言霊の幸わう国

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永遠に世界から離れるときに持っていく八つ(2013年版)

 最初に読んだのはいったいいつのことだったか。
 イギリス人作家のジェイムズ・ホーズが書いた『ベンツに乗って強盗に行こう』。
 2005年にその小説の一節を引用し、考えたことを記した。

「きみはひとりで永遠に世界から離れようとしている。なにを持っていくか八つを決めなければならない。」

 世界から離れると言われているのに、想像力が欠如しているのか描くのは無人島。
 そこで違う違うとチャンネルを切り替えて、想像は宇宙になり、暗闇になる。
 今世界を離れるとしたら。
 2013年のわたしはこれを選んだ。


1. わくわくする本が置かれた本屋
2. (彼)
3. DEMELのチョコレート
4. 旅先
5. ポスト
6. ベッド
7. rei harakamiの『lust』とくるりのCD
8. 電車


 哲学バトンもそうだけれど、根本的に求めるものは変わらない。
 これがごっそり変わることがあったら、それはとてもすごいこと。
 それはないと思いながら、どこかに変化を期待していたりもする。

 過去の持ち物は、こちらから(入口→2009年版★★★)。
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by fastfoward.koga | 2013-03-15 23:20 | 一日一言 | Comments(0)

2月の巻

1 津村記久子 カソウスキの行方・講談社文庫 
2 藤谷治    船に乗れ! Ⅰ合奏と協奏・ジャイブ 
3 ジョアン・ハリス・那波かおり訳
           ショコラ・角川文庫 ※ 
4 角田光代   空中庭園・文春文庫 ※ 
5 石井睦美   キャベツ・講談社文庫
6 藤谷治     船に乗れ! Ⅱ独奏・ジャイブ
7 クラフト・エヴィング商會
           ないもの、あります・ちくま文庫 
8 藤谷治    船に乗れ! Ⅲ合奏協奏曲・ジャイブ


 小説には、読み始めから鍵穴に鍵がはまるように物語に入りこめるものと、そうでないものがあります。
 2月に読んだ3冊『船に乗れ!』は、後者にあたる作品でした。
 この3冊、実は手にしていたのは2年近く前。
 2010年の本屋大賞にノミネートされ、しばらく経ったあと友人から借りたものでした。
 借りたといっても、返してくれなくていいからねという友人の言葉に甘え、本棚に置きっぱなしにしていましたが、100読を目標に掲げた今年、お財布事情が厳しいときにふと思い出してやっとページを開きました。

 借りたの単行本だったため通勤に持ち歩くには重く、寝る前に読んでいましたが、なかなか読み進められませんでした。
 それは睡眠不足の毎日だったというだけではなく、著者へのイメージがそうさせていたのだと思います。
 さかのぼること数年前、わたしは著者藤谷治のデビュー作を買って読んだことがありましたが、その作品と相性が悪く、それはこれまで出会った作品の中で今でも1番と言えるものでした。
 そのせいで、本屋大賞7位というブランド的なものにひかれ借りたものの、読む気にはなかなかなれなかったのです。

 案の定、読み始めはしっくりこない文章に手こずりました。
 けれど主人公と主人公を取り巻く世界が描かれたところで、やっとひと山越えた感じがしました。
 なんせ3部作の物語なのです。物語の世界の大枠が数ページでできあがるわけがありません。
 起承転結の「起」から「承」に移るまでは、じっと我慢だと内心思っていました。
 そうして読み終えた1部(1冊)以降はつっかえることなく、最後は睡眠時間を削ってまで読みました。

 物語はチェリストの高校生の男の子が主人公で、彼の高校3年間を描いています。
 舞台は、決して一流とは言えない音楽科の高校です。
 わたしはどの登場人物にも感情移入できず途中もどかしい思いもしましたが、努力しても届かない世界があるという事実を描く物語に最後は胸が詰まりました。
 主人公にふりかかった、そして自ら招いた出来事との数々とその結末に、正直厳しさを感じました。
 けれどそれこそが本屋大賞にノミネートされた理由なんだなと、最後に理解できたのでした。
 
 3部作を読み終えて作品、著者に対して思うことは多々ありますが、手応えを感じられた読書体験となりました。 
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by fastfoward.koga | 2013-03-10 17:30 | 本の虫 | Comments(0)

繋がった瞬間

 じゃあね、ってふうな態度をひるがえして聞いた。
「甘いものすき?」って。
「はい」って答えたから、近くまで戻ってカーディガンの左のポケットから取り出した。
 白いリボンのかかった真っ黄色の小さな箱を差し出したら、手が差し出されたので、その掌に載せた。
 間接的に、彼と繋がった瞬間。
 箱を見て、小さく驚いてすごくうれしそうな顔をして笑った。気がした。

 そこに至るまで、そりゃあもうどんくさいったらありゃしない。
 1度はあきらめかけた。
 もうダメだと思った。
 でも長い通路をそう思って歩いているとき、ふっと勇気が湧いた。
 そして追いかけた。

 そのとき、たぶん彼は気づいていなかったはず。
 それがバレンタインのチョコレートだということを。

 今日は昨日のできごとを思い出したら恥ずかしくて、顔が上げられなかった。
 でもまたしばらく会えないのだよと自分を諭し、タイミングをうまく合わせた。
 正面に立ったとき、なにか言ってくれるかなと少し期待した。
 カチッと音がするように目が合ったけれど、彼はなにも言わなかった。
 わたしも、声にも言葉にもならないなにかで口元を少し動かしただけだった。
 
 彼が去ってから、出て行った扉の存在を背中で感じていた。
 魂が体から抜け出て、連れ去られてしまったようだった。
 しばらく会えないという思いに身を浸し、ずぶ濡れの状態で彼のことを思い出すと、体の中心が空洞になった。
 胸からお腹のあたりにかけてできあがったグレーの空洞。
 この感情に名前はあるのかと考えた。

 上着の感触を想像した。
 想像して、上着に包まれている彼自身に触れてみたいと思った。
 どんどん欲がふくらむ、風の強い夜。
 カタカタと扉が鳴っている。


追伸
 1度あきらめたそのとき思い出したのは、メールやコメントをくださったり、言葉はなくともそっと見守ってくださっているみなさんのことでした。
 自分を奮い立たせるためにチョコのことをここに書きましたが、結局はみなさんに背中を押していただきました。
 ありがとうございます。

 思うところは多々ありますが、ひとまず渡せたことをひとつのステップにして。
 もう1段上がって、どうかまた少し彼に近づけますように。  
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by fastfoward.koga | 2013-03-01 22:53 | 一日一言 | Comments(4)