言霊の幸わう国

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見えるもの

 ひと区切り。期待。待たない。封じない。

 足元で風がくるりと翻る。
 そんなふうに湧いた感情は次から次へと消えてゆく。
 目に見えないものは厄介だ。
 でも明日は見えるものを信じて見つめてこよう。
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by fastfoward.koga | 2013-10-28 23:51 | 一日一言 | Comments(0)

9月の巻

1 山田詠美   A2Z・講談社 ※
2 鎌田敏夫   29歳のクリスマス・新潮文庫 ※ 
3 ジュンパ・ラヒリ・小川高義訳
           停電の夜に・新潮文庫 ※  
4 安東みきえ  ワンス・アホな・タイム・理論社    
5 吉田篤弘   空ばかり見ていた・文春文庫 ※ 
6 伊藤たかみ  カンランシャ・光文社文庫 
7 堀江敏幸   めぐらし屋・毎日新聞社 ※ 


 9月はあわただしい中、それでも恋や切ない話を選んで読んでいました。
 それで少し満たされたところがあります。
 本の神さまに、感謝感謝です。

 年間100冊の目標は、もうひと息、いやふた息がんばらないと厳しくなってきました。
 かと言って、薄めの本や読みやすい作品を選んだりしたくないと意地をはっています。

 さあ、今晩も気合を入れて読みますか。
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by fastfoward.koga | 2013-10-23 21:42 | 本の虫 | Comments(0)

ひと、で紛らわさず

 今夜の月は、はっとするほど鮮やか。
 くっきりとした輪郭は、凛としている。

 その月の光を感じながら、金木犀の匂いを嗅ぐ帰り道。

 人恋しい。
 もとい。
 恋しい。

 月も金木犀も、この世になんにもなくても、恋しさはずっと前から募っていた。
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by fastfoward.koga | 2013-10-21 22:31 | 一日一言 | Comments(0)

史上最高の美しき空

 京都に大雨が降った。
 夕方ごろから降り出した雨はあれよあれよと強くなり、日付が変わる時間になってもごおっという音を鳴らして降りづつけた。
 それでも、眠れないほどではなかった。
 明日は休みだということがきもちに余裕を持たせていたのか、普段通りすとんと眠りについた。
 たぶんそれがなければ、目を覚ましたのはすっかり空が明るくなってからだったやろう。
 明け方と呼ぶにはまだ早い3時55分、携帯にエリアメールが届いた。
 ねぼけまなこで読んだエリアメールには、「京都市避難準備情報」というタイトルとともに、数キロ離れた場所を流れる桂川の水が上昇していると書かれていた。
 そこから1時間ほどうつらうつらしていたけれど、大雨の情報で何度もスマホが震え、寝ることはあきらめて起きだしNHKのニュースを見ていた。
 そうしてその朝、京都の街のあちこちは茶色い濁流に翻弄された。


 その日から数日後、京都音楽博覧会は開催された。
 金曜日には小さく雨やった予報も、翌日の土曜日には傘のマークは姿を消し、結局当日は最高気温30度を超える晴れマークで迎えた。
 気温は27度程度、風はからっと乾いていて、空に浮かぶ雲が大方太陽を隠してくれれば、という希望は叶わず、陽射しの強い晴天の元での音博。
 もちろん雨よりはいい。いいけど、朝ベランダで慣れない空の下で過ごす長い1日を思い、小さく気合を入れた。
 
 開場は、今年も10時30分。
 10時過ぎには梅小路公園に着き、長い列に並んで会場を待つ。
 芝生広場を囲む遊歩道をじわりじわりと進み、辿りついた入口には濃紺ののれんがお出迎え。そこには、白字で出演アーティスト名が書かれていた。
 それをくぐると視界が一気に広がり、うわあーっという声が胸の中で上がって、駆け出しそうになるくらい瞬間的にテンションも上がる。
 そんな広い世界は見たことないわと大嘘ついてしまうくらい、7回目やというのに、毎年のことやというのに、その瞬間はほんまに新鮮。
 ほんの少しの時間、このために生きてるという感覚が湧いてくる。

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 今年の音博も一緒に参加したのは、K嬢とKさんというメンバー。
 3人で場所取りをすませたら、腹ごしらをしつつそれぞれ陽射しをよけながら開演を待つ。
 わたしはパーカーのフードをかぶり、さらにバスタオルで覆いをつくって直射日光にひたすら耐えた。
 30度を超える気温はじっとしててもあちこちから汗を噴出させ、右腕はUVパーカーの生地を通り抜けてくる熱を感じる。
 1年間待ってた1日があっという間に終わるのは寂しいけど、こうしている時間は早く過ぎてくれたらいいと、膝を抱えて目を閉じた。
 それは、晴天の音博でくり返す葛藤。終わってしまえば、それも音博の一部やとわかること。わかることやけど、真っ只中はやり過ごすしかない。無や、無の境地や、と心の中でくり返しながら。

 そうして、ようやく開演時間がやってきた。
 ステージには、着物姿のくるり3人の姿。しかも、ふぁんふぁんは晴れ着やった。
 省念くんが抜けて、初めて見るくるり。一瞬だけ違和感を覚え、すぐに見慣れた景色になる不思議。

 いよいよ始まったなあと思っていたら、すぐにトップバッターの出演者が紹介される。
 確か、岸田くんはこう言った。「太陽のような人」。
 その人、マイア・ヒラサワは鮮やかなオレンジの帽子とボトムス姿で現れた。
 1曲目は、シャンプーのCM曲「It Doesn´t Stop」。聴いてたら、うきうきしてきた。
 暑さがましになっているわけじゃないけど、時折大画面に映る彼女の素朴やけど華やかな表情を見てると、ふとそのことを忘れそうになる。
 数曲歌ったところで、ステージに岸田くんが招かれ披露された「The Ones」
 デュエットする岸田くんは、ほんまにうれしくて楽しいといった様子で、そりゃあもう思わず「かわいいーっ!」叫ぶ愛らしさ。あんな岸田くんの表情、久々に見た。
 にこやかに岸田くんがステージを去ったあとは、やっぱり「Boom」で締めくくり。頭の中に九州新幹線開通のCMが想起され、じんときた。
 あっという間の6曲やったけど、すっごくいい始まりだった。

 次に登場したのは、サンフジンズ。
 奥田民生、岸田繁、伊藤大地の3人組は、この夏あちこちのフェスに登場していた。
 民生兄さんと岸田くんという組み合わせだけでも最強。でも始まるまでは、どんなもんやろうと内心思っていた。
 で、始まってみたら、そのクオリティの高さに軽く衝撃を受けた。そうしてよく考えたら、当たり前かとすぐ思い直す。
 おもしろいのは、曲を聴いたら誰が作ったのかすぐわかること。
 民生色と岸田色が、それぞれ出そうとしなくてもにじみ出てしまう感じがなんとも言えない。
 互いの色が主張しすぎず、近しい部分を引き出し合っているような曲やと思った。
 ステージはMCも含めどこかのどかでのんびりしていたけど、大画面に民生兄さんと岸田くんが歌う横顔が重なるように映ったとき、「カッコイー」と声が出た。
 サンフジンズでワンマンライブをやるのなら絶対見に行く。ただ、残念ながら曲は、今のところその日やった5曲しかないらしい。

 今年も昨年同様、陽が暮れ始めるまでは隣の水族館のイルカショーの時間にはステージで音を鳴らさないようにタイムテーブルは配慮されていた。
 高いところにあるあの場所から、音博のステージはどんなふうに見えてるのか。
 イルカショーが終わっても移動しない人が昨年よりも多い気がして、ついついこちらも気になって見てしまう。
 1番楽しめるのはステージの前だとわかっているから実際にしはしいひんけど、1度あの場所から見てみたいと思ってしまう。
 たぶんステージだけじゃなくて、楽しんでる自分たちを含めた芝生広場全体の音博の姿を見たいんやろう。

 サンフジンズが終わったあとのがらんとしたステージを確認して、3人でレジャーシートを離れる。  
 次の出番は、細野さん。
 細野さんの音博出演は4回目。常連やなあという感じ。
 でもここで休憩しておかへんとあかんと、立ち上がる。
 芝生広場を出てからツイッターを見ると、ふぁんふぁんが細野さんのステージに「ゲストはなんとこの方が」とツイートしてるのを見つけたけれど、太陽の下ではそれが誰が映った写真なのかさっぱりわからず、しゃあないと諦めた。
 トイレを済ませ帰る2人と別れ、わたしはひとりフードコートで焼牡蠣の列に並んだ。
 やったー牡蠣やーと、脳天気に戻ってみると、ステージはおでこ全開のさとちゃんの姿が。
 なんや、ゲストはさとちゃんやったのかと肩を落とした。でも長いステージ、こういうこともある。しゃあない、しゃあない。

 ほどほどのアルコールと、凍らしてきた水分を合間合間に飲んでいたものの、どこか体が重い。
 細野さんのステージが終わってから、今度はひとり立ち上がった。
 なんとなく、次のVillagersをそのまま座って見ていたらあとがもたへんような気がした。
 無理は禁物、気づくとそう小さくつぶやいていた。
 その時期わたしはおそろしく忙しかったから、その疲れで最後まで楽しめへんようなことにならないように、どこかで軽くブレーキをかけていた。
 勢いにまかせて楽しむことはもうできひん。ライブやフェスで、ほんま年齢を感じるようになった。

 気分転換にふらふらと歩き回り、戻ってきたときはVillagersのステージは終わりに近かった。
 どんな感じのバンドやったのかを教えてもらいながら、買ってきたアイスカフェオレをストローですすった。
 ガムシロを入れてくるのを忘れたけど、その1杯でひと息つけた気がした。

 次は、その日2度目の登場となった民生兄さん。
 いつものように淡々とした雰囲気で「荒野を行く」を歌い始めた。
 民生兄さんのステージはいつ見ても揺らがないという印象を受ける。
 歌もギターも、MCですら、そう。安定感が半端ない。
 そういえば、MCのときにビートを鳴らし始めてそれが次の曲へつながるのかと思ったら、話し終わったらそれを止めてしまうという場面があって、民生兄さん曰く「MCのとき寂しいから」らしく、そういうところが昔から変わらへん「らしさ」で大笑いした。
 新曲の「風は西から」のあと、「さすらい」で会場は沸き、最後の「マシマロ」でさらに沸き、曲終わりにタイミングよく鳴った蒸気機関車の汽笛でさらにもっと沸いた。
 見終わったあとに、「さすがやなあ」という言葉が口をついて出た。

 16時を過ぎると、陽の傾きがわかりやすくなってきた。
 ステージを見ながら右目の端で捉えていた太陽も、だんだん後ろへと下がり、時折太陽が雲に隠れることも出てきて、過ごしやすさを感じられるようにもなった。
 この日確かに気温は高かったけど、唯一救いやったのは風がからりと乾いていたこと。
 暑い暑いと言ってても、空はすっかり秋顔。
 ステージと、そのずっと向こうの京都タワーと、その上の秋空と、そしてたまに京都水族館を眺めて過ごした1日。7回目の音博は時間が過ぎるのがほんまに早くて、ステージががらんとした時間でも不思議と退屈しいひんかった。

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 その日何度目かのイルカショーが終わると、今度はRIP SLIMEが登場した。
 メンバー全員お揃いの太ボーダーのパンツがオッシャレーやった。
 1曲目は「FUNKASTIC」
 RIP SLIMEのライブはイベントでしか見たことないけど、毎回思うのはメンバーがむちゃくちゃ楽しそうにしていること。それがいつもいいなと思う。
 なんとなく会場の雰囲気が一転してお祭り騒ぎのようになって曲が続き、そのテンポをくずさないMCが小気味よかった。 
 新曲をやって、「楽園ベイべー」のあとあたりから、音博会場は完全に今までにない雰囲気になっていた。
 もしかすると音博でRIP SLIMEって意外な組み合わせやったかもしれん。けど、遠く京都タワーを背に立つ5人はなかなかのもん。
 わたしは、そこでなぜか数年前のハラカミさんのステージを思い出していた。
 ハラカミさんも初めはちょっと異質な感じがしたけど、音楽が鳴り出したら音が空へすうっと上っていってきもちいいなあと思った覚えがある。
 RIP SLIMEも同じようなものを感じた。
 この人たちにアウェーなんて場所はないんかもしれん。
「楽園ベイベー」のあとは、「熱帯夜」と続き、最後は「JOINT」
 音博でタオルがぐるぐる回るなんて大笑いせずにはいられない、圧巻の光景やった。 
 また、出てくれたらいいのにな。

 タイムテーブルでは17時30分となっていたトリのくるりまで、あっという間の時間だった。
 ステージの反対側には、夕陽でオレンジに染まる空。まだ青さが残るてっぺんから始まるグラデショーン。これまでに見た音博の空の中でもピカイチやった。
 音博皆勤賞のboboさんをはじめ、大勢のサポートメンバーとともにステージに立ったくるり。「キャメル」で始まり、次の「グッドモーニング」で予感のようなものを感じ取る。
 その予感がなんなのか、わからへんけどその予感が外れないように、どこかこわごわしたきもちで次の曲を待つ。
 そして続いた、「さよならリグレット」と「ばらの花」。
 乾いた空気にぴたりとはまる曲の数々。その流れが大きく穏やかかなうねりのようなものになって、ぐるっと包まれるような感じを受けた。
 曲の合間にはそわそわして後ろを振り返って、夕陽を見る。見ては、我慢できずに写真を撮る。正面に集中していない気もしたけど、この瞬間は1度だけ、と思う自分がいた。

 そのあと、久々に聴いた「ARMY」。ふぁんふぁんが入ってからのバージョンは初めてじゃあないかと、耳を傾ける。曲が終わらなければ、せめてもう少しだけでもという思いが湧いてくる。
 新曲をはさみ、「Remember me」、「ロックンロール・ハネムーン」。
 そのころになると、音楽に体を揺らしながらも、ノーヒットノーラン、いや完全試合を待ち望むようなきもちになっていた。

 耳をそばだてながらも、視線はあちこちをさまよっていた。
 ふと空を見ると、高いところを飛行機が飛んでいた。突如、あの飛行機に乗っている人たちの毎日を考えた。誰とどんなことを感じながら生活しているのか、なぜあの飛行機に乗ってるのか、どこへ行こうとしているのか。そんなことに思いを馳せた。
 東へと飛んでゆく鳥の群れも見た。鳥たちは何度かくるくる旋回して、少し戻って、そして最後は東の空へ消えていった。1羽の鳥が残像になるまで、目が離せなかった。

「Remember me」を聴きながら、この空はご褒美なんやと思った。
 それは忙しい中で自分を奮い立たせているわたしというものに向けてじゃなく、今日1日をこの場で過ごしたことへのご褒美やと思った。
 1週間前に大雨を降らせた雨は、今日は怖いくらいに澄んでいた。
 あれもこれも同じ空。異常気象とかなんとか言ってても、それが自然。
 ただただ、美しい空だと感じた。
 作物を作る人は、もしかしたらいつもこんなきもちなんやろうか。ふとそんなことを考えた。

「WORLD'S END SUPERNOVA」では、紫の照明が映えた。あたりはすっかり暗くなっていた。
 後ろの京都タワーもほんのり灯りがついてたのか、てっぺん部分だけ見えていたその姿はケーキの上のろうそく見たいやった。「祝福」。そんな言葉が頭に浮かんだ。
 その日の岸田くんはコンタクトレンズにだてメガネという出で立ちで、大画面に映るまなざしは柔くまっすぐだった。それがすごく印象的やった。
 最後に演奏されたのは、「奇跡」。目頭がふっと熱くなる。
 意図された演出と、されなかった演出。どっちにしてもできすぎ。それまでのすべてが繋がって美しい流れとなり、「奇跡のセットリストや」という言葉が口から出た。

 アンコールは、サポートメンバーだけがステージを引き上げ、そのまま残ったくるり3人だけで始まった。
 一旦ステージから下がらないことを、岸田くんは「エコ」と言ったけどそういうのもいいと思う。
 ラストは恒例となった「宿はなし」で、それを3人だけでやるのは一瞬意外に思えた。でも、よかった。じわんと沁みた。
 すべての演奏が終わったあと、会場は熱烈な拍手ではなく、やさしいやさしい拍手に沸いた。

 7回目の音博は史上最高に、おおらかで穏やかで、幸せに満ちたものになった。
 それはたくさんの人の思いに成り立った幸福感。
 当日梅小路公園にいたいないに関わらず、音博に思いを寄せたすべての人に感謝。

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by fastfoward.koga | 2013-10-14 16:52 | 一日一言 | Comments(0)