言霊の幸わう国

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これを後悔と呼ぶのか

 明日付けの人事異動が多く、今日はあちこちで挨拶と引っ越しの準備。
 関係ないわたしは、前日から引きずったシステムトラブルで午前中は手を取られ、そのままの勢いで1日が終わった。
 赴任先が遠い人が、午後からひとりふたりと大きめのカバンを手に去ってゆく。
 しんみりしないように、お礼を言って送り出した。
 夕べ、眠りにつく少し前、明日はどんなきもちになるのだろうと考えたり、ドラマのような出来事が起こらないかと妄想したりしていた。
 でも現実は伝えたいことも伝えられないまま、お別れの時間がやってきた。
 なにもできないまま会社を出ることになるなとためらう反面、声をかける勇気のほうがもっとないからと、なんにもないような顔をしてエレベーターに乗った。
 会社の前の交差点で信号が青になるのを待つ間、駅までの道のり、電車に乗ってから、自分のきもちが不思議と後ろ髪ひかれていないことに気がついた。
 ああそうか、自分は勇気の出せない自分でいいと思ってしまったんだなあと横断歩道を渡った。
 でもうちに帰ってベッドにごろんとなって、自分の感情を持て余している、と心の中で感情が言葉に自動変換された。
 バカばっかりが出ているTV番組やかみ合っていない両親の会話にイラッとし、気分を変えてくれるなにかを求めて音楽や雑誌や本を手にする前に頭の中に思い巡らせて、そんなところに本質があるんじゃないということを数10分経ってからやっと認める気になった。
 このままふてくされて寝てしまおうかとも思ったけれど、こういうことこそ書いておかなくっちゃいけないんじゃないかと起き上がり、今書いている。
 バカも残せば、あとで役に立つかもしれないし。
 こうしてあと数時間でカレンダーは新しいページになり、2010年という1年は折り返し地点を通過する。
 ツーンとする感情は、明日に持ち越しなどせず、ここにおいてゆきたいのだけれど。
 いつか、もしかしたら数日くらいで、6月の終わりはそんなことを思っていたなと思い出すかもしれない。
 そのくらいの思いだからなんでもないような顔をして帰ってきたという部分も、意気地なしなだけじゃなく確かにあるのだ。
 でもこの感情を思い出したとき、瞼の裏に立ち姿が現れて、頬杖でもついてふふふと苦い笑いを洩らすだろう。
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by fastfoward.koga | 2010-06-30 20:32 | 一日一言

晴れ間見え

 予報を覆す陽射しの元、見かけた鹿の模様も若草山の緑の色も、みな鮮やかだった。
 出かけるときは日傘が邪魔になるかと迷ったけれど、持って行っていてよかった。

 久しぶりにランチでもどう? と以前の職場の友人から誘いを受け、お互いに休みをとって奈良で待ち合わせをした。
 早いもので、奈良へ毎日通っていたあの日々ももう4年前。
 定期券がなくなると足が遠のいていたから、京都で会う? と聞かれたけれど、奈良にしましょうと返事をした。
 だから道中は、ずっと覚えのあるお店や看板を確認していた。

 12時に待ち合わせをして、近鉄奈良駅近くで別れるまで、ずっと仕事の話。
 職場の中では言いづらいことも、うんうんわかるーとお互いに聞けるから、お昼を食べても、散策しながらも、お茶をしてても、ずっと話をしていた。
 話題は尽きないのだけれど、それでも、夕方にはふたりともがすっきした顔でまたね、と言えた。

 休みがないほど忙しく働いていたわけではないし、ライブにいそいそ出かけてゆけるだけの時間の余裕はあった。
 でも土日だけではどうにもこうにも消化できないものをお腹に抱え、日曜の夜になると上司の顔を思い浮かべては、また1週間顔を合わせなくてはいけないのかと考えて億劫になっていた。
 レポートも課題もきもちが乗らなくて手につかないままで、そういう状態を見つめれば見つめるほど自分がいやになり、鬱々もした。
 わたしは贅沢な状況で悶々としてるのかな、なんて。

 それが今日、久しぶりに丸1日休みをもらって平日の街に出かけたら、きもちが伸びをするようにすーっとした。
 ただ友人と話をし合うだけじゃなく、猿沢池や奈良公園のあたりを散歩したのがよかった気がする。
 汗をだらだらかきながらも、梅雨の晴れ間、目に映る鮮やかな緑は新鮮だった。
 奈良公園の鹿の匂いや、気をつけないと踏んづけるフンさえも微笑ましくて、芝生の上で休む鹿の首に抱きついてぎゅーっとしたくなった。

 最近は送別会シーズンに恒例化しつつある胃痛も今日はなかったし、思わず休んだなーと伸びをしたくなるほど休みらしい休みを過ごせた。
 今晩は、明日仕事かと思ったりせず、ぐっすり眠れそうな気がする。
 これで、心の平穏が取り戻せるかなあ。
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by fastfoward.koga | 2010-06-28 20:48 | 一日一言

スマイルズ

 今月はライブレポをたくさん書いたので、検索キーワードもアーティスト名や、プラスセットリストというのがぐっと増えた。
 アクセスだけで読んだのか読んでないのかは定かではないけれど、共有できた人や思いがあったのかなと思ったりする蒸し暑い6月の夜。

 19日のandymoriでわたしのライブ強化月間は終了したものの、金曜日の夜、小沢健二の「ひふみよツアー」が福岡で終わりを迎え、そこでほんとうに宴が終了したと感じた。
 そうして今日、改めて「ひふみよネット」にアクセスしてみると、六月二六日付けで彼の言葉がアップされていた。
 タイトルは「頬に笑みをたたえて」

 最後の最後まで、泣かされる。
 でも彼が日本列島を飛び立つように、わたしも宴が終わったので次へ。

 7月は旅の季節。
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by fastfoward.koga | 2010-06-27 22:30 | 一日一言

いろいろありまして

 見合い話があった。
 いろいろ考えてとりあえず会ってみようと思ったものの、いろいろあって結局会う前にお断りした。

 あまり深く考えないように日常生活をしていたつもりが、話がポシャった瞬間、一気にきもちが晴れやかになったのがわかりやすすぎるくらいわかった。
 もやもやしていた思いが、ふっとひと吹き。
 朝、川からの風を受けながら、清々しいきもちになった。

 なにをしていて、どこに住んでいるかを聞いていただけれど、いろいろ想像してしんどくなった。
 よくも悪くも、もしかしたらというきもちは、久々に思い出したが、しんどいものだった。
 
 でも暗中模索したおかげで、普段は認めたくないと見ないようにしていた自分が逆に見えた。
 譲れないものや、大切にしたいものが、なにかもわかった。
 自分の器の小ささや、甘さも痛感した。

 ハハに「自力で見つけてください」と言われたが、未だ見つからなくとも、そのほうがずっといいと思った。
 まだまだ小賢しくつまらないプライドを振りかざしているけれど、このままでゆこうと思う。

 モヤモヤしてなにも手に付かず、書けなくなるのはやなんだもーん。
 書けないのは、ほんまつらい。
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by fastfoward.koga | 2010-06-23 21:26 | 一日一言

生きる奇跡 <後編> 鳴り続ける音楽

 朝目が覚めても、頭の中と自分のまわりには前日の余韻が残っていた。
 できることなら、そのままじいっとそれを感じていたかったけれど、それでも出かけていった。
 今日はライブ強化月間最後の、心斎橋クラブクアトロでのandymoriのライブ。
 電車に揺られながら、昨日の今日でどんなきもちになるのかと、自分でも興味があった。

 会場は、土曜日ということもありあっという間に満員になった。
 andymoriのファンなのか、対バンの「のあのわ」のファンなのか。考えなくても、判別はすぐついた。
 始まる前から、空調は効いているというのに、その熱気で首筋にうっすら汗がにじんだ。
 そばにいるのは、andymoriのTシャツやタオルを身につけた10代、20代前半の学生らしき若者たち。
 とにかく、今すぐ、じたばたとはじけたいとうずうずしているのが見て取れた。
 18時過ぎに、対バンののあのわがステージに登場。
 会場のクアトロの中に入っても、まだ昨日の余韻から覚めていないわたしは、失礼ながら照明の当たるステージに別のものを見ていた。
 そんなんだから、もちろん曲は頭に入ってこない。
 ステージを見ていてもついつい目をそらし、目障りにならないように周囲を窺っていると、斜め前には曲に合わせて歌詞を口ずさんでいる女の子。
 両手を合わせ、その指先をあご下に当てている。
 まっすぐステージを見ているその隣では、彼氏がときどきその子の顔を覗き込んでいた。
 意識の半分くらいまだ昨日に引っ張られていたけれど、その様子がとても微笑ましかった。

 開演から1時間20分、andymoriが登場。
 わたしは昨日の疲労感を引きずっていたから、今日も修行僧のようなきもちになってじっと待っていたくらいなのに、ステージに3人が現れると磁石に引き付けられたように、若者たちはどっと中央前列に詰め寄る。
 そして第一音が鳴ると、我慢できないとばかりに地団駄踏んで上に上にと手を伸ばした。
 1曲目は『CITY LIGTHS』だったろうか。
 少し先走る壮平のボーカルもギターに、ひやりとしたけれど、あとの『1984』を聴いたらついつい大目に見てしまう。
 ひと月ほど聴いていなかったけれど、やっぱりいいと思った。
 そのあとは、テンポの速い曲が続々。
『クレイジークライマー』や『FOLLOW ME』では、フロアの若者がみな小刻みに跳びはねている。
 まるでそうでもしないと電池が切れてしまうかのように。
 床はうねるように、揺れた。
 ステージでも、メンバー3人が内に抱えきれないものを外へ外へと発散しているみたいに見えた。
 初期衝動。
 みな、お腹の中にマグマがあるんだろう。
 それを少し後ろで眺めていると、その背中に、生きて歳を重ねるのはいいもんだよと語りかけたくなった。
 生きていれば、すきな音楽を鳴らし続けられる。踊っていられる。
 もしかしたら、今聴いているこの曲よりもっとすきになる曲があるかもしれない。
 生きろよー、と無性に伝えたかった。
 ラストの『SAWADEECLAP YOUR HANDS』では、会場中が熱に包まれて、だるいはずの体がふわっと浮きそうな高揚感。
 ライブの完成度が高いとはまだまだ言いがたいけれど、既存のものさしでは測れないような「押し」がある。
 あれはいったいなんなんだろう。
 その正体は、未だ掴めていない。

 アンコールでは、のあのわとのメンバーと一緒に井上陽水の『夢の中で』を演奏しライブは終了したのだけれど、ワンマンでなかった分物足りなさを感じた客席は、客電が付いてもまだ次のアンコールを求めていた。
 ステージでは着々とスタッフが後片付けを進めている。
 でも、拍手は止まない。
 誰もがためらわず手を叩き続いていると、ステージではなく楽屋に続く入口から壮平がひとりひょっこり現れた。
 鳴り止まない拍手に応えようとしたのだろう。
 お客さんの中に入っていこうとし、スタッフに制止されていた。
 離れたところから見ているからなにを言い合っているのかわからないけれど、何度かスタッフにやんわり制止され、壮平はやだよ、いいじゃんみたいな動きをし、でも結局ありがとうと手を合わせたあと、手を振りながら扉の向こうに消えていった。
 拍手が、音が鳴り止まなければなにかある。
 生きていれば、なにか起こる。訪れる。

 帰りの電車は、すでに日本対オランダ戦の中継が始まっていたせいか、思った以上に空いていた。
 京阪のダブルデッカーの2階に乗り、いつもより高い視線で窓の外を眺める。
 流れる灯りを目に映し、昨日から今日の繋がりについて考えた。
 きっと音楽は、輪っかなのだろう。
 誰かが鳴らした音が誰かの耳に届き、その誰かがまた別の音を鳴らす。
 合わせずともそれは音楽になり、時間を越えてどこかに繋がってゆく。
 今回はライブのたびに、小さな部屋で予習復習に勤しんだ。
 でもすべてを見終え、再びCDプレイヤーに収めたのは、『ファンファーレと熱狂』。
 音が鳴り出したら、ほっとした。
 ただいま、みたいなきもちになった。
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by fastfoward.koga | 2010-06-21 21:26 | 一日一言

生きる奇跡 <前編> 停電の夜

 たいていは、ライブを見ているときに感じたことを頭の中で言葉に置き換える作業をしているものなのだが。
 会場内のすべての照明が消され、音が鳴り、彼の声が聞こえた時点で、今日はもういいやと思った。
 だから今もどこから書き出していいものか、筆は迷ってばかりなのだけれど、とりあえずキーボードを叩く手は止まらないのでこのまま進めることにしよう。

 真っ暗な中その暗さに目が泳いでしまい、とりあえず今最大限活かせる五感は聴覚しかないと、耳をすました。
 すでに記憶が定かでないけれど、音のあとか、いや、聴こえたのはいきなり彼、小沢健二の声だったろうか。
 入場口で、開演後10分間入場できないとアナウンスしていた理由をぐるぐる考えながら、久しぶりに聴くその声に思わず両手を口元を覆った。
 どうしてこういうときに手を口元にもってきてしまうのか、我ながらいつも不思議で仕方ない。
 理由は未だにわからないけれど、とにかく今回も同じポーズをとった。
 ステージが照明のもとに現れるまで、いったいどのくらいの時間がかかっていただろう。
 長い長いニューヨークの大停電の日の朗読が終わるまで、会場中がじいっと彼の声に耳を傾けていた。
 暗闇の中で、みな体験していない大停電を想像していたのだ。
 そうしてじらすだけじらし、白い衣装に身を包んだ豪華メンバーとともにひとりラフな格好で彼が現れたとき、丸くて大きな空気が客席から立ち上った。
 前日に「ひふみよネット」を見て、あっもしかしたら明日わたし泣くかも、と初めて思った。
 前夜は、ふとんに入って目を閉じると、遠足の前日になっている自分を発見した。
 そして、泣くかもと思ったものの、そのときほんとうに泣けてきたことに驚いた。
 右目の目頭から、じわっと涙が溢れた。
 えー、わたしそんなにすきやったっけえと突っ込みながら、小さすぎて表情もわからないその人に一生懸命目をこらした。
 その日、わたしは会場の後ろから3列目のはじっこのほうにいた。
 事前に席を確認していたからわかっていたけれど、事実を目の当たりにして、ステージのあまりの遠さにくらくらした。
 ステージまでは100メートルくらいありそう、と思ったところで振り向き、後ろにある席の数を数えかけ、中にいられるだけ幸せだと考えようと思い直した。
 どしゃぶりの雨が降る中、ダフ屋のおっちゃんの他に、外には「チケットを譲ってください」と書いた紙を持っている人が何人かいた。
 そのうちのひとり、とてもかわいい女の子とわたしは目を合わすことができなかった。
 かける言葉なんて持っていなかったのだから。
 事実、本編約2時間半、アンコールを含めると3時間ほどのその時間をそこで過ごすことができたのは、とても幸せなことだった。
 今回のライブは『LIFE』の曲を中心に、という情報が事前に流れていた。
 だから、どちらかと言うと、と言うまでもなく確実に『犬』派の自分としては、『犬』の曲はまったくしないと思い込んでいた。
 それが、ふたを開けたらアレンジが変わっているものの、『天気読み』も『ローラースケート・パーク』もやってくれた。
 そして、絶対絶対絶対ないと思っていた『天使たちのシーン』までもが。
 あの曲を聴いて、しかも生でこのタイミングで聴いて普通でいられるわけがない。
 今度も右目から、今度はつつつと涙が伝った。
 よくハナウタで歌っていたところでは、頭の中でなにかがぐるんと渦を巻いた。
「愛すべき生まれて育ってくサークル
 気まぐれにその大きな手で触れるよ
 長い夜をつらぬき回ってくサークル
 君や僕をつないでる緩やかな止まらないルール
(中略)
 神様を信じる強さを僕に 生きることをあきらめてしまわぬように
 にぎやかな場所でかかりつづける音楽に 僕はずっと耳を傾けている」

 今までだって、何度も歌詞カードを見ては、口ずさんでは、その言葉の意味を噛みしめてきたというのに、そのとき、急に目の前の扉が開かれたように新しいものが見えた。
 あぁ、生きていなければという思いが突然湧いてきた。
 生きていたら、こんな思わぬ出来事に巡り会えるのだ。
 ライブでは、初めのニューヨークの大停電の話に続き、何度か朗読があった。
 朗読は小さく流れるメロディをBGMに、文章の区切りがいいところで彼はそれに合わせてステップを踏んだ。
 相変わらず長くひょろっとした足で。
 どんなに目を大きく開いても細めても、やっぱり彼の表情を確かめることはできなかった。
 諦め気分で、1度目を閉じて声に聴き入った。
 そこで初めて、この声がすきなのだと気づいた。
 話し方も、そう。
 歌は決してうまいと言えないけれど、やっぱり歌声も耳からすうっと体の中に入って沁みこんでゆく。
 そうか、そうだ、この人はこんな人だったんだー、なんてことを、ライブ中何度か思った。
 遠すぎるステージはじっと見ていると、自分が幻影を作り出しているような気になり、時折これは現実なのかと客席全体を見渡した。
 その中に空席は、見つけられなかった。
 誰もがこの日を待ちわびて、ここにいることを心から喜び楽しんでいるのが後姿からでもわかった。
 ライブでは、何曲か新曲が演奏された。
 そのうちの1曲、『時間軸を曲げる(表記不明)』がよかった。
 アンコール後のMCで、どの曲もあと3回やったら終わりかと思うと残念、と彼は言ったけれど、そのとき会場中の誰もが次はあるのかどうか知りたかったはずだ。
 新曲は形になるのか、またライブをすることがあるのか。
 あるとほんとうは言ってほしいけれど、そういうことは言わないだろうなとみんなわかっているような、もしくは口にするとこの3時間すら泡になって消えてしまいそうな気がしていたんじゃないだろうか。
 でも、生きていればいつか。
 わたしはひとり、そんなことを思っていた。
 それでも終わってしまったら、帰りの電車でもうちに着いてからもしばし放心状態。
 書こうと思えばその日のうちにブログも書けたけれど、今夜のことはひと晩寝かせたほうがいいと、ぼおっと録画していたドラマを見ていた。

 そのとき。
 突然いくつもの電気製品からガチャンという音がして、部屋の灯りが消えた。
 ブレイカーが落ちたのかと思い、すぐに外を見ると街灯の灯りも消えていた。
 かろうじて、ベランダから見える府道沿いの飲食店の看板がいつもと同じように見えた。
 あわてずに枕元に常備している懐中電灯を手に家中を歩き回っていると、ご近所さんも玄関から外を覗いている。
 停電ですねと確認し合いちょっと安心したところで、とりあえず部屋に戻ったものの電気がないとなんにもできないことにはじめて気づき、手持ち無沙汰で途方に暮れた。
 停電は、ごくごく小さな範囲で起こったものだったらしい。
 真夜中の空は白っぽく、想像した暗闇はそこにはない。
 まだ開演直後のコンサート会場のほうがよっぽど暗かった。
 だとしたら、今日彼の口から聞いたニューヨークの大停電はすごいことだったのだ。
 仕方がないから懐中電灯の灯りでお風呂に入ろうかと階段を下りたところで、家中が一瞬明るくなった。
 結局停電は、数十分のことだった。
 でも、こんな印象深い停電は今までにない。

 帰ってから、気づくと『ラブリー』を歌っている。
 1番すきなのはこれじゃないのにな、と思いながら。
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by fastfoward.koga | 2010-06-20 21:54 | 一日一言

時刻表

 新しい時刻表を買った。
 真新しいそれは、何度も指をすべらしたくなるほどつるつるしていてきもちいい。
 まだ角もぴんとしているし、ページに鼻をつけると紙の匂いが残っている。

 これが共に旅をしていくうちに、表紙がよれ、角も丸くなってゆく。
 本も物もできるだけ初めと同じままでとっておきたいと思うたちだけれど、こればかりは違う。
 使い込んでゆくほどに、愛着がわく。

 今までのお供たちは、今もみな本棚に並んでいる。
 古くなったからといっても、捨てられない。
 手にすると、旅をした場所のページの角が折られていたり、路線図が自然と開く。
 旅の記憶が、わたしの頭の中以外にも残っているのだ。

 さあこの夏も、長い長い列車の旅に出よう。
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by fastfoward.koga | 2010-06-17 21:39 | 一日一言

夢のような

 梅田より西へ出かけるのは、久しぶりだった。
 高校を卒業したあとの大学で何度も何度も通った電車の中から、変わったものと変わっていないものをいちいち確認しながら元町へ向った。
 梅雨入り宣言となった雨に濡れたせいなのか、天気予報の気温よりも体感温度は低かった。
 ライブのあとは温かいものを食べようと、そのときすでに決めていた。
 
 大きな魚が脇にそびえ立つ、cafe fishの前にはすでに人だかりができていた。
 早めにうちを出たつもりが、ぼおっとしていたら通勤電車の京阪に乗ってしまってかなりの遠回り。
 雨のせいか、気がかりなことがいくつかあるせいか、途中まではきもちは乗り切っていなかった。
 それでも一部がガラス張りになったお店を外から覗いてステージが見えたところで、くいっときもちが上がった。
 チケットの整理番号が呼ばれるまで傘を広げて待ち、中に入ってからは1度ぐるり店内を見回して迷わず正面の席を取った。

 開場から開演まで30分。
 その間に、1ドリンクのジントニックを口にする。
 プラスティックのコップでもその縁にちゃんとライムを滑らせ手渡されたそれは、思った以上にガツンときて、始まる前からひとりぼわーんとしていた。
 ふと時計を見ると、開演時間を2分ほど過ぎている。
 もうそろそろかなと、楽屋があると思われる2階を窺おうと階段のほうへ体を捻ると、視線は途中で止まった。
 すでに今日の主役、高野寛はそこにいた。

 観客の間を、すーっと通り抜けステージに上がる。
 大きくも小さくも自分を見せないその姿。
 見とれていると、ギターをさらっと抱えて二言三言話して場を和ませたら、ライブは新曲『君住む街へ』からするするっと始まった。

 ステージの向こう、そしてステージから見える、わたしの背にも窓。
 早く日が暮れないかと曲を聴きながらうっとりしていたら、彼もそう思っていたようだ。
 やっと暮れてきた、ということをMCで話していた。
 ステージからはどんな景色が見えるのかと、ときどき気になって後ろを振り返っていたら、何度目か、日が暮れたと思えたときには青いネオンサインが瞼の裏に残った。

 来る前から感じていた寒さはお店の中に入っても温まらず、しかもジントニックなんて飲んだもんだから、途中から足元がひやっとしてきた。
 でもうっとりしたきもちでギターを歌声を聴いていたら、どの曲でだったろう、胸と喉の間に熱い塊が現れた。
 一瞬ぐっと息が詰まる。
 急いで、ああこれを失くさないようにしなくては、と思った。

 彼の声は、なんと言うか。
 芯に温かいものを感じる。
 本人を目の前にしても、目を閉じたくなる声。
 でも実際は歌う姿も、ギターを弾く手も見たいので、なかなかできないのだけれど。


 ステージ後ろの天井近くの窓からは、背の高いマンションが見えていた。
 あまりの高さと迫力に、要塞のようだと思った。
 でも歌に合わせたかのように、灯りががひとつふたつと灯り始める。
 会場内のライトが窓に映り、何度もそれを月だと勘違いした。
 窓の外は薄いグレーから、藍色、濃紺と空が色を変え、ライトに照らされているステージを中心に、そこはまるで小宇宙の中にいるようだった。

「今夜だけは眠りましょう 夢の中で会えるでしょう
 そして目覚めたときから 夢のような毎日」

 個人的には、この曲『夢の中で会えるでしょう』につきた夜。
 あぁ、もう1杯、ジントニック飲みながら聴きたかったなあ。


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 セットリストが、高野さんの日記に更新されました。 ⇒ ★★★
 読みながら、きもちは日曜の夜に逆戻り。
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by fastfoward.koga | 2010-06-14 22:12 | 一日一言

まだ6月

 ここ数日、毎晩時刻表を眺めている。
 今持っているのは古いので買い換えないといけないのだけれど、見ているのは路線図。
 
 ではここで一句。

 梅雨明けを 待たずに 心は夏休み

 お粗末でした。
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by fastfoward.koga | 2010-06-12 21:51 | 一日一言

時計の針

 仕事終わり、エレベータの中で腕時計を見た。
 電車に間に合う時間のはずが、予想よりも10分進んでいた。
 どきりとしてからよく見ると、7時51分で時計の針は止まっていた。

 エレベータを降りてから、7時51分ということは今朝止まったのだなと考えた。
 そして、自分が時間を確かめるとき、時計の針を長針と短針の位置関係ではなく、長針だけを見ていることを知った。

 そうやって、思い込んで見ているものが他にもあるのかもしれない。
 針を狂わせているものが、あるかもしれない。
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by fastfoward.koga | 2010-06-10 22:57 | 一日一言