言霊の幸わう国

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開いた掌

 部屋にいると、どうしても定位置ができてしまうものだけれど、最近休みの日にはそれをあえて崩すようにしている。
 昨日もいつもなら座りもしない窓のそばに寝転がり、買ってきた本を読んでいた。
 昼過ぎから降り出した雨も少し弱まり、風が吹いてカーテンをふわりと揺らしたその端をつかまえ、網戸越しに空を眺める。
 片方の手を本の間に挟んだまま、薄灰色の雲の模様を視線でなぞった。

 そこでふと、いつかの夜に見ていたスーパームーンを思い出す。
 そして、すきな人のことも思い出す。
 わたしの人生はこんな記憶でできあがっているのだなあと考え、そういう記憶が積み重なってきていることの歓びと、一方で記憶だけで留まる歓びというものへの寂しさを募らせた。

 いかんいかん。ひと月は仕事に集中しようと決めたのだ。
 少しだけ、離れよう。
 握りしめた執着を、1本1本指を開いて解き放つために。
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by fastfoward.koga | 2014-08-25 22:32 | 一日一言

勇気のカード

 帰り道、きれいな夕陽を見ながら、ひとつ手前の駅で下車し長めに歩いた。
 歩いている間に、今日の夕日はきれいだよとすきな人に伝えたくなり、その素直なきもちのままでゴハンに誘った。
 結果は、またまた玉砕だった。
 断りの言葉のあと、もうそれで今日は終わるのだろうと思ったら、短い言葉ではあったけれど返信があった。
 なければ、いよいよ引き際について本気で考えなければと思っていた。
 でも1行でもなにか返ってきたら、望みをつないでしまう。

 昼間、友人に、何度も断られながらもゴハンに誘う勇気を、自分はあと何回出せるかという話をしていた。
 今日断られて、たぶん、お互いの忙しい時期を越えたらもう1回は誘えると思う。
 でも、勇気のカードがあと何枚残っているのか、それはわからない。

 今すぐあきらめるきもちはない。
 だから、明日から腹をくくって働く。
 ひと月ほどどこかふわふわしていたけれど、そこに熱を注ぎ込む覚悟ができた。
 当たりさわりのよさでできるのも、きっとここまで。
 本気で向かわないと、この先の仕事は歯が立たない。
 と考える一方で、そうやってがんばればご褒美がもらえるんじゃないかと思うきもちもある。
 やる前からそれじゃあ、いけないんだろうけど。

 経験値を上げて、勇気のカードを増やしたい。

 戦場は目の前。
 戦うは自分。
 まずは1か月1本勝負に挑む。  
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by fastfoward.koga | 2014-08-21 23:12 | 一日一言

けものみち

 いつからか自分のことばかり考えるようになったのか。
 どうしてここまでになんとかしようと思い込んでしまったのか。
 いったいなにに対して自信をもってしまったのか。
 根拠のわからぬ自信だというのに喪失している自分という人間はどうなのか。
 自分で自分をがんじがらめにしているとわかっていてどうすることもできないのはどうしてなのか。

 今の自分はいやだなと思う。
 余裕がないのではなく、ほんとうに自分のことしか考えてない。
 やっぱりまだ心のどこかで、これだけのことをしたんだから報われてもいいはずだと思っている自分がいる。
 相手を思うだけ思って、最後に傷つきたくない。
 いや、そうじゃない。ほんとうは、これだけ思ったのに損をしたくない、と思っている自分がいる。

 なんでそんなことを思うようになってしまったんだろう。
 損得勘定なんて、すきだというきもちに関係ないはずなのに。

 こんなふうに、このまま停滞していても決してあきらめきれないとわかっている。
 なら、またきもちを新たに進むしかないのに、毎日心の中で「タスケテー」と叫んでいる。

 誰かに、なにか言ってほしい。
 できることなら、希望のもてる言葉。
 そして、未来に対して確信に満ちた言葉。

 でもそんなもの、誰からも与えられるわけはなく。
 そう頭でわかっているのに、欲するきもちはゼロにはならない。
 欲しているものが、違っているから。


 書いていたら、ちょっと見えてきた。
 ほんとうに欲しいものと、それを手に入れるためにすべきこと。
 方法が正解かどうかわからないけれど、たぶんそれをするためには時間をかけて、またひとつずつ積み上げていかなくてはならないんだろう。

 わたしが1番認めるのが怖かったこと。
 それは、時間をかけること。
 積み上げてきたと思っていたことが崩れたことより、ああ、また同じような時間をかけることを労力だと感じたことが、胸にずしりときた。
 
 自分のきもちに正直になることもままならないのは、年齢のせいだろうか。
 と考えるのは悲しいし、それはやっぱり逃げにしかならない。
 本気で逃げるなら、あきらめてしまえばいいだけだ。
 でもそれもできないとわかっているなら、今のわたしには逃げ道すらないということだ。

 そんな考えに、書いて辿りついたら、ちょっとほっとした。
 しょうがない。すきになってしまったのだもの。
 行きつく先が望みどおりの場所でなくても、道はただひとつだけ。
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by fastfoward.koga | 2014-08-17 22:02 | 一日一言

7月の巻

1 本谷有希子  自分を好きになる方法・講談社
2 青山七恵   ひとり日和・河出書房出版 ※
3 綿矢りさ   ひらいて・新潮社
4 長嶋有    夕子ちゃんの近道・新潮社 ※
5 ヘッセ・高橋健二訳
         デミアン・新潮文庫 ※


 久しぶりに読み返した長嶋有の『夕子ちゃんの近道』、おもしろかったです。
 登場人物それぞれの持ち味がじわじわっとがこみ上げてきて、寝る前に読みながら、むっちゃおもしろいなあと思っていました。
 今回は瑞枝さんという35歳の女性(作品の中では、四捨五入すると40だと本人は言っている)に肩入れして読んでいましたが、おそらくそれは瑞枝さんよりは年下の主人公を瑞枝さんを通して見守るようなきもちでいたからかもしれません。
 その証拠に、本作の一番最後に収められている書下ろしの一編、すっかり話の筋を忘れていましたが、「パリの全員」でみんなに黙って去っていたはずの主人公がみんなとパリにまで行っていて、ほっとしたのでした。
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by fastfoward.koga | 2014-08-14 19:44 | 本の虫

22年ぶりの上巻

 今日、谷崎潤一郎の『細雪』の上巻を買った。
 中下巻は20年近く前に購入していたのに、なぜか本棚に並ばなかった上巻。
 飛ばして読むなんてことは絶対にしないので、おそらく図書館か友人に借りて読んだのだろう。
 当時から読む本は自分のものにすることがルールで、今買わないとあとで困ると思ったことは記憶しているのに、その理由はさっぱり思い出せない。
 でも、なにかのきっかけで手にした上巻を手放して買うのももどかしく、もういいやと読み始めた気がする。

 谷崎を初めて読んだのは、大学のとき。
 他校の非常勤講師の先生が谷崎を専門としている人で、授業で紹介されたのをきっかけに興味を持った。
 当時授業の空き時間に、友人と『細雪』を執筆した倚松庵に見学に行ったこともある。
 読みかけの本を持って祖母のうちに泊まりに行ったら、「そんなん読むのかあ」と祖母がうれしそうな顔をしてくれた。
 その祖母は、軽い認知症で母のことはわかってもわたしの名前はもう思い出せないのだけれど、祖母に会いに行くといつも『細雪』が思い出された。

 中下巻に記した購入日をながめ、なにか塊のようなものが胸から下がり胃のあたりで留まるような感覚を覚える。
 そして今気づく、
 上巻と中下巻とでは文字の大きさが違っている。
 カバーが変わっていないので、中が変化しているとは思いもしなかった。
 今日わたしが購入したのは、新装版だったのだ。

 22年の時を、わたしはちゃんと生きてきたのかな。
 少しセンチメンタルなきもちになりながら、22年ぶりに『細雪』の世界に身を沈める。
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by fastfoward.koga | 2014-08-12 22:26 | 一日一言

続報「はじめての土偶」

「はじめての土偶」の著者、こんだちゃんがトークショーをします!
 しかも場所は、スタンダードブックストア心斎橋!
 べっぴんさんが、土偶への愛を語ります。
 ぜひみなさまお誘いあわせのうえ、ご参加くださいませ!


■「はじめての土偶(世界文化社)」刊行記念 武藤康弘×譽田亜紀子トークショー
 平成26年8月22日(金) 19時30分~
 @スタンダードブックストア心斎橋

 くわしくはこちら→★★★
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by fastfoward.koga | 2014-08-03 21:22 | 一日一言