言霊の幸わう国

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やります

 昨日から1泊で、チチハハとともに城崎温泉へカニを食べに出かけていた。
 京都駅から特急に乗って城崎へ向い、着いたら着いたで外湯めぐりに、カニ三昧。
 楽ちーん、極楽~と、うちに帰ってきたら、大学から届いた封書。
 A4の封筒はいつもより厚めで、なんだろうと開いてみたら、先月提出した卒業制作に向けた課題の添削だった。
 封書で届くと予想しておらず、心の覚悟ができる前に評価と添削コメントを読んでしまったものだから、夕方から今までどんよりしてしまった。
 先生曰く、題材はよいのだが、と断った上での厳しいコメント。
 あぁ、ぐさぐさくる。
 沈むきもちを抱えたままなにもしないのもつらく、黙々と引っ越しの準備をしていた。
 荷物をダンボールに詰めながらも、うじうじイライラしたきもちが胸から消えない。
 しまいには、なんでもかんでもダンボールに放り込み、新しい部屋に持ってゆこうとする自分のがめつさに嫌気がさしてきた。
 自分のことを疎んでしまうのは、なんと悲しいことなのか。
 ため息をひとつ。
 そうしてやっと、問題をすり替えている場合ではない、結局は現実を直視しなければ始まらない、と先生のコメントを読み返した。
 2度目は、初めのときよりも先生の言葉の意味が頭に入ってきたし、次にどんなことを書き上げなければならないのかもわかった。
  
 内心、引っ越しもいよいよ今週末で、仕事もメンバーが減ることで部長からのプレッシャーが日に日に増してくるこののっぴきならない状況で、1番気を取られるのが大学の勉強だとはと自分でも思う。
 ちょっと順番が違うと、笑ってしまったくらいだ。

 なにはともあれ、どれもこれもやるしかない。
 やります、やります。ハイ、やりますよ。
 1ヶ月先のことを考えたら怖くて仕方ないから、目の前のことだけ必死にやる。
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by fastfoward.koga | 2011-02-28 20:48 | 一日一言

本とわたし

 荷造りを始めた。
 とりあえずは買い揃えた日用品や食器、洗濯しておいたタオルとバスタオルをひとまとめに。
 さあ次はどうしようと、自分の部屋でしばらく悩み、荷造りしても生活に影響のない本棚の前に立ちはだかった。

 まずは文庫から始め、新潮文庫、角川文庫、講談社文庫、と揃えた背表紙を順に眺め、思案しながら選ぶ。
 そのあとはアイウエオ順に並んだ文芸書を同じように眺め、棚から出したり戻したりしながらダンボールに詰めた。

 持っている作品すべてを選んだのは、村上春樹と堀江敏幸と長嶋有。
 意外なような、意外でないような。
 それ以外にも持ってゆこうと決めた本のひとつひとつは内容が思い浮かぶか、読んだときの思い入れがあるもので、そうかこんな本を手元に置いておきたいと自分は思っているのだと気づいた。
 自分と本の関係において、初めての領域に足を踏み入れたような気がした。

 詰め終わった本に、文豪と呼ばれる作家の作品はほとんどない。
 ということにさっき気づいたので、次のダンボールには芥川に谷崎、森鴎外を詰めようと思う。

 でも、なんとなく、ひとりぽつんと部屋にいるときに、読みたくなる本は持っていった本ではないような気がするのは、どうしてだろうか。
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by fastfoward.koga | 2011-02-23 21:47 | 一日一言

しくしく

 朝から珍しくこってりしたパンを食べたら、会社に着いたとたん胃が痛くなった。
 しくしく、しくしく。
 パソコンの前に座っていても、何度か体を折ってデスクにつっぷした。
 しばらく思案して、結局胃薬を飲んだ。
 30分もすると痛みはおさまり、昼食は普通に食べられた。

 今日は少しだけ残業しようと居残りしていたら、また胃が痛み出した。
 朝と同じ。
 しくしく、しくしく。
 お腹の中から音が聞こえてきそうだった。
 仕事を片付け駅へ向かう間も痛みは続き、シートに腰かけたら自然と目を閉じ額を指で支えていた。
 あぁ今自分はこういうポーズをとりたくなるような気分なんだ、と思った。
 
 午後、部長に呼ばれた。
 場所がいつもの打ち合わせのデスクではなかったので、共に声をかけられた先輩と視線を合わせた。
 なに、なに、と心の中でつぶやいて席に着くと、切り出されたのは主査の退職についてだった。
 早ければ2月と言われていたままでそのあと話題にものぼらなかったから、先輩と密かに立ち消えになったんじゃ、と期待していた。
 そんなわけないよなあ。
 きっと先輩も同じことを思っていただろう。
 以前愚痴をこぼしたうちの課長も先月から病気休暇を取っていて、たとえ戻ってきても、いや戻ってきたらもっと前途多難だ。
 主査がいない担当で、果たして課長はうまくやっていけるだろうか。
 
 目を開き、先週から読み続けているモーパッサンの短編集にきもちが集中し始めると痛みはおさまった。
 揺れる電車の中で、さっきまで感じていたしくしくはなにから来ているのか、考えていた。
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by fastfoward.koga | 2011-02-21 21:51 | 一日一言

じゅんちょーじゅんちょー

 生活するって、まーなんと大変なことやったんかと、今さらながら思う今日このごろ。
 チェックリスト作って、スケジュール組んで、我ながら感心するぐらい引っ越し準備は順調。

 目を閉じるだけで間取りがまぶたの裏に浮かび、あせっているときに必ず見る遅刻する夢を見る日もいつしか過ぎ去り、今は毎日のようにハハとは引っ越しに関する話をし、週末はIKEAにニトリにと買い物に出かけている。
 不思議なことにこういうときほど仕事は忙しく、おかげで毎日驚くほどぐっすり眠れる。

 引っ越しまであと2週間。
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by fastfoward.koga | 2011-02-19 22:33 | 一日一言

ユニコーン兄さん!

 雪が積もった11日。
 出かけるに出かけられず、のんびりパンを齧りながら新聞を捲っていた。
 まだ頭がぼーっとしていたのか、ユニコーン兄さんたちの1面広告を見ても、うあーユニコーンに似てるとかなんとか思っていた。
 ちゃうちゃう、ほんものやーん。
 1面広告には、「ユニコーン、やります。」の文字。
 まじまじ見ると、ツアーもやるというじゃあないですか。
 若かりし日共にライブに行ったY嬢、K嬢にいそいそとメールをし、大急ぎで3人それぞれ先行予約を申し込んだ。
 2年前は申し込めど申し込めど当たらず、結局会社の人からチケットを譲ってもらったのだが、2枚しか手に入らず、Y嬢には涙を飲んでもらいK嬢とふたりで行ったのだ。
 今度こそ3人で! を合言葉に、上半期の運を注ぎ込んだ結果、大阪2daysが仲よく1日ずつ当たった。
 3分の2の確率。なかなかじゃないの!

 ということで、今年の夏、友人たちとユニコーン行きます!
 全国のみなさん、どーですかー?

 ちなみに残念ながら、くるりの磔磔は玉砕。
 運はユニコーンに集中したようです。
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by fastfoward.koga | 2011-02-16 21:04 | 一日一言

にじむバレンタイン

「雨って言うてたやんな」
 フロアではみながそう口々に言い、代わる代わる9階から窓の外を見た。
 昼前から降り出した雪はやむ気配を見せず、終業時にはぼたっとした雪に変わり、歩道をうっすら白く色づけた。
 1度出した残業届けを取り消ししてもらい、定時で会社を出る。
 いつもなら地下鉄ひと駅分は歩くが、今日はやめにしておいた。
 寒さに負けたのではなく、靴がもたないと判断したのだ。
 案の定、ワンブロック歩くごとに、溶けてべちゃべちゃになった雪が沁みこんでくる感じがした。

 京阪の特急に乗ったあともずっと窓の外を気にしていたが、その中に白いものは見つからない。
 取り越し苦労だったかとモーパッサンの短編集を開いていたら、携帯がぶるるっと震えた。
 開いてみると、楽グリから「今日はバレンタインデー」というDMメールが届いていた。
 朝1度そんな話題をしてから、忙しくてすっかり忘れていた頭にUターンして戻ってきた「バレンタイン」。
 右に頭を傾けもの思いに耽りそうになった瞬間、10年前のバレンタインのことを思い出した。
 亡くなったNくんと最後に電話で話した日だ。
 地下のお店で飲んでいたせいで電波も悪けりゃ、相手もかなりの酔っ払いで、なんだかちぐはぐしたまま切ってしまったその電話のことを、わたしはあとでたっぷり後悔した。
 明日にでもメールをして、今度ふたりで飲みに行こうと言おう、そのときはそう思っていた。
 そんな記憶が一瞬にして巻き戻り、傾いていた頭はバネではじかれたようにまっすぐになった。
 10年経ってもバレンタインの思い出がそのことだとわかったら、Nくんはきっと笑うだろう。

 京阪のホームを歩いていたとき、いつもと違う匂いが鼻先に漂った。
 不審者にならない程度に、くんくんかいだ。
 △印の前に立ち、少し大きめに空気を吸ったところで気づいた。
 漂っていたのは、雪の匂いだ。
 雨とは違う水分をたくさん含んだ空気の匂い。
 雪国を旅し、ホテルから出た瞬間に何度も嗅いだ匂い。
 目の前が真っ白だったら、わーいと走って前のめりに飛び込みたくなるときの匂い。
 
 今窓の外を見ると、雪はやんでいた。
 積もったこの雪は、明日まで溶けないだろうか。
 鼻の奥には、ホームで嗅いだときの雪の匂いが残っている。
 暖かい部屋に戻ったとたん、チョコレートが食べたくなった。
 買って帰ればよかったと、後悔した。
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by fastfoward.koga | 2011-02-14 20:54 | 一日一言

いくつになってもスタートは春

 タイミングとはなんなのか。
 考えているときは答えなど見つからず、大なわとびのように考えているうちは飛び込むことはできないもの。
 今だ、行け、今を逃すと前には進めない。
 そう自分を鼓舞しても、うまく足は出ない。
 右、左、右、左。
 例え一歩ずつ前に足を踏み出しても、肝心なところで歩みは弧を描く。
 最後はフェードアウト。

 でもいつも、そんなふうにうじうじしているわけではない。
 迷いも不安も恐れも感じる間もなく、ひゅんと走り出すこともできる。
 例えば、再び大学に行こう、そう思ったときがそうだった。
 ひとまず資料請求をと思いながらも、きもちは決まっていた。
 そのとき、周囲の人に言われたような壁はそこにはなかった。
 目の前にあるのが自動ドアで、前に立てばドアは開き、するりと通り抜けられることを考えずにわかっていた、という感じ。
 調子がいいときは、そういうことができる。

 自分の体の中に重心がぶれない芯があり、地球のバランスをさも自分がとっているかのような感覚。
 アンテナを張ろうと意識を持たなくても、見たいものが見え、知りたいものを知ることができる感覚。
 足の裏で地面を感じているのに、高揚感で自分が数センチ浮いているような感覚。
 
 そんな感覚は、なにかが起こったあとの結果から生まれるものではない。
 どちらかと言うと、これからなにかが起こるという前触れに近い。
 でもなにもないのにひとりわくわくするだけだから、誰かに話すことはできず、あれ? なんでこんなにきもちが高揚しているのか、とこっそり思うのだ。

 ベストコンディション、と言うのだろう。
 なんとなく、自分に起こった日々の出来事がみな「だからなのだ」と思える。
 理由のいちいちはわからなくても、そういうことなのだと納得することができる。
 それがわかると、このあと自分がどうすればいいのかもわかる。
 これがきっとタイミングなのだ。

 ただその巡りは、感覚が研ぎ澄まされている状態が続けばの話で、なにかの拍子に風船みたいにしぼんでしまうのが常だ。
 メンテナンスされていないと、長くは続かない。
 だからすぐタイミングの意味を見失う。
 状態に驕っていたら、足元をすくわれる。

 少し前から、感覚がものすごく冴えていた。
 どうしようもないくらい人の話や周囲の空気に惑わされていた数ヶ月前に比べると、それは霧が晴れたような気分だ。
 そんな中、あっ今だ! と自分でも気がつかないくらいの速さでひらめいた。
 ひとり暮らしをしよう。
 そう決めた。

 なんとなく間取りをチェックし始め、なんとなく周囲にそう洩らし始め、でも行動に移した時点で最後まで実行することは決めていた。
 今度はできる、と疑うことなく思った。
 その証拠に、知らなかったことを知るのはなんと楽しいことなのか、と今思っている。 
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by fastfoward.koga | 2011-02-12 22:59 | 一日一言

1月の巻

1  松尾健史   I met a boy. 父の日に、バンビ公園で。
2  山崎ナオコーラ
            人のセックスを笑うな ※
3  長嶋有     猛スピードで母は ※ 
4  西加奈子   白いしるし
5  長嶋有     タンノイのエンジバラ ※


(テキスト)
・山口由美   旅する理由


 2011年に入り少しだけテキストから解放され、読みたい本を手に取りました。
 本屋で2冊だけと自分に言い聞かせ、レジに運んだ1冊が西加奈子の『白いしるし』です。

 久々に大阪弁のセリフと恋愛小説を読みたいと、タイトルや装丁などあまり気にせず、黙々と数日かけて夜寝る前に読みました。
 読み終わって痛いなあと思ったあと、本屋でかけてもらったカバーを外し、改めて表紙を見てしみじみ。
 装丁は新潮社装幀室、装画は著者本人。
 表紙を撫で肌触りを感じながら、読み終えたばかりの物語に思いを馳せました。

 さあ、続けて読むぞー!
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by fastfoward.koga | 2011-02-08 20:28 | 本の虫

加速度をつけて

 今年度の大学の日程が、ほぼ終了した。
 あとはまだ評価の出ていない科目があるものの、土曜日にエッセイの試験をひとつとスクーリングの事後課題を提出したので、10月ごろから背負い続けた荷物はひとまず下ろすことができた。

 4月以降どうにもエンジンがかからず当初の計画から大きく出遅れてしまい、結局は取り戻せないまま1年を終えるのだが、単位が足りないわけではない。それに、覚悟を決めて挑んだ11月以降の怒涛のスケジュールもなんとか乗り切ったのだ。終わりよければすべてよし。
 ということにしよう。

 思えば、11月の怒涛のスクーリング。
 あれはほんとうにきつかった。
 自分で申し込んだとは言え、あれほどまでにというのが、今の正直な感想だ。

 第1週と第3週が金・土・日の3日間、第4週は土日の2日間でスクーリング。
 第1週は事後課題があり、期限は3週間。
 ちょうど第4週のスクーリング後が、締め切りだった。
 ひとつだけぽっかり空いた第2週はカレンダーだけ眺めているとゆっくり休めそうな気がしていたが、卒業制作の事前課題の提出が数日後にあり、駆け込みで仕上げた。
 そしてそういうときに限って忙しくなるのが、仕事。
 誰か絶対見てる! と、見えぬ誰かに闘士をむき出しにし、息つく暇もないくらいに1ヶ月が過ぎた。

 そして12月は、1週目の日曜日が試験。
 まともに勉強できたのは前日の土曜日くらいで、結果は納得の点数。
 完全に計画ミスだった。
 第3週目の日曜日は、卒業制作に向けての合評会。
 小説を書くことは入学したときから決めていたものの、内容や文章など先生たちからどんなコメントを直接返されるのかにおののき、当日は生きた心地がしなかった。
 でもそれも、とりあえずクリア。
 終わってしまえば、捕らわれるように始終考えていた小説の世界から解放され、1月半ばには再提出しなければならない課題のことなど、すっかり忘れてしまっていた。

 年末年始は今年度1番手を焼いたエッセイの第2課題に取りかかろうとしたが、きもちだけが空回りし、結局なんにも書けないまま3連休に。
 ここで提出しないと第1課題が無駄になると、こねくり回して書いた。
 これはいったいどのくらいの出来なのか、自分では客観視できないくらいあわてて郵送したが、今日返ってきた評価はやはり厳しかった。
 悩み続けたテーマと構成に対し、先生からは、さすがお見通し! と言いたくなるような的確なコメントをいただいた。
 第1課題のときはあまりの辛口コメントに容易に読み返すことができなかったが、今は自分の実力がよくわかり、逆に清々しいくらいだ。
 
 第3週の土曜はトーキョーの学舎で、日曜は場所を移し箱根でトラヴェル・ライティングのスクーリング。
 次の水曜日の14時までに途中課題の提出があり、絶対提出ではないものの出さないわけにはいかない雰囲気にあせらされ、東海地方の雪で遅れた新幹線の中で小さなメモに下書きをしていた。
 翌週は日曜日のみ再びトーキョーでスクーリングの続きがあったが、卒業制作の事後課題の提出を2日後に控え、土曜日は19時ごろまで大学の図書館にいた。
 前週は往復新幹線を使ったが、その日は23時に京都駅を出発する夜行バスに乗る予定で、ここでも最後はえいやー! という声がレポートの中から聞こえてきそうなくらいの勢いで仕上げた。
 何度かひやりとしながら予定どおり夜行バスに乗ることができ、翌日6時前に新宿駅に着いた。
 乾燥注意報が連日発令されていたトーキョーの早朝の空気は、眠気も吹き飛ばすほど冷たかった。

 そうして迎えた2月。
 少しだけ、ひと息つこう。
 溜めすぎるとうまく力を出せないから、次、きもちよくジャンプできるように。
 というきもちを忘れないために、ここに記す。
 さあ、来年度は最後の1年だ。
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by fastfoward.koga | 2011-02-07 22:05 | 一日一言

冬晴れ

 今日は友人に合わせ休みをとり、大阪まで車で出かけた。
 行き先は、友人Nくんのお墓参り。
 彼が亡くなって、もうすぐ10年になる。
 前回いつ行ったか思い出せないくらいご無沙汰してしまったので、2月には必ずと昨年末から思っていたのだ。

 昼前に京都を出発し、途中お昼を食べ、13時過ぎに目的地に到着。
 今日の大阪は予報どおりよく晴れ、暖かく、コートを来ていなくても充分な陽気だった。
 そう言えば彼のお葬式の日も、2月なのに暖かかった。
 確か骨上げまでの時間、行くあてもなくてパチンコ屋の駐車場でみんなで輪になって立ち話をしていたけれど、誰も寒いと言って移動しようとしなかった。
 そのときの明るい陽射しとみんなが着ていた洋服の黒のコントラストが、今でも印象に残っている。

 道は何度か間違えたのに、お寺の駐車場に車を停めお墓に向かって歩き始めると、とたんに記憶は鮮明になった。
 晴れた日にお参りすることが多かっただろうか。
 ここはいつもと同じだと、ふと思った。

 お墓まわりを簡単に掃除して、お花を供えた。
 お線香は空気が乾燥しているからなのか、すごい速さで灰に変わっていった。
 急がなくては、そんなことを思いながら、友人と静かに手を合わせた。
 そうしていると、ずっと目を閉じて彼と話をしていたいきもちになった。
 よくなにかあると彼の言葉や立ち振る舞い、今どうしているのかと思い出してはいるものの、実際お墓を前にして彼のことを考えたら、いつもより近くにいる気がした。
 
 10年経ったんやなあ。
 わたしたちは相変わらず。
 報告できるようなことは今なんにもないから、なにか報告できることができたら、また来るね。

 そう最後に話しかけた。
 そしていつものように小さく手を振って、大きな通路に出たところで後ろを振り返った。

 車に乗って京都へ戻り、途中お茶をして、友人を家まで送り届けた。
 帰り道、橋を渡る幹線道路から大きくてきれいな夕陽が見えた。
 大きくて丸くて鮮やかで、今日その夕陽を見ることができてよかったと思った。
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by fastfoward.koga | 2011-02-03 20:30 | 一日一言