言霊の幸わう国

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メモリー残量

 焼肉を食べさせてくれるというので、実家に帰っていた。
 ベスパのエンジンをぶるんぶるんさせ、実家に帰るときはいつも橋を渡る。

 川を越える。
 また川を越え、帰ってくる。

 橋を渡るときに見る景色が、いつか自分の原風景になるのだろうか。

 この間電車に乗っていたら、鼻腔を刺激する匂いに出会った。
 あぁ、なんだか思い出しそう。
 この香りは、なんだっけ。
 誰だっけ。
 記憶が遡ることができる場所へ導くように、小さく何度か息を吸い込んだ。
 
 思い当たる顔を、記憶の台帳と照らし合わせた。
 でも、どこのページでも指は止まらない。
 結局誰の匂いだったのか思い出しはしなかったけれど、自分がその人に片思いをしていたことは間違いない。

 最近は少し目にしなくなった「ぽぽぽぽーん」のCMは、胸の弱いところに電流を走らせる。
 ひとり暮らしを始めて、震災が起こって、ともだちが亡くなって。
 台所の流しの前の蛍光灯を頼りに料理をする自分。
 それは決してクリアなものではなく、漠然とした薄いぺらぺらなものなのだけれど、記憶として残ってゆくのだろう。

 友人が亡くなったときに代替機で使っていた真っ赤な携帯を、わたしは一生持たない。
 
 うまくは言えないけれど、記憶ってきっとこういうもの。
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by fastfoward.koga | 2011-04-29 23:51 | 一日一言

20時59分

 残業しないと、まるで半日休んで帰ってきたかのような気になる。
 小雨が降る今夕ですら空はまだ明るく、駅からの帰り道は大げさでなく夢見心地だった。

 スーパーに寄って、ビールを飲みながら夕飯の支度をして、撮りっ放しになっていたドラマを見てぼーっとしていてもまだ21時前。
 しああわせ~。 
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by fastfoward.koga | 2011-04-27 20:59 | 一日一言

考えよ

 原発について考えている。
 今回の震災で福島原発にあんなことが起こらなければ、きっと考えなかったことばかりだ。
 これまでCMなどで、原発は安全ですと有名人が笑顔で言っているのを見て、そうなんだと信じていた。
 でも今までより意識を高めて、いろんな人の言葉に耳を傾けると、「安全」という言葉が自己保身のためのものだったのだと思うようになった。
 津波発生後の「想定外」という言葉ですら、自分の仕事に置き換えて、言っちゃうよなあ、そう言いたくなるきもちもわかるなあと正直思っていた。
 けれどその想定外は誰が決めたものなのか、どうやって決めたものなのか。
 突き詰めてゆくと、その先にあるのは「安全」ではない気がしてきた。

 今、原発反対と勢いに任せて叫ぶのは簡単だ。
 なら、これからどうすればいいのか。
 自分が今できることはなんなのか。
 そういうことまで考えてじゃないと、自分の発言に責任が持てない。
 まさに今、自分が伝えようとしているためには電気が必要なのだから。

 関西も関東と違わず、消費エリアと原発のある場所は異なっている。
 関西電力の所有する原発は、福井県にあるのだ。
 同じことが起こったら。
 想像するだけで、足がすくむ。

 情報化社会と呼ばれていても、操作された情報しか得られないこともある。
 原発安全という言葉は、まるでマインドコントロールだ。
 自分の頭で考えなくては。

 そんなことを日常の中で考える毎日。
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by fastfoward.koga | 2011-04-25 22:54 | 一日一言

3月の巻

 3月は引っ越しの忙しさもあり、結局1冊も本を読み終えることができなかった。
 10数年、年間100冊を目標にして、こんな月は初めてだ。
 通勤途中も寝る前も読んではいたけれど、捲るのは毎日1ページか2ページ。
 ちょっと読んではすぐ寝てしまっていた。

 4月に入ってすぐにペースを取り戻しはしたけれど、今年もやっぱり読むのは課題テキストが中心。
 新しい文芸書や雑誌の話題にはなかなかついていけない。
 でも、ここであきらめてはならない。

 テレビを消して、本を開けよう。
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by fastfoward.koga | 2011-04-24 21:44 | 本の虫

かさぶた

 毎晩、部屋の灯りを全部消したあと、幸せを感じる。
 天井を見て、柔らかくて温かいふとんといつものまくらの感触を確かめて、ああ今日も1日終わったと思う。

 そうやって、毎日は過ぎている。
 ぱたぱたと音を立てて変更する行き先表示のように、めまぐるしく過ぎている。
 幸せは感じているのに、くすくすかさかさする思いがかさぶたみたいにくっついている。

 昨夜も同じようなことを感じ、思ったまま目を閉じたそのとき、これじゃあいけないとわたしが言った。
 あと1歩、もう1歩。
 今より前に進まなければならないなにかがある。

 自分が傷を癒そうとしているのか、また血を流そうとしているのかわからないけれど、今かさぶたをえいっと、はがそうとしている。
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by fastfoward.koga | 2011-04-20 21:37 | 一日一言

これまたあっという間

 確かに2日、休んだはずなのに。
 あれ? 昨日休んだっけと、調子っぱずれなことを思う日曜日。

 ああ眠い。
 やっぱり眠い。
 
 早く寝支度始めて、寝てしまおう。
 さあ、明日からまた仕事だよ。
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by fastfoward.koga | 2011-04-17 21:09 | 一日一言

あっという間

 金曜日の夜。
 お風呂に浸かったら、うおお・・・とおっさんみたいな声が出た。
 1週間、早かった。
 終わった。
 疲れた。
 眠い。

 今日はもう寝る。
 お休みは、すきなことをしよう。うん、そうしよう。
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by fastfoward.koga | 2011-04-15 22:28 | 一日一言

青い空からはじめよう

 火曜日必着の課題を、今、まさに今取りかかった。
 元があるとはいえ、それがかなりのダメだしをくらったというのに、今から1行目を書き出すこのずうずうしさ。
 腹をくくるというより、今回は開き直ってしまえ。

 最初のシーンは晴れがいいか、雨がいいか。
 そんなことを考えているうちに、マグカップに注いだカフェオレは飲み終えてしまった。
 かけているCDの曲数も残り少ない。
 ぐるぐる考えていたら、今日の天気と描く場所を旅したときが雨だったせいできもちは傾いたが、やっぱりここは晴れでしょう。
 おととい見たあの青い空から書き始めよう。

 最後の1年。卒業制作、いよいよ、はじまりはじまり。
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by fastfoward.koga | 2011-04-08 22:06 | 一日一言

彷徨う魂

 電車を降りて、改札を抜ける。
 線路を跨ぎさっきまで自分が乗っていた電車を見送るそのとき感じる不思議さは、ひと月同じことをくり返しても未だもって消えることはない。
 そして、視線を前に戻し緩やかに上る道を見ると思う、どうして自分は間違えずにここにいられるのか、という感情もまた色あせる様子はない。

 気づくと、ひとり暮らしを始めてからひと月がたった。
 あまり深く考えていなかったと言えばそうなのだが、意外に自分が生活にまつわるあれこれをこなしていることに驚く。
 炊事、洗濯、掃除。ゴミの分別に、買い物。電気やガス代の振込み。宅配の再配達の依頼に、受け取り。住所変更の電話はいくつもかけた。
 自分で自分の世話をすること。
 そうか。そのくらいなら、わたしにもできるのだ。
 そんなことをしばらく経ってから思った。

 先週友人が亡くなったとき、なにかと便がよかったので通夜のあった夜は実家に泊まった。
 ずっと使っていた部屋は大半を持ち出していたので寝る直前まで居間にいたが、寝支度にかかったら、それまでの睡眠不足も手伝ってすとんと眠りについた。
 翌朝もなんの違和感もなく朝風呂に入り、洗面台では持ってきた歯ブラシが目の前にあるというのに、つい癖で鏡になった扉を開けて歯ブラシを探してしまった。
 そこでは思わず笑ったが、さらに翌朝目が覚めた瞬間、あ、天井が違う、と思ったことには我ながら驚いた。
 きゅっと心臓が縮んで、起きぬけだというのに鼓動が速くなった。

 ずっと前に、ひとり暮らしはひとり旅みたいなものじゃないかと思ったことがある。
 だから、やろうと思えばわたしだっていつでもできる。
 そう思ったが、ほんとうは思ったはしからそれが強がりだということはわかっていた。
 ひとり暮らしをすると決めてからはこれまた深く考えはしなかったが、やっぱりそれは違うだろうと思っていた。
 でも実際にひとりで暮らしていると、今自分が胸の中で感じているこの感情はひとり旅をしているときに感じているものと同じだと、何度もくり返し確かめずにはいられない。

 この思いのまま、旅に出たら。
 戻る場所はどこだと自分は思うのだろう。
 旅に出たくてうずうずするいつもと少し違うなにかが、わたしを呼んでいる。
 とうとう、わたしはほんとうの旅に出たのだろうか。
 戻る場所をどこかで探しながら、次の場所、次の町へと向うのだろうか。 

 誰かの手から離れた風船のように、自分を繋ぎとめておくものがなくなった。
 解放感でも開放感でもない、このスースーする感じの正体だけが気になっている。
 だから、まだ見えない先行きに怖さすら感じない。 
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by fastfoward.koga | 2011-04-07 22:34 | 一日一言

銀河鉄道

 残業中、部長の態度にカチンときた。
 せめてもの抵抗で、打ち合わせのときにはいつもより低い声を発し、話さないときは能面のような表情をしていた。
 4月はまだ始まったばかり。ここでくたばってはならぬ。先は長い。
 胸のあたりにたまった熱いものを長い息で吐き出し、申請していた残業時間を過ぎたらさっさと会社を出た。
 今、わたしは卒業制作の小説の語りについて悩んでいる。
 一人称にするか、主人公寄りの三人称で書くか、はたまた天の声のような三人称にしてしまうか。
 課題に集中できずにそんなことを悩むだけ悩み、結局数週間も結論を出せない自分をどうにかして突き放したかった。
 けれど駅までの帰り道、ふつふつと湧いた部長への不満を発散するために早足で歩いていたら、チャレンジしなくてどうする! と突然自分を鼓舞する声が聞こえた。
 毎日、沈んだり上がったり。
 今はもう少し心静かにじっとしていたいのだけれど、仕事も勉強も正直そんな猶予はない。
 目の前のことをただやるだけ。
 そう言い聞かせる日々。
 早足で歩いたおかげで会社を出てからも用事をとんとん済ませ、乗りたかった特急に乗ることができた。
 空いている席を陣取ったら、課題の参考にと思って今朝カバンに入れた単行本をすぐさま開いた。
 食い入るように文字を追い、ずいぶん長い間本の世界にどっぷり浸っていたと思ったのに、中篇の作品を読み終え顔を上げると、外にはなんだまだこんなところかと思うような景色が映っていた。
 山の稜線に、高速道路を走る車のテイルランプ。
 特急は、川沿いをカーブを描いて走っていた。
 最後尾の車両に座るわたしの場所からは、先頭車両から洩れる灯りが見えた。
 まるで、メリーゴーランドみたいだと思った。
 今見ている景色も最近の自分も。
 ぐるぐるぐるぐるきもちは回り、かと思ったら、下に下がったり上に上がったり、せわしなく動いている。
 でもすぐに、あ、違うと思った。
 同じところを回っているようで、わたしの時間は特急電車のように前に進んでいる。
 老いという荷物を少しずつ背負いながら、速度を落とし、でも間違いなく前方へと体は動いている。
 そう気づいたら、久しぶりに体の力が抜けた。
 前に後ろに線路が続いていても、列車はその瞬間一方方向にしか進まない。
 それが前だとわたしが思うなら、それが前だということなのだ。
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by fastfoward.koga | 2011-04-05 22:58 | 一日一言