消されているオフィスは、人がいなくなると広く感じる。
 なんとなく後ろ髪をひかれながらエレベータに乗り、外に出ると雨が降り始めていた。
 一緒に外に出た上司に断り、わたしは再びエレベーターに乗った。
 入口近くにある傘を取るだけ。
 でもタイミングよく、その人はコピーをとりに自分のデスクを離れ、通路にあるコピーの前に立っていた。
 目が合った。
 でも、今度はなにも言えなかった。

 使えない奴だなと自分を戒め、エレベーターホールに戻った。
 しばらくどうしようかと考えたけれど、結局中には戻らなかった。
 戻ったところで、出なかった言葉はもう搾り出すこともできない。

 そんな寂しさを埋めようとして手にしたものは、また寂しさだった。
 これまた役に立たねーなあ、とひとりごちた。


 肝心なときに、気の利いた言葉を口にできる人に。


 今日は朝から雨だった。
 9時になったらピタッと止まないかと、何度も空を確認した。
 が、そんな都合よくいかず、傘を広げて出かけた。

 空からは細い針のような雨が降り、途中何度も傘の必要性を確認しながら歩いた。
 電車では扉のすぐそばのシートに座り、ここ数日夢中になっている文庫本を読んでいた。
 ちょうど今日の天気と気分に合っていた。
 いくつめかの駅に停車したとき、ふとページから目を逸らし、また元に戻すと、左のページの下の真ん中あたりに小さな黒いシミができていた。
 なんだろうと近づけて、扉の外を見て、細い雨がそこに落ちたのだと理解した。

 久しぶりに足を運んだそのお店は、静かだった。
 淹れてもらったチャイを飲みながら、お店に置かれた本を何冊も引き出しては戻し、引き出しては戻し、しながら読んだ。
 店内では、穏やかな人の話し声。
 本を手元に置きながらも、それだけでは飽き足らず、ぼんやりと本棚の背表紙を眺めていると、先日やっと読み終えた須賀敦子の名があった。
 その出会いに、世界にいくつも張り巡らされている繋がりを見た。


 昨日湧き上がってこなかった言葉は、いつか口にできるかも。
 相手は違うかもしれないけれど、それでもいいや。
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by fastfoward.koga | 2008-04-24 23:48 | 一日一言 | Comments(0)

ショカしょか初夏

 暑い1日だった。
 出かける前に気にしていた上着など、不要な1日だった。
 でも日焼け止めを塗っていないから脱ぐこともできず、我慢して会社まで着て行った。

 昼過ぎから怖ろしくフロアの室温が高くなり、誰かが室温計を確認したら30.5度だった。
 こんなんで仕事できるかーと、叫ぶ声が聞こえた。

 火照った体を引きずって、帰りの電車に乗った。
 外はすでにどっぷり日も暮れ、行きとは違い、上着は手に抱えたまま。
 電車の中で、ベスパに乗るときも上着は着ないと固く心に誓った。

 夜風に吹かれて走ると、熱は奪われていった。
 今はちょうどいい塩梅。

 春はあっという間に、車窓の景色のように後ろへと流れてゆく。
 もうどこかへ行ってしまうようだ。
 目の前には夏の入口。
 一瞬のうちに、初夏。
 なんだろ、その素早さがなんだか甘ずっぱい感じ。
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by fastfoward.koga | 2008-04-22 22:58 | 一日一言 | Comments(6)

ホールド

 天気のいい1日だった。
 電車で出かけようと思っていたのに、外に出たとたん気が変わってベスパを走らせた。
 途中何度も見かけた気温の表示された電子掲示板は、おもしろいくらいどんどん数値を上げていった。
 26度の表示を見たところで、手や頬に感じる風の微妙な温度が懐かしいものを思い出させてくれた。

 日向と日陰で吹く風は違っていた。
 心地よい暖かさと冷たさ。
 空気に色が付いていたら、きっとマーブル模様だっただろう。
 60キロを少し超えた速さの中で、混じりきっていない両方の風は特別な感じがした。

 その風で思い出したのは、こどものころに行ったプールだ。
 汗を吸った洋服を脱いで、水着になって滑り込むように入ったプール。
 ほてった体温がするっと水へ移り、全身が水に馴染むあの感覚。
 体は覚えているのだなと思った。

 
 今日は1本、映画を見た。
 今週で終わるせいか、観客はわたしを含めて7人。
 がらがらの映画館の1番高い位置。
 他の人たちとは下のほうにいたので、ひとりで見ているようだった。

 恐らく、人とは違うツボにはまり感傷的になった。
 今ずっと人知れず抱えている思いがあって、そこをずどーんと射抜いてきたのだ。
 そのシーンを、もう1度見たいと思う。


 先日、封を切ったばかりの使い捨てコンタクトの調子が悪く、仕事の途中で外すことにした。
 メガネも持ち合わせておらず、裸眼で最寄り駅まで帰り、ニアミスで行ってしまったバスの背中を見送った。
 徐々に日が暮れ始めた駅前のバス停で、スピードを落として走る車のテイルランプを見ていた。
 いつもならなんてことのない光景。
 でも裸眼のわたしには、テイルランプが小さな花火のように見えた。
 いつもよりは、3倍ほど大きく見える光。
 大きな輪を描き、だんだん離れて消えていった。


 思うこと、感じることは、いくつもいくつもある。
 でも手に余るものは、ひとつもない。
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by fastfoward.koga | 2008-04-21 19:52 | 一日一言 | Comments(0)

風が吹き、浚う

 昼食をとったあとあたりから、首筋、こめかみ、目の奥、背中にだるさを感じていた。
 いつも微熱か風邪の引き始めかと、勘違いするアレだ。
 バスを待つ間も、首筋がすーすーしていた。

 そういうのが、苦手だ。
 じっとそれを我慢していると、爆発しそうになる。

 寒いのはいい。
 でも肌寒いのはいや。

 肌寒さは、心細さを連れてくる。
 すーっと風が吹き抜けるときに、なにかが浚われるのだ。
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by fastfoward.koga | 2008-04-18 22:27 | 一日一言 | Comments(0)

さっぱり

 きもちがいいくらい、雨が降る。
 きもちよく、前髪を短く切った。
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by fastfoward.koga | 2008-04-17 22:21 | 一日一言 | Comments(0)

朝の散歩

 毎年のことなのだけれど、4月になると電車が混む。
 そしてゴールデンウィーク明けには、混み具合も少しましになる。
 わたしが朝からの出勤の日に乗る電車は学生も多く、例年の混み具合は容易に予想できた。
 今年はそれを先読みして、今月だけはいつもより1本早い電車に乗ろうと決めた。

 起床は5時5分。
 そのあと1時間ほどで支度をし、6時24分の電車に乗れるようにベスパで駅へ向かう。
 途中1度乗換えをし、電車を降りるのが7時21分。
 そこからもう1駅地下鉄に乗るのが会社に申請している通勤ルートなのだけれど、10分強歩けば会社に着くので、どんなにどしゃぶりの雨でも地下鉄には乗らず歩いている。
 そうすると、会社には7時30分過ぎには到着してしまう。

 始業時間は8時30分。
 他はみな9時始まりなので、フロアはまだシンとしている。
 そういう職場もすきだけれど、そればかりもな、と思い、歩く距離を調節することにした。
 ひとつ先の駅まで行って歩いたり、遠回りしたり、寄り道したり。

 まだ波に乗り切れていないオフィス街をすたすた歩くのは、新鮮だ。
 決して早すぎるという時間ではない7時30分。
 通りにはすでに本調子の人と、そうでない人が入りまじっていて、どちらにも属していない顔をしてわたしはその間をすり抜けてゆく。
 まだ閉まっているシャッターの知らん顔ぶりも、ほどよい距離感があってほっとする。

 わたしは、目的がないとぶらっと出かけたりできない。
 ちょっと散歩にと思っても、目的地を決めたあと、折り返して最後のゴールが頭に描けないと歩いていても嘘くさく、そわそわしてしまうのだ。
 散歩を演じていると言えばいいだろうか。

 なので、最近の日課はちょうどいい朝の散歩だ。
 時間に余裕もあり、目的地も決まっていて、まだ歩いたことのない通りはたくさんある。
 これほどの好条件は、そうなかなかない。

 そんなことから、2駅手前から歩いてみようかと思っている、と仕事の合間に話したら、会社の子に言われた。
「疲れて、朝から仕事ができないなんてことにならないでくださいね。」

 確かに。
 目的地は会社で、目的は仕事をすることだった。
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by fastfoward.koga | 2008-04-16 23:59 | 一日一言 | Comments(2)