言霊の幸わう国

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鹿児島スリーデイズシックスストーリーズ ―プラットホーム

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 鹿児島空港に到着。
 出迎えてくれたのは、昨年の京都音楽博覧会以来のお久しぶりのハナウタコさん
 今回の旅は、ハナウタコさんにおんぶにだっこで鹿児島案内をお願いしたのだ。

 まずは鹿児島スリーデイズの1日目の予定を立てるべく、2階の喫茶へ。
 でも久しぶりに会って、あーでもないこーでもないと関係のない話をする。
 そして目の前の飲み物があと少しになったところで、やっと話は本題に。
 ガイドブックをいくつも捲って、電車ずきのわたしにとハナウタコさんが提案してくれたのは、鹿児島空港からほど近いJR肥薩線の嘉例川駅。
 そこには、100年以上の歴史を持つ駅舎のあるのだ。
 かつて暑い暑い夏の日、熊本から鹿児島まで1日中電車に乗り通過した駅のひとつ。

 駅というのは不思議な場所だ。
 電車の中から見るのと、ホームで電車を待つのと、乗らずに見送るのとでは違う顔を見せる。
 それを初めて知った。

 期待薄だったのに運よく買えた人気の駅弁「かれい川」。
 下手でも思わず写真を撮りたくなる古い駅舎。
 中には歴代の駅名標や、どこからどう見ても正体不明の赤い物体。
 驚くほどいい出来の、肥薩線全線開通100周年で作られたフリップブック(=パラパラ写真)。
 きもちよく伸びるホームに線路に、青い空。
 偶然やって来た真っ黒なボディのかっこいい特急「はやとの風」。

 駅弁を売るおじさんの前を何度も何度も行き来して、恥ずかしくなるくらいそこにいた。
 お弁当も、駅のそばにあった公園の東屋で30分以上かけて食べた。
 その間に、1両、2両の普通列車が上りも下りも通り過ぎた。
 空には、鹿児島空港に発着する飛行機が小さく見えた。

 どこにいるのかわからなくなるくらい、その時間は長く心地よく。
 数分停車していた「はやとの風」が出発するとき、車掌さんはホームに立ちんぼのわたしたちに手を振ってくれた。
 その背中を見送りながら、すでに旅の途中だというのにそれでもどこかへ浚われたいと思った。
 贅沢だとはわかりつつ、望みは果てない。
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by fastfoward.koga | 2010-04-30 23:41 | 旅行けば

書き始めは

 今日は書くための1日だと、昨日の夜に思っていたのに。
 結局、自分でも驚くほどあった読みかけの本を読むだけに徹した。

 読みたい本に、浸りたい時間。
 それが熟成されるのを待っていると、書くまで辿りつけないのだけれど。

 いつもながら、書き出すまでが長い。
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by fastfoward.koga | 2010-04-29 22:36 | 一日一言

鹿児島スリーデイズシックスストーリーズ ―機上の人

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 朝4時半に起きて支度をして、空港へ行って、ロビーで朝食のベーグルを食べて、飛行機に乗って、離陸してしばらくしたとき、飛行機に乗るのは久しぶりだと思った。
 小さな窓から見える景色は、本城直季氏の『small planet』みたいで、西へと向う景色をほんの少し楽しんだあと、はたと、そういえば昨年の12月に行った香港と沖縄も飛行機だったと思い出した。
 たぶんあのときは関空発着で、伊丹空港から旅立つのが久しぶりだったからそう勘違いしたのだろう。

 機内では、読みかけのガイドブックを読んでいた。
 ときどきキリのいいところでページから目を離し、外を見る。
 もうどのあたりを飛んでいるかわからない。
 少し雲がかかり真下の景色は窺えないけれど、真横には並走するようにちぎれた雲が浮かんでいた。
 怖いぐらい透き通った青い空に、柔らかそうに見えない妙に立体感のあるごわごわした雲。
 それは岩石や塵が浮かぶ宇宙さながらの景色で、たぶん宇宙飛行士の山崎直子さんのニュースが刷り込まれていたからそんなことをイメージしたのだ。
 いつもならそんな壮大なものは思いつかない。
 でも、この空も宇宙に繋がっているのだと考えると、あながちおかしくはないのか。
 そう納得して、射し込む陽射しが寝ている隣の人に当たらないように、ブラインドを少し下げガイドブックに視線を戻した。

 手にしたガイドブックはできるだけ事前に目を通しておきたかったけれど、「間もなく着陸準備に入ります」と機内アナウンスが流れたあたりで、数分目を閉じた。
 ほんの僅かでもそうしたことで、靄のかかっていた頭はスッキリした。

 また外が気になって、再び窓から下を覗き込む。
 山の稜線がきれいに見え、やっぱり今日の景色は『small planet』みたいだと思う。
 高度がだんだん下がってきたあたりで、桜島が見えたことに気づいた。
 その姿に見惚れていると隣の席の男の子に声をかけられ、いくつか言葉を交わしたあとに「あれが桜島ですよ」と言われた。
 知っているとも言うわけにいかず、あぁとかはぁとかいい加減な返しをした。

 飛行機は滑らかに飛び立ち、滑らかに下り立つ。
 ここまで大げさなことはなにひとつなく、淡々と時間が過ぎ、自分も移動した。
 旅慣れて旅の高揚感がないのではない、とそこは確信的に感じている。
 でも目的地に辿り着いたそのときも、まだいつもと違う旅の感覚を体の中に感じていた。

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by fastfoward.koga | 2010-04-29 11:50 | 旅行けば

旅帰りに沁みる雨

 鹿児島3デイズをどんなふうに書こうか。
 考えながら、スプリングコートの裾が傘からはみ出ないように押さえる。
 駅に着くまでに、パンプスの中でわずかに足が動くたびにぷすぷすと水気を含んだ音がした。
 旅気分が抜けきらず薄着で出かけた肌に、あっという間に冷たい雨は沁みこむ。
 うちに帰ってもストーブはついておらず、自分の部屋の石油ファンヒーターはすぐに給油ランプが点灯した。

 今日は、お風呂の温もりが消えないうちに、おやすみなさい。
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by fastfoward.koga | 2010-04-27 21:57 | 一日一言

鯉のぼり

 今日は会議のために、いつもと違う電車に乗った。
 少し早めにうちを出て、JRはのんびり普通電車で。
 昨日届いたガイドブックを読みつつ、2駅だけ目を瞑ったりして目的地へ向った。

 帰りは、みな向かいのホームに立つ中ひとり電車を待つ。
 やってきた普通電車が運よく京都行きで、2駅目からシートに腰を掛けまたのんびりガイドブックを広げた。
 あまりに熱心に読みすぎ、ガイドブックに感情移入しすぎていると、はたと気づいて視線を上げる。
 すると、駅に近づき減速する電車の外には、いくつもの鯉のぼりが。

 何本も支柱が立てられ、1本の支柱には上から大きい順に5匹ずつ。
 風の強い今日は、みなしぼむことなく鯉は泳ぐ。
 そよそよよりは力強く、ばさばさと。
 
 ええなあ。
 泳ぐようにそよぎ、飛ぶ。

 わたしも、ガイドブック片手に旅へ。
 3日ほど留守にしまっす。うっふふ~。
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by fastfoward.koga | 2010-04-23 20:53 | 一日一言

 お給料日。
 銀行から下ろしたてのお給料を財布に、本屋へ出かける。
 今日は、ちょっとだけちょっとだけ、と自分に甘くし(嘘、いつもだ)、棚の間をゆっくり見て回る。
 いっちゃえいっちゃえ、とほんとうはハードカバーをばんばんばんとレジに積みたいところだけれど、1ヶ月という時間の長さを考えて本棚の前でもじもじする。
 遠慮のないときなら、気になった本は手にしてぺらぺらページを捲るってみる。
 でも今日は手を出す回数を減らし、控えめに。
 雑誌1冊と、文庫本2冊で、手を打った。

 買ってきた雑誌は、数日前立ち読みして気になっていた『BRUTUS』。
 今回の特集は「真似のできない仕事術2」で、最近特に仕事熱心なわけでもないくせに買ってみた。
 お目当ては特集に登場していた、漫画家浅野いにお。
 へー、こんな顔してるんだと、1度見たあとも気になっていたのだ。

 うちに帰ってから、さっそく浅野いにおのページを開く。
 もう1度顔をまじまじと見、ページを捲って衝撃。
 マンガを書いている姿を右後方から撮った写真に写っていた手の綺麗なこと!
 指が細く長く、まさにわたしこのみの手(そういえば、昔手の綺麗な人がすきだと言ったら、「五木ひろしの手が綺麗」と教えられ、ドン引きしたことがある。チョー余談)。
 そしてやはり働く手というのが、いいものだと思わせるのだろう。

 そこで、ふと思い出した石川啄木の歌。

「働けど 働けど わが暮らし 楽にならざり じっと手を見る」

 わたしもしっかり働きますか。
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by fastfoward.koga | 2010-04-20 20:29 | 一日一言

文芸的な、余りに文芸的な日

 金曜日。
 待ちに待った『1Q84 BOOK3』の発売日。
 くさくさするミーティングも、じとっとする見合い話も脇によけ、22時前から読み始める。
 いつもより丁寧に文字を追うよう心がけ、さすがに今晩で読みきれないなとお風呂に入り、日付が変わったころ、一旦本を閉じた。

 土曜日。
 続きが気になりながらも、時間はあると、出かける支度。
 いくつも課題に手をつけようと思いながらも、材料が揃わず書き出せなかったので、今日は大学の図書館へ。
 館内は思ったほど人はおらず、真上でする工事の音が余計に響いた。
 それでも、そこは心地よい。
 初めは久しぶりの訪問に気分よくしていたものの、目当ての文献を思うように見つけられず、怖ろしく要領悪く動き回った。
 1時間ほどしてトイレに行こうとカバンだけ持って外に出て、時計を見ると13時。
 のんびりしていると学食が終わってしまう~と、そのまま昼食。
 帰ってくると、冬物のグリーンのコートがおとなしくイスにかかって待っていた。

 いくつか参考文献を探そうとメモを持参していったけれど、結局借りたのは谷崎潤一郎と芥川龍之介関連のものだけ。
 一九二七年(昭和二年)に『改造』に掲載された「話のない小説」論争について書くレポートのためなのだが、卒論のことなど考え出したら横道にそれてしまい、頭が収集がつかないと数冊借りてきた。
 小説に「話(の筋)」は必要か否か。
 そんなことを考えているときに、「物語」にこだわる村上春樹を読むとはなんの因果か、と帰ってきて再び『BOOK3』を開いた。

 だいたいにおいて本を読んでも集中力がなく、じいっとして読んでられないのが常なのに、今日はあまり姿勢を変えたりせず読み進められた。
 半分くらい読んだころだろうか、ふと「牛河」に感情移入していることに驚いた。
 なぜゆえ「牛河」。されど「牛河」。
『BOOK3』では「牛河」がいればこそ、と驚きはそっと胸にしまい、立ち止まらずに文字を追った。
 
 音楽も鳴らさず、もちろんテレビもつけず、部屋はシンとしている。
 遠くで早寝したチチのいびきが聞こえ、その音を無意識に排除すると、今度は雨が降っている音が聞こえた。
 実際にはそれは空耳で、窓を開けて確認したが、雨など一滴も降っていなかった。
 時計の秒針と、川沿いの木々の葉が風に揺られている音が重なってそう聞こえたようだ。
 
 ときどき水分補給しながら、4時間と少しで読み終わった。
 いつもよりは遅いかもしれない。
 終盤、物語の波に飲まれそうになり、怖くて本をクッションの上において手を離して読んだ。
 どんなエンディングが待っているのかドキドキしながらページを捲っている最中、ありえないと1度視線を上げた。
 話の展開についてではなく、この物語を読んでいる今の自分の状況がこの世のものとは思えなかった。

 なんという物語に、なんという文芸の世界に、足を踏み込んでしまったのか。
 ひとり目の前のごちゃごちゃした自分の部屋という現実の世界を見ながらも、頭はどこか違うところへ飛んでいってしまった。
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by fastfoward.koga | 2010-04-18 00:23 | 一日一言

爪を噛む

 周囲から卑しいと思われたくないし、自分を卑しいと思いたくない。
 そういうきもちが強すぎて、ほしいものがほしいと言えないことがある。
 ほんとうにほしいと思っているときほど、なんでもないような顔をしてしまう。
 でもそれこそが、卑しい。

 新しいなにかに出会うと、新鮮さから飛びつきたくなる。
 その飛びつきかたを省みて、自分でまるで馴染んだものに価値がないみたいじゃないかと声を上げる。
 でも生活にマンネリはつきもので、新しいものに心が惹かれても咎めるようなことじゃない。
 ただ加減が難しくて、やりすぎても遠慮しすぎても、そこに自分の卑しさを見る。

 喜怒哀楽の感情を波が引くようにパッと出して消してしまう。
 もしくは、川の流れのように穏やかな気質を持つ。
 どちらにもなれなくて、日々の小さなイライラに窒息しそうになる。

 人当たりがいいふうに装って、実はお腹の中では黒々。
 固定概念や規則、色メガネ、疑心暗鬼の詰まった鍋がぐつぐつ煮えている。
 もっとゆったりした、許せる人間になりたいと思う。
 その一方で、自分に許し続けるだけの器がないことに肩を落とし、それ以上のものになろうとはしない。

 そんなことをぐるぐる考えていたら、気づくと右手の爪を唇の上にのせていた。
 あとひと息で、噛みしめてしいそうだった。
 
 素直になれない自分は、この上なく下卑ている。 
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by fastfoward.koga | 2010-04-15 21:05 | 一日一言

最後の桜

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 今日から、大阪造幣局の桜の通り抜けが始まった。
 造幣局と言えば、会社帰りに立ち寄れる近さ。
 行かない? と会社の友人に誘われたので、久しぶりに行ってみるかと寄り道してきた。

 今晩も花冷え。
 前日から友人とは暖かい格好で行こうねとメールで言い合っていたけれど、川のそばなので想像以上の寒さだった。
 分厚い毛糸のマフラーに手袋が恋しいほどの、冷たい風。
 それでも造幣局の中に入ると、驚くほどたくさんの種類の桜が花を開いて待っていた。

 今年はほんとうによく桜を眺めた。
 遠くに近くに、それこそ数年分見たんじゃないかと思う。
 でもさすがに、今年は今日が最後だろう。
 
 来年もまた桜が見られるなら。
 それはそれは、幸せなこと。
 同じ木の桜に巡り会えたら、そっと手を添えて感謝しよう。
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by fastfoward.koga | 2010-04-14 22:27 | 一日一言

雨に濡れる

 花が散り、葉桜になると、いつも目をそらす。
 枝から花が姿を消し緑の葉でいっぱいになるとその時期も終わり、葉の青さに目を細めるのだけれど、毎年毎年その過程を直視できない。
 それでも今日は、傘をさして会社の近くの公園を歩いていたとき、視線をまっすぐにして捉えたピンクと緑の二層の桜の姿がいやではなかった。
 歩道に置かれた放置自転車をよけるために下を向くと、足元には散って濡れた花びらが。

 短く細いレッドカーペット。
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by fastfoward.koga | 2010-04-12 21:01 | 一日一言