言霊の幸わう国

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鼓舞

 午前中の立ち振る舞いに、まずったな、と思うところがあった。
 気をつけていたのに、面倒がったことと萎縮したことで、もう1歩が踏み出せなかった。 
 踏み出せなかったことは終わったこととしても、それをいつまでも引きずっていることが自分にとっては痛い。

 午後は、萎縮したきもちが元に戻りきらないまま過ぎた。
 最後のとどめは、数ヶ月ぶりに見た入社2年目の子たち。
 話したりはしていないのに、うちに帰ってもその姿がちらついた。
 卑屈だなと、思ったところで、なにが卑屈なのか、その思いの根底にあるのが嫉妬なのだと気がついた。
 若さに、嫉妬してしまった。

 冷たい水で手を濡らし、夕飯の洗い物をすます。
 昨日作ったすりキズが痛むことを気にしながら、嫉妬したことを認めてみた。
 そうしたら、つい声に出して言っていた。
「わたしの40年はそんなに軽いものなのか」
「後悔もたくさんあるけれど、戻りたいと思ってどうする」
 言ってきもちが楽にはなったりはしないけれど、効果や結果が伴わなくとも、言ったことは言ったこととして、事実が残る。
 それがいつか、小さな後押しになるかもしれないことをわたしは知っている。 


 少し波立った胸の中の湖に、一滴の黒い雫が落ちた。
 透明な水に黒い染みはゆっくりと広がって、消えるには時間がかかる。
 たとえ消えても、透明度はさっきとは違っている。
 でも、黒い雫が落ちたことで透明度を思い返すことができた。

 もう知らないままでは終われない。
 なにかに抗いたくなっても、進むべき道は前にしかない。

 己よ、明日も進め。
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by fastfoward.koga | 2014-02-27 22:22 | 一日一言 | Comments(0)

得体のしれないもの

 相手の考えていることが、手に取るようにわかっていたのに手を出さなかった今日。
 そんなことは日常茶飯事なのに、そのことが頭から離れない。
 それぐらいのことで、くよくよする日はよくない。
 今はなにを考えても、よくないほうに考える。

 右手と左手にのっかっているもののバランス。
 ちょっと左に傾きすぎだから、ここで傾きを正したい。
 緩くなってきた自分もいやだしな。

 最近、調子よくきていたから、意外にこの落差に沈みそう。
 久々に感じている、怖いと。

 なにが怖いって、漠然とした不安に飲まれるのが怖い。
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by fastfoward.koga | 2014-02-25 21:00 | 一日一言 | Comments(0)

同じ甘さ

 すきな人に渡したチョコと同じものを、部屋でしばし眺めて過ごした。
 さっき、ようやくリボンをほどいた。
 3つ並んだチョコ。
 そのうちひとつを口に入れた。

 甘い。
 ほどよく甘い。
 彼に渡したあと、「いただきます」とメッセージが届いたけれど、この甘さどう感じただろう。

 チョコを渡してから1週間、昨日初めて連絡した。
 数時間で沈んだり浮かんだり沈んだり、ひとり忙しくして、やりとりの最後に返ってきた「おやすみなさい」でふうっと温かいため息をもらした。
 ほんの数センチほどだろうけど、また少し距離が縮まった気がする。

 さて、これからどうするかなあ。
 残りのチョコを食べながら、考えよ。
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by fastfoward.koga | 2014-02-24 21:33 | 一日一言 | Comments(0)

日御碕にて

 心の持ちよう。
 昨年からそのことをずっと心に留めおいている。

 日常でも大事な場面でも、自分がこれだと感じて取捨選択したことを信じぬくことが大事だと思うようになり、そのためには心身をフラットな状態にして決断することが自分にとって1番必要なことなのだと、ひとつの答えに辿りついた。
 このやり方がいつどこまで通用するのかわからないけれど、少なくともフラットでいることが自身にとっての最善を引き寄せている気がしている。
 失敗だと思ったり、萎縮したり、迷走したりもする。
 でも、ひとしきり自問自答したら、決めたことは決めたこと、ひとつの結果が見えるまではあせってはいけないと思えるようになってきた。


 今度の旅の行き先は、あの場所へ行けばなんとかなると選んだ。
 出雲の日御碕。
 でも実際に岩場に立ち海と対面してみると、即座にきもちが後ろに引いてしまった。
 
 その日の出雲は昼前まで雨が降っていて、わたしが日御碕に着いたときも空にはどんよりした雲が広がっていた。
 ここに来るときはたいてい空は鈍色なのだ。
 それでも、いつもは帰りにはなにか持って帰れていた。
 それなのに、今回はいつもの場所に立ってみてもしっくりこなかった。

 岩場だから足元が安定していないのは当たり前。
 立っているのもやっとなくらいの強風だったことを差し引いても、その場所そのものが自分を受け入れてくれていない、そう感じた。
 それでもしばらくは体の向きを変えたり、フードをかぶったり、耳を塞いだり、立つ位置を少しずらしたりしていた。
 でも、これだと思える瞬間はやってこなかった。

 仕方なく、わたしは灯台のほうへ足を向けた。
 人の姿はちらほら見えるもののすれ違う人はさほどおらず、海を左に見ながら今まで行ったことのない灯台の向こう側へずんずん進んだ。
 ときどき遊歩道から岩場へ足を踏み入れ、海に体を向けてみる。
 まるでアンテナの感度を調べるように、何度かそれをくり返した。
 耳元では、風が大きく音をたてる。
 海も比例して荒れているのだけれど、ごおっと鳴りつづける音の中では無声映画のようにも見え、かえって静けさを感じた。
 少しずつ日御碕の空気に自分を寄り添わせていたのだろうか、進めば進むほど心身のこわばりがとけていった。

 出雲松島と書かれた看板に行き当たり、足が止まった。
 そこはせり出した場所に柵があり、そこに手をかけて海を覗き込んだとき、わたしはようやく安堵した。
 そこで、風に押し戻される体を支えることができたのだ。
 空は相変わらず、重い雲に覆われている。
 波は岩場に力いっぱいぶち当たり、白い波をたてつづけている。
 その様子を、じっと見つめる。
 この世にこれほど激しいものがあるのかと思ったところで、好きな人の顔が頭に浮かんだ。
 感じ取った荒々しさを宥めるために彼が現れたのだろう。
 目の前の景色がまた無声映画の映像のように、静かなものになった。 

 記憶のシャッターを切り、ポケットから取り出したスマホで同じ絵を収める。
 そしてまた、海面と空を見る。
 力まかせに吹きつけていた風は、いつの間にか自分をぐるり取り巻いていた。
 気づくと、涙が出ていた。
 意識をすっと自分の中の軸に戻し、感情を探してみてもこみ上げてくるものはない。
 熱くも冷たくもない涙が、目から頬にただこぼれ落ちたのを肌の上で感じるだけ。
 乾いた空気に水分が際立った。

 西の空は少しずつ明るさを取り戻し、雲の隙間から陽射しが海に向かってひとすじ射し込んでいる。
 その絵のような景色に勇気づけられ、わたしはいつもの場所へ歩いて戻った。
 
 もう1度、岩場に立つ。
 相変わらず風は強いけれど、もう疎外感はない。
 体が、その場にとけ込んでいるのを感じる。
 風に吹かれすぎて、髪はもうぐしゃぐしゃだった。
 押さえても仕方ないので、風に吹かれるまま。
 長い前髪が何度も視界を遮る。
 わたしの髪はこんなに茶色いのか、なんでこんなに吹かれて髪がカツラみたいに飛んでいかないのか、そんなバカみたいなことを風の中で考えた。

 風が飛ばしたのは、自分を惑わす薄い影。
 仁王立ちして、自分の純度が上がった気がした。

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 ここじゃないとダメだったのだと思える場所があり、そこへ旅することができて、ほんとうによかった。
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by fastfoward.koga | 2014-02-23 23:11 | 一日一言 | Comments(0)

月は見ていた

 自分を素直にフラットにするために、土曜日は1日旅をしてきた。
 明け方帰ってきて、14日を過ぎたチョコはいつどうするんだろう、わたしは、と思いながらひと眠りした。

 昼過ぎに起きて、さあどうするんだどうするんだと、ひとり相撲をくり返したあと、電子伝書鳩を彼に向けて飛ばした。
 夕方まで何度かやりとりをして、二転三転、今日しかないと約束をとりつけた。
 呼び出してチョコ渡すやって、学生みたいやん、とひとりごちた。

 ベスパを走らせ、チョコを渡す。
 約束の場所まで走る間に、体はカチカチに冷えた。
 そのせいか、渡すドキドキは必要以上に感じなかった。
 でも会って数分、顔を上げられなかった。
 やっと正面から彼の顔を見て目が合ったとき、2週間前と同じ彼を見て、どこかほっとするきもちになった。
 そう、彼はいつの間にか、わたしをドキドキさせるけれど安心させてくれる人にもなっていた。

 行って、会って、帰ってくる間、月はずっと空に浮かんでいた。
 昨日旅先で見たのよりも、黄色い色をしていた。
 その色の濃さが、見てるよ見てるよと主張しているように感じたのは、気のせいだろうか。
 帰り道、寒さに我慢できず、月に向かって吠えた。
 何度も吠えた。



 
 

 余談ですが。
 今日は、Nくんの命日。
 バレンタインに失恋し、世界中の恋人達のことを願った彼に、渡してきたよと報告する。
 命日にお墓参りにも行かなかったのだ。コガちゃん、それくらいして当たり前やでーと、写真の中の彼は言いそうだ。
 彼はきっと、もじもじして渡すわたしを、きっとどこかで見ていたはず。
 近々、お墓参りに行って、報告するから許してね。 
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by fastfoward.koga | 2014-02-16 23:02 | Comments(2)

1月の巻

1 山田詠美   ジェントルマン・講談社   
2 酒井順子   女流阿房列車・新潮文庫 
3 堺雅人     文・堺雅人・文春文庫
4 堀江敏幸   熊の敷石・講談社 ※
5 夏目漱石   門・新潮文庫


 スタートから、すでに出遅れました。
 でも、読んで楽しい、読み応えのあるものばかりを選んだ自信はあります。
 無意味な主張ですが。

 今年は、いわゆるエンタメ系ではなく、しっかりどっしりしたものを読もうと決めていました。
 それにしても、堺雅人の文章は読んでてきもちがいいです。
 文章って、書き手の人間性というか人格というか、溢れ出るものがあるなと感じます。

 そして、堀江敏幸は相変わらず安心感をくれます。
 先日、「劇的ビフォーアフター」でボートハウスが紹介されていましたが、そろそろ、彼の「河岸忘日抄」を読み返そうかなと思います。
 さあ、明日から気合入れて次々読破してゆくことにしましょうか!        
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by fastfoward.koga | 2014-02-10 22:12 | 本の虫 | Comments(0)

やがて回転数はゆるやかに

 先週末、チョコレートを買ってきた。
 迷った挙句2種類買って、昨年同様同じものを味わいたいとそれぞれふたつ買った。
 合計4つのチョコは、今部屋で一番ひやりとする玄関に近い場所に置いてある。
 ふいに、紙袋の中の静かに時を待つその子たちを見て、なにやってんだかと笑いが小さく洩れる。

 さあ、どうして渡そうか。
 いつ、渡そうか。
 呼び出しても大丈夫かな。

 と、頭の中はまだぐるぐる巡っているので、回転がおさまったら電子伝書鳩で連絡しようと思う。
 今度はついで、みたいに渡したくないのだけれど、呼び出すのはついでみたいに言ってしまう気がする。

 でも、素直に、フラットに。
 きもちは大きくも小さくもしない。
 メリーゴーランドがゆるやかで自然な回転数になるのを待つように、あせらない。 
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by fastfoward.koga | 2014-02-10 21:50 | 一日一言 | Comments(0)

号砲

 先週、すきな人とゴハンを食べに行ってきた。

 待ち合わせは19時半。
 前回は、待ち合わせ場所には10分前に着いていた。
 それはいつもの習慣でそうしただけだったのだけれど、やっぱり遅れてはいけない、待たせてはいけないと強く思っているところがあった。
 でも今回は、待たせてももいいかと思った。

 約束をして、会うまでのひと晩、できるだけニュートラルでいるように努めた。
 いつもなら約束した時点で報告するともだちにも内緒にしたくらいだ。
 緊張しすぎて話せないという失敗だけはしたくなかった。
 自分が敷いたレールにすうっと乗っかって、アクセルもブレーキも踏まず会いにゆこうと思った。

 待ち合わせの駅で電車を降りると、彼の背中はすぐに見つかった。
 普段の歩くペースなら、追いつけるくらいの距離。
 でも、わざとゆっくり歩いて背中を見ていた。

 電車を降りた直後はスマホを触っていたようだった。
 なにを一体気にしているのだろうと、軽く嫉妬する。
 でもホームの途中でスマホをポケットにしまったあと、待ち合わせ時間ジャストになったことに気づいたのか、彼は軽く駆け出した。
 走らなくていいよと、心の中でつぶやく。
 改札口までくると、待ち合わせ場所は左なのに右に行きかけて引き返す姿が見えた。
 あわてなくてもいいよ、とほんのり笑う。
 階段を上がってゆくと、立っていると思っていた場所にわたしがいなくて彼はキョロキョロしていた。
 そこで声をかけようとしたものの、彼の名が声にならない。
 近づいて後ろから上着をつまんだところで、ようやく言えた。
「ごめん、遅くなった」

 背中は見えてたんだけど、ともごもご言い訳をしながら歩く方向を促すと、彼は言った。
「最近、インフルエンザ流行ってるんです」

 今思えば、そのなんてことのない会話の切り出しに救われたのかもしれない。
 その夜は、緊張で会話の糸口を探すことも、向かい合って座った彼の目を見ることができないなんてこともなく、ごくごく普通に会話をしながらゴハンを食べた。
 特別なことなんてなんにもない。
 でも、なにもなく過ごせたことが楽しかった。

 先日友人が、この恋について、「月刊誌にちょこっと載ってる小説を読んでいる感じぃ」と言われたけれど、その感覚がよくわかる。
 これでようやくスタートラインに立った、なんて言ったらそれこそ笑われるか。
 でもスタートしたら、亀の歩みでも走り出したいと思ってしまった。
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by fastfoward.koga | 2014-02-04 22:22 | 一日一言 | Comments(0)

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 いよいよこのブログも10年目。

 ある恋の終わりに、「わたしは(ブログを)10年は続けるよ」と宣言したことがあった。
 あのときはいろいろ、いろいろあって、そんなことを口にしたのだけれど、別に今意地になってこうしているわけではない。
 書くペースは年々落ちている。
 でも、無理をしないから続けられているのだと思う。

 年月は単なるひと区切り。
 あと1年続けても、それはそれ。
 もっと先を見つめてゆこう。

 ここは、いつもわたしの帰る場所。
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by fastfoward.koga | 2014-02-01 21:47 | 所信表明 | Comments(2)